表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/11

7.王都

昼過ぎに、王都の門が見えてきた。

王都は、この国の中ではかなり東部に片寄った位置にある。

黒森はこの国の西南端なので、ここからまだまだ距離がある。


「王都は、入るのに大銅貨1枚だそうです」


「それって毎回払うの?」


「貴族の連れと住民以外は毎回」


「冒険者は大変だね。お金持ってる貴族こそ払えばいいのに」


「はい。冒険者協会で情報集めるだけにしましょう」


「うん。でも、黒森方面に向かうって話にしかならなそう」


「そう思います」


大銅貨1枚払って王都に入った。

冒険者協会は入った門の比較的近くにあった。

聞けば、4つの門全ての近くに1つずつあるという。

なるほど大きい街は違うと思った。


冒険者協会で壁の依頼票を見る。

街中での依頼と、薬草採取と護衛依頼しかない。

狩りや討伐はない。


護衛依頼は、銅級だと大した報酬にならず、旅費なしで移動できるくらいの意味しかない。

魔法鞄のおかげで道中の獲物で路銀が賄えている現状、魔法の練習ができなくなるデメリットしかない。


角兎を売りながら職員に訊いてみた。


「ここは冒険者も多いから狩りでは儲からんな」


「やっぱりそっか」


「とりあえず黒森方面に向かって、どこか魔獣の多い街で稼ごうと思うのですが、お勧めありませんか」


「黒森行くなら大街道を真っ直ぐ行くのがもちろん早いが、魔獣で稼ぐなら、ケムニとかニュルンク通る山側の道行ったらいいんじゃねえか」


「ライプツ辺りで分かれるのでしたか」


「それそれ」


「わかりました。ありがとうございます」


「ありがとう」


冒険者協会を出た。


「いい情報もらえたね」


「はい。今日、どうしますか」


「王都は何でも高そうだよね」


「はい」


「夕飯と朝ご飯買って、次の町目指そっか」


「はい。いざとなったら野営しましょう」


「うん。折角だから、名物みたいな食べ物ないかな」


「ああ。屋台ではなくて、食堂も色々ありますね」


「おー。そういうお店、入ったことないかも」


「では朝御飯探しつつ、食堂の話も聞きましょう」


「うん。宿代払ったつもりで食べてしまおう」


結局、角兎ソテーの定食食べた。

大銅貨1枚の食事なんて初めてだ。


角兎は食肉としてはこの辺りでは一番手軽だから、前世ならチキンソテーみたいな位置付け。

味もチキンソテー。

美味しかった。


朝食用には、お肉がゴロゴロ入ったシチューを屋台で買った。

温め直すことを考えるとやはりシチューになる。

銅貨5枚もした。

楽しみだ。

あと、ソーセージが挟まったパン。


朝食を楽しみにして王都を出た。



(明るい。朝か)


