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虎党転生物語  作者: ヤノチャン


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もう一人の転生者


ー もう一人の転生者 ー


「かっとばせー!柳田!!」


福岡の夜空に響く大歓声。


黄色いメガホン、揺れる白いタオル。


そして鮮やかなホームラン。


2026年5月。


福岡ソフトバンクホークスの本拠地は熱狂に包まれていた。


「きゃああああ!!柳田ぁぁ!!」


私は声を枯らしながら飛び跳ねる。


名前は白石 美咲、22歳。


生まれも育ちも福岡。


筋金入りのタカガール。


大学時代のバイト代はほとんど遠征費に消えた。


恋愛より野球、美容代よりユニフォーム。


推しはもちろん柳田悠岐。


あのフルスイングを見るために生きていた。


「やっぱ最強だよホークス……!」


その日も勝利の余韻に浸りながら、

友人たちと駅へ向かっていた。


「来年も優勝かな〜!」


「いや日本一でしょ!」


笑いながらホームへ向かう。


その瞬間だった。


「きゃっ……!?」


誰かに肩がぶつかった。


視界が揺れ足を踏み外す。


迫るライト。


そして電車の警笛。


「え……?」


そこで世界は途切れた。


…………


……………………。


1993年。


「オギャアアアア!!」


気づけば私は泣いていた。


いや、

赤ちゃんとして。


「おぉ〜元気やなぁ!」


聞こえる男性の声。


だが違和感があった。


ここ……福岡じゃない?


壁には大量の阪神グッズ。


虎柄クッション。


六甲おろしのCD。


さらに目の前には、

阪神ユニフォーム姿の夫婦。


「将来は絶対甲子園連れてくぞー!」


「女の子なんだからほどほどにしてよ?」


「何言ってんだ!虎党英才教育だ!」


……嫌な予感しかしない。


数年後。


その予感は現実になる。


「美虎!六甲おろし歌えるか?」


「う、うん……」


「よし!完璧!」


「ほら次、“あと一人!”コール!」


「あとひとりー……」


私は、

関東在住の熱狂的阪神ファン一家に生まれていた。


しかも前世の記憶持ち。


つまりホークスを愛したタカガールなのに、

阪神を応援しなければ生きていけない環境。


最悪だった。


いや、最初はそう思っていた。だが人間は慣れる。


小学生になる頃には普通に甲子園遠征へ同行。


中学では神宮のビジター席常連。


高校では関東虎党女子として有名になっていた。


そしていつしか。


「うわぁぁぁ!!鳥谷かっこいい!!」


普通に阪神で騒いでいた。


……おかしい。


私はホークスファンだったはずなのに。


だが前世の記憶は消えない私は知っている。


未来を。ドラフトを。ホークスの優勝…


育成選手達の覚醒を…


そして本来とは違う未来が動き始めている事を。


2014年、阪神が岡本和真を指名。


そのニュースを見た瞬間私は凍りついた。


「…え?」


あり得ない。


前の人生では岡本は読売だった。


なのに阪神?


しかも翌年、今度は阪神が吉田正尚を一位候補にしているという噂。


何かが…おかしい。


誰かが歴史を変えている。


そして私は一つの結論へ辿り着く。


「…まさか」


テレビを見つめながら私は小さく呟いた。


「私以外にも…転生者がいる?」


その瞬間だった。スマホ画面に映る一枚の写真。


阪神私設応援団その最前列で笑う男。


名前欄にはこう書かれていた。

『猛虎烈震会団長 虎崎虎吉』


「絶対…この人だ…ドラフトにも関わってるらしいじゃん…」


私は確信した。


歴史を変えているのはこの人だ…


「この人はパリーグをあまり知らない…

伝えたい…2年後に現れる"現代の韋駄天"

東農大北海道、周東佑京の存在を!」


「絶対阪神で手に入れる…」


多分続く…




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