エリアです
始まりは突然だった。
まずは腹痛が襲ってきて、その次の吐き気がきた。
先程朝食を食べたばかりでおかわりも沢山し、お腹を押さえながらそのまま吐いてしまった。
片手を床につけしゃがんだまま頭の中では食べ物が勿体無いなァと考えていた。
痛みと吐き気に耐えていると頭がぼんやりしてきて何気なくおでこを触ると脂汗と熱があることに気がついた。
急に頭痛が降ってきて頭を抱えて床に転がった。
もうすでに冷静に考えるほどの余裕は無く自分で汚した床の上ににちゃりとした音をたてていた。
そのまま数分間痛みにより動くことが出来ず吐きながらお腹を押さえ頭痛に必死で耐えに耐えた。
家族は外に出かけてていて居ないしそもそも部屋に誰も入れないでくれと頼んでいるために叫んでも誰も来てくれないだろうと少しの余裕が出来た頭で冷静に考えた。
普段から奇声を発している自分のことだから周りの人も遊んでいるだろうと思うであろう。
広い部屋にしかれた刺繍の細かい綺麗な、高そうな絨毯を汚してしまってただ誰かに申し訳ない気持ちになった。
そしてそのまま意識を手放した。
× × ×
気がつくと痛みや吐き気は消えていた。
あのまま気を失ってしまったようだがあまり時間は経っていないようで全てそのままだった。
すっと立ち上がって部屋に整備された綺麗な彫刻のくっ付いている洗面所に行って顔を洗いうがいをした。
風呂場に行って服を脱いでシャワーで体を洗った。
頭を洗いながら思った。
自分の名前は工藤志都嗚で、必死の思いで勉強してやっと大学に入りぬか喜びした学生。
大学やったあバンザイ→トラックに轢かれる。
そして転生ししかも器は女の子。
つまり体は女の子、心は男の子。
でも自分の体なので可愛いとは思うけど性欲とか湧かない、というか湧けない。
ついさっき記憶を思い出した。
だけど今までの自分の記憶はある。
自分の名前はエリア・ベネットスで、ちやほやされて育ってきた2人姉妹の姉5歳児。
私はお嬢様ですわ→俺は学生ですよ。
そして体が何故か女の子。
何故か、何故か女の子。
あれ、俺って男ですよ?せっかく転生してまた女の子と遊べると思ったら何故に女になっとるんや!
わい、男やで!立派なゾウさん消えてしもたけど男やで!
まあ転生できただけで良いかななんて思ってしまう自分もいることだし今日のところは許してやろう。
俺はこの日を楽しみにしていた…。
転生系のライトノベルといえば無双系が多いし自分でも無双系が大好きで脳内シュミレーションはすでに何回行われたかわからないほどだ。
選択肢は…。
①幼少時から鍛え自分の実力だけで無双。
②神からもらったチート能力で無双。
だが神は現れていないようなのできっと①であろう。
ふははははははは!
無双してやるぞ!待ってろ、強敵!
と、部屋のドアが開いた。
ゆっくりギリギリと音を立てていることから扉が大きく重たいものだと予想できた。
中に入ってきたようで足音が近付いてくる。
俺がシャワールームにいることに気付き手前で止まったようだ。
「エリア様、勉強のお時間です。アリア様と3階の部屋まで起こしください」
耳に心地よいほどのテノールの声が聞こえてきた。
落ち着いた様子だがまだ声が若いな。
…俺に言えたことではないが。
ん?アリア様?
アリアっていったら…俺の妹か、いや…。
気のせいかな…。
そうだよな、転生した先が妹のやってた(自分もやってた)乙女ゲームのわけないよな。
同姓同名の別人かなにかだろう。
…同姓同名で境遇も家族も乙女ゲームと同じなにかって何だろう。
いや、駄目だ。認めてはいけないぞ俺。
この世界を乙女ゲームだと思ってしまうということは無双系ができないということだ。
もし、もしもの話だが乙女ゲームの世界だった場合俺はゆるふわかーる水色が入った銀髪でお腹に傷があり目は垂れ目で色はエンジェル・ブルー、というか簡単に言うと薄水色で頬っぺたが赤い癒し系儚げ女の子のはずだ。
そんなわけはないがせっかく目の前に鏡があるのだから見てみようではないか。
髪型はゆるくカールされていて可愛らしい印象。
色はもちろん銀色で水色も少し混じっている。
お腹の傷は無いが垂れ目であり当然のように薄水色で頬は心なしか赤い。
まるで氷の結晶のような繊細さが見て取れた。
手首には貴族の証の刺青が入っていたがまるで蛇のように見えた。
この刺青はその人を表す動物みたいなのが現れるらしいが蛇な性格だなんてすごくツンデレみたいではないか。
黒目(黒くないのでなんともいえないが)が大きすぎて犬みたいだがそれでもこれが普通ですといったように見える。見えてしまう。
口は自然に上に上がり年中にやけているような表情だがそれがいい、というかそれじゃないと駄目じゃないのかという気がしてくるほど似合っている。
爪にはパウダー・ブルーというのか殆ど白い水色でネイルが施されていてもう可愛いとしかいえない。
もっといえばカッコいいの要素が無い。
きゅーぴーチャンを連想させるような幼児体系(幼児ですけど)にまるまるとしたおいしそーなお腹。
唇はぷるぷるでまるで蜂蜜でてかてかにしたみたいだ。
頭の悪そうな顔をしているわけでもなくでも良いわけでもないみたいな。
これは…良いわけのしようがないぞ…。
あ、そういえば勉強の時間なんだっけ。
アリアの部屋って確か隣の部屋だった気がするからさっさと勉強してランニングとか鍛えたりして夢想しよう。間違えた、無双しよう。
現実逃避は必要です。
とてとてと歩く。
シャワー室から出て体を拭いて前から準備してある下着をさっと着てクローゼットを開ける。
可愛い服しかないな…見たところ今夏みたいだしノースリーブふりふりの水色のワンピースでいいかな。
言って置くが一番地味な奴だからな。
趣味じゃないからな。
クローゼットを閉めてまたとてとて歩く。
部屋のドアを少し開けていてくれるのは優しさだろうか。
静かにそろりそろりドアを開け隣の部屋へ向かう。
またドアが少し開いている。
ありがたいねぇ。
「アリアー、いる?」
あら、5歳児ってけっこう滑舌いいのね。
「あうえっ!?」
可愛い声が聞こえた。
「ああ、…お姉さま」
「アリア、お勉強の時間だ、ですよ」
危ない危ない、お勉強の時間だから早く来いなんていうところだった。
アリアは自分で言うのもなんだが儚げな俺と比べて元気でツインテールな女の子で黒髪で目は吊り目気味でオレンジの瞳はとても愛らしい。
イメージは矢沢に〇だ。
にっこ〇っこにーだ。
ところで、俺はこの子が好きだ。
大好きだ。
もちろん恋愛的感情ではなく家族としてだが立派なシスコンだ。
人間として終わっちゃっているレベルで好きだ。
仮に乙女ゲームだったとしてその中でもかなりのシスコンであったがそれがかすむほどに俺の愛は深い。
ツンデレが可愛すぎて何もいえない。
さあ、勉強を頑張ろう。




