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虎党転生物語  作者: ヤノチャン


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育てる覚悟


ー 育てる覚悟 ー


2015年2月 阪神タイガース春季キャンプ。


宜野座の空は快晴だった。


「うおっ…飛ぶなぁ…」


俺はフリー打撃を見ながら思わず呟く。


甲高い打球音。


ルーキーとは思えないスイング。


そしてスタンドへ突き刺さる打球。


岡本和真、未来の怪物。


だが、「まだ粗いな」


隣で球団関係者が腕を組む。


「変化球への対応もまだや。守備も三塁は危なっかしい」


「ええ」


俺も頷いた。


未来を知っているからこそ分かる。


今の岡本はまだ“未完成”だ。


だが逆に言えば伸びしろの塊。


「でもモノは本物ですよ。応援のしがいがある。」


「そらそうや!頼んだで猛虎烈震会!」


関係者が苦笑する。


「高卒一年目でここまで飛ばす奴そうおらんで…」


グラウンドでは岡本が再びバックスクリーンへ叩き込んでいた。


周囲の記者がざわつく。


「やっぱスター候補やな…」


「掛布二世か?」


「今シーズンのサード争い激しくなりそうやな。」


「今成に西岡、新井、岡本…」


そんな声も聞こえる。


だが俺は首を横に振った。


違う、掛布二世じゃない。


岡本和真は岡本和真だ、岡本一世だ…


元の未来では読売の四番となり、

セ・リーグを代表するスラッガーになる男。


その未来を阪神色に染める。


それが俺の役目だった。


数日後。


球団内部会議。


「岡本君はいい物は持ってます。」


和田監督が静かに言う。


「育成に力入れていきましょう。」


室内が静まり返る。


「今季は三塁が定まっとらん。そこで使っていこう」


誰かが不安そうに口を開く。


「しかし高卒ですよ?」


「それは承知しています。」


和田監督は頷く。


「そや、焦らん。高卒や……

ゆっくり、大切に育てる、」


俺はその言葉を聞きながら、

小さく拳を握った。


「虎吉君…君の目を信じますよ…」


俺はその言葉に小さく頷いた。


前世の阪神なら即戦力を求めて潰していたかもしれない。


だが今回は違う。


球団の空気そのものが少しずつ変わっていた。


結果だけじゃない未来へ投資する球団へ。


シーズンが始まる。


ルーキー岡本は、

一軍と二軍を行き来しながら経験を積んでいった。


三振も多い、守備ミスもある、インコースに詰まる、外角変化球で空振る。


だが時折見せる一撃が、

すべてを黙らせた。


「……やっぱエグいな」


甲子園のバックスクリーンへ突き刺さる特大弾。


観客がどよめく。


まだ線は細い。


だが。


誰もが感じ始めていた。


“何かとんでもない選手になる”と。


そして時間は流れる。


ペナントレース終了。


岡本和真、高卒一年目。


打率 .241 7本塁打 28打点。


高卒新人としては十分すぎる数字だった。


ファンは熱狂した。


新聞は騒いだ。


“虎の怪物” “未来の四番” “新・ミスタータイガース候補”


そして俺は次の戦場を見据えていた。


2015年秋ドラフト会議。


「次は吉田正尚やな…未来の代表4番バッター…」


俺はドラフト候補リストを開き静かに笑った。


その時机の上のスマホが震える。


非通知。


「…ん?…誰や?」


電話に出た瞬間。


女性の声が聞こえた。


『あなた……転生者でしょ?』


「な、何のことや…?」


俺の背筋が凍った。


多分続く…



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