次なる獲物
ー 次なる獲物 ー
ー 2015年10月
ドラフト会議直前のある日、俺は再び阪神球団本部へ呼び出されていた。
廊下を歩く職員たちの表情は明るい。
理由は単純、岡本和真…
高卒一年目ながら球団の未来を感じさせる存在になったからだ。
あの一件以降、球団内部での俺の立場も少し変わっていた。
“ただの私設応援団長”ではない……“妙に選手を見る目がある男”として扱われ始めていた。
会議室の扉が開く。
「失礼します。」
中には編成部、スカウト陣、
そして新監督・金本知憲
そうそうたる顔ぶれだった。
「お、君が虎吉君か…噂には聞いてるよ。」
金本監督が穏やかに笑う。
「解説席から見てたよ。素晴らしい応援だった。」
「いえ、当然です。」
俺は頭を下げた。
「応援団はチームを後押しするのが仕事ですから!」
「はは、頼もしいね。」
金本監督は資料を閉じながら続ける。
「君の目は本当に面白い。和田監督からも聞いてる。
今回のドラフトもスタッフとして意見を聞かせてほしい…」
その瞬間部屋の視線が一斉に俺へ向く。
普通ならあり得ない…私設応援団長がドラフト会議に関わるなど。
だが岡本の件で俺の発言力は本当に強くなっていた。
「…光栄です。」
俺は静かに答える。
だが内心では笑いが止まらなかった。
やっと来た…第二次歴史改変。
テーブルには今年のドラフト候補資料。
即戦力投手。大学ナンバーワン右腕。社会人左腕。
そして……
「外野手では明治大学の高山俊ですね。」
スカウト部長が資料をめくる。
その名前が出た瞬間俺は小さく息を吐いた。
(高山は確かにいい選手だ…だが違う…彼はヤクルトの方が活躍できるはず…彼の野球人生を考えると阪神よりヤクルトだ…)
「いや、違う…青山学院、吉田正尚の方が将来性は期待できます。小柄ながらずば抜けた長打力と卓越したバッティングセンスを持つ天才スラッガーです。」
未来の侍ジャパンの主軸。
常識外れのスイング、圧倒的な対応力。
そして何より――
阪神に最も必要な打者。
だが部屋の空気は微妙だった。
「打撃はいいんですけどねぇ……」
「身長が小さいのがなぁ」
「外野専になりますわ」
「長打がプロで通用するかどうか……」
始まった。
前世でも何度も見た。
“体格による過小評価”。
だが俺は知っている。
こいつは化け物だ。
未来では日本代表の四番を打ち、
メジャーへ行く男。
絶対に逃してはいけない。
俺は静かに口を開く。
「…逆に聞きます。」
会議室が静まった。
「今の阪神に、“試合を決める打者”いますか?」
誰も答えない。
福留はベテラン、ゴメスも波がある、岡本は育成段階で鳥谷も年齢を重ね始めている。
だからこそ大卒即戦力スラッガー…
「吉田正尚は必要です」
俺は断言した。
「身長なんか関係ない。あのスイングは本物です」
スカウト陣が顔を見合わせる。
「でも守備範囲が……」
「打てばええんですよ。」
俺は即答した。
「阪神に必要なんは“守れる外野手”やない。“試合を壊せる打者”です。」
空気が変わった。
金本監督が小さく笑う。
「聞いていた通り熱いね、虎吉君は、君の吉田正尚君に対する熱意はわかったよ…」
部屋に少し笑いが起きる。
だが俺は真剣だった…未来を知っているからこそ分かる。
吉田正尚を獲れば阪神打線は変わる。
岡本和真に吉田正尚。
未来の主軸。
さらに数年後には大山悠輔、近本光司まで加わる。
(このままいけば3年後には作れるで!1番センター近本、2番ショート鳥谷、3番サード岡本、4番レフト吉田、5番キャッチー村上、6番ファースト大山、7番セカンド糸原、8番ライト糸井…ドリームチームや!)
その時だった、会議室の隅。
球団職員のスマホが震える。
「……え?」
職員の顔色が変わる。
「どうした?」
金本監督が視線を向ける。
「オリックスです。」
空気が止まった。
「オリックスが吉田正尚を1位指名するのは確実みたいです。」
「それがどうした、高山君もヤクルトやろ。
今年の1位指名は吉田正尚で決まりや。
2位は明治大捕手の坂本誠志郎君、虎吉君どう思う?」
「いいと思います!」
金本監督は笑いながら部屋を出ていくのであった…
だが、虎吉にはひとつ弱点があった…
それはパリーグの情報を知らなすぎる事…だった。
多分続く…




