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第13章:平穏を装う旅路、神聖王国の門を叩く

 馬車隊は無事に、クレイズ神聖王国の首都へと到着した。


 道中の盗賊による襲撃や夜営地での魔物被害といった危機を、俺は「低ランクの冒険者」という立場を崩さないまま、可能な限り静かに、かつ確実に処理してきた。誰にも見られない場所で盗賊の罠を解除し、夜営地では影に紛れて魔物を一撃で排除する――。


 表向きは「運良く被害が少なかった幸運な旅」に見えていたはずだが、商会長や護衛たちは、なんとなく「不思議とトラブルが最小限で済んだ」という確かな安心感を抱いていたようだった。


 門を潜り、賑やかな大通りへ馬車が進む。商会の人々がそれぞれの目的地へと散っていく中、俺はマルコと最後の挨拶を交わした。


「サトオ、これほど無傷で辿り着けるとはな。お前が馬車の整備だけでなく、常に目を光らせてくれていたからこそだ。お疲れさん」


「いえ、ただ冒険者としての役割を全うしただけですよ」


 俺は笑顔で彼らを見送り、一人でこの街の冒険者ギルドへと向かった。


 首都のギルドは、これまでの街とは比べものにならないほどの活気に満ちていた。


 受付カウンターで今回の護衛依頼の完了報告を済ませる。受付嬢は俺のプレートを確認し、マルコから届いていたサインに目を通すと、感心したように顔を上げた。


「……サトオ様、お疲れ様でした。マルコ様から『単なる護衛以上の貢献があった』と高い評価が届いています。Fランクでの依頼でしたが、今回は報酬にボーナスが付与されますね」


 ずっしりとした革袋を受け取る。苦労した分だけ、その重みは心地よかった。


「それと、もしこの街に長期間滞在されるのであれば、宿をご紹介しましょうか?」


「そうですね……なるべく街の様子がよく見えて、静かに過ごせる宿があればいいんですが」


「でしたら、ここはどうでしょう。『銀の盾亭』という宿です。少し路地裏に入ったところですが、鍛冶師や職人の方もよく利用されていて、地下にちょっとした作業スペースもあるそうですよ」


 俺は紹介状代わりの地図を受け取り、ギルドを出た。街には夕暮れの鐘が鳴り響いている。


 商会との契約というしがらみから解放された俺の心は、不思議と軽かった。ここでの目的は、先代勇者の足跡とその関係者を探すこと。基本は目立たず、ただのしがない冒険者として生活していければいい。


 路地裏を歩きながら、ふと、旅の夜営地で助けたエレナのことを思い出す。彼女もまた、この広い街のどこかで生活しているはずだ。


(……まあ、どこかでまた会うこともあるかもしれないな)


 そんな漠然とした予感を抱きつつ、俺は『銀の盾亭』の明かりを目指して歩き出した。

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