運命のスイング
ー 運命のスイング ー
2015年10月22日
プロ野球ドラフト会議当日。
各球団の関係者、報道陣、カメラと毎年恒例の独特の緊張感が会場を支配していた。
阪神タイガース控室でも誰一人として落ち着いていない。
「…今年も始まった。金本さん…頼むよ…」
スカウト部長が小さく呟く。
(俺のいた世界ではオリックスの単独指名…)
テーブル中央には一枚の資料、青山学院大学・吉田正尚。
今年最大級のスラッガー候補。
そして俺が“絶対に逃すな”と言い続けた男。
(ほんまに頼むで、金本監督…)
俺はそっと拳を握る。
去年和田監督は未来を変えた。
そして今年。
新監督・金本知憲にも、
その流れが来ている気がしていた。
ドラフト会議開始。
司会の声が会場に響く。
「第一巡選択希望選手…」
各球団名が読み上げられていく。
そして。
「オリックス・バッファローズ、吉田正尚、外野手、青山学院大学」
部屋の空気が張り詰めた。
次の瞬間。
「阪神タイガース、吉田正尚、外野手、青山学院大学」
「……ですよね。」
誰かが苦笑する。
オリックスも本気…外す理由がない。
テレビにはオリックス福良監督、
そして阪神・金本監督の姿。
「競合かぁ…」
球団職員が頭を掻く。
だが去年とは違った。
妙な空気があった。
“今年の金本監督、なんか持ってる”
そんな空気。理由は単純、俺は前世で見ている。
高山を引いた金本監督を…
また就任直後とは思えないほど球団内部を変え始めていた。
岡本和真の育成方針も金本監督は全面的に支持していた。
そして今、未来を変える二枚目のクジが目の前にある。
「それでは抽選です。」
司会が告げる。
会場が静まり返った。
オリックス・福良監督、阪神・金本監督の順番で箱に手を入れる。
(頼む……!)
俺の喉が鳴る。
吉田正尚を逃しても未来はそう変わらないかもしれない…だけど俺は見てみたい!縦縞の吉田正尚を!
数秒後、紙を確認する。
そして「交渉権獲得は……阪神タイガース!!」
「っしゃああああああ!!!」
控室が爆発した。
机を叩く音。
叫び声。
抱き合うスカウト。
「よし、来た!アニキ!最高や!やっぱり持ってるぞこの人!!」
俺も思わず立ち上がる。鳥肌が止まらなかった。
未来がまた変わった。
テレビの向こうでは、
金本監督が少し照れ臭そうに笑っている。
そして映し出される吉田正尚
その瞬間。
俺は確信した。阪神打線は大きく変わる。
数年後、甲子園に最強打線が生まれる。
岡本和真に吉田正尚…
未来の日本代表クラスが同じ縦縞に集まり始めていた。
ー 都内某所
テレビを見ていた白井美虎は小さく呟いていた。
「……やっぱり歴史が変わってる。」
そして彼女はスマホ画面を見つめる。
来年はついに奴が来る…
前世では苦しめられたわ…「山本由伸…」
「もうあんな思いはしたくない…」
ー 数ヶ月後…神宮球場…
遂に俺たちは顔を合わせる。
多分続く…