半透明にした結界の天幕の中で、朝日の明るさで起きた。

結界で作った寝台の上に毛布を2枚敷いて寝てた。

凄い快適だった。


昨晩は結局野営した。

次の町まで行けないことはわかってた。

宿屋もない村で、村長宅かどこかで屋根を借りるのも検討した。

でもそれだとお風呂に入れないので、野営の方が快適かも、となったのだ。


身支度をして天幕を消した。

寝台に座って毛布を畳んでいると、ケンも出てきた。


「おはようございます」


「おはよう」


「結界のおかげで快適でした」


「わたしも毛布のおかげで快適だった」


シチューを温めて朝ご飯にした。


「美味しい。さすが銅貨5枚」


「美味しいですね」


「魔法でトーストもできないものか…」


「ほんのり温めるのはできているんですけどね」


「うん。どうせなら、中はしっとり外はパリッとを実現したい」


「焼き立て以外ではそういうの食べたことないです」


「あっちでは、そういうトースターあったから」


「へえ。私は聞いたことないです」


「水を少し入れて焼くの」


「はー。水を入れる高級なオーブンレンジなら売っていましたが…」


「うん。あったね」


「それにしても、結界とお風呂のおかげで野営も快適ですね」


「うん」


「午後に夕飯と朝食買って、野営を基本にしても良さそうです」


「そうだね。しばらく続けてみよう」



変わらず、交代交代で魔力感知の練習しながら歩く。

ケンは、感知できる距離が5割くらい伸びた。

わたしも、ほんの1間くらいの至近距離なら、ケンが普通に発動した身体強化を感知できるようになった。


魔獣相手では役に立つ距離ではとてもない…

でもできるとできないは全然違う。

自分の上達がわかって嬉しかった。


昼過ぎに町に着いた。

取り敢えずお昼を買って食べる。


「夕飯と朝の分も買って、今日も野営ですかね」


「この時間ならそうだね」


「何を買いましょう」


「やっぱり、汁物は欲しい」


「はい。でも器が1つしかありません」


「器の中に結界入れて、後から取り出せば仕舞えるよ」


「なるほど。……魔法鞄の中で結界消えたら、どうなるのでしょう」


「どうなるんだろ? 取り出すまでは、そのままの形っぽいけど」


「はい。器の汁物こぼれないですから」


「ん? そもそも、魔法鞄に結界入れられる?」


「あ。魔法鞄に魔法鞄は入りませんからね」


「これは… 気軽には試せないね」


「はい。壊れたら困ります」


「背負い袋に入れるのが無難だね」


木の器に結界入れてシチューを買い、結界ごと取り出して包み直して背負い袋に仕舞った。

そして、空いた器を持って、別の食べ物買うのを繰り返した。


「ちょっと面倒臭いね。朝の分は、そのまま魔法鞄が良さそう」


「はい。結界でくるむ利点がなさそうです」


街道を歩きながら話す。


「二重に包んで真空断熱すれば、保温はできそうです」


「でも、元々熱々ではなくて、結局は温め直すしね」


「あ。真空パックできるかもしれませんね」


「おお。長持ち!」


「ただ、ボツリヌス菌のような嫌気性細菌は、真空パックでも増えて食中毒起こすことがあります」


「え!? そうなの?」


「はい。私が子どもの頃、辛子蓮根事件というのがありました」


「へー。初めて聞いた」


「まあ、九州の話でしたしね。私も辛子蓮根って食べたことないです」


「うん。わたしもない。というか、からしレンコン自体初めて聞いた」


「熊本名産らしいです」


「へー。くまモンが宣伝してたりするかな」


「くまもん?」


「熊本製品を宣伝する、黒いクマのゆるキャラ」


「知らないです」


「そっちにはいなかったのかな」


「どうなんでしょうね。

 ここは、衛生観念がわからないですから、買った物の真空パックは過信できないですね」


「そだね。あんなに衛生的だったはずのあっちでも、家で作ったカレーでウェルシュ菌とかあるらしいからね」



この日は、森を通る道で小鬼の一群に遭遇した。


街道の近くに死体を放置してはならない。

冒険者見習いの時に習う。

他の獣を呼ぶし、衛生上問題あるからだ。

特に水場の近くは厳禁だ。


だから、片付ける手間がないようにあまり近づかれる前に殲滅する。

かと言って、あまり遠いと魔石取るのが億劫だ。


そんな訳で、30間くらいの距離で撃ち始めた。

練習のため、ケンが頭を狙って〈石弾〉で一発ずつ撃つ。

一発二拍弱のペースで5発全弾命中。

命中を見届けてから次を撃つとこれくらいのペースになる。


「今の射出速度と距離なら、撃った後目線切っても当たると思う」


「それだと連射速度上げられますね」


「うん。今でも人に見られたら何か言われる速さではあるけどね」


「詠唱してたら無理ですね。発動語は一応言ってますが」


「一度に5発撃っちゃうのと、どっちが目立たないんだろ」


「詠唱する時間は取れますが、曲芸じみてますね」


「だよね」


魔石だけ取って死体は放置して街道に戻り、夕方まで歩いた。


野営と言っても、薪拾いしないし、整地しないし、煮炊きもしない。

だから、薄暗くなるまで歩いても困らない。


「結界を利用しての野営だと行動時間長く取れますね」


「そだね」


「結界魔法って、冒険者の中で一般的なのでしょうか」


「…わたしは聞いたことない」


「ですよね。人前ではどうしましょう」


「石で作るなら、まだマシなはず。でも一瞬で作ったら悪目立ちだと思う」


「なるほど」


「普段から、石で作る?」


「空気と明かり取りの穴が必要ですね」


「うん。ちょっと億劫だよね」


「うーん。形自体は石でも同じ物ができるのですから、土っぽい色で作れば、騒がれないかもしれません」


「うん。それで行こう。

 野営は、近くに人がいなければ今のままで行こう。

 人がいたら、石で穴あきで作って内側にこっそり結界張る。

 戦闘は、いざという時以外は結界使わない」


「はい。それと、毎回発動語言うことにしましょう」


「そだね。攻撃魔法以外は、ほとんど言ってないね。じゃあ、〈天幕〉かな」


「はい」


「まあ、水場とかでなければ、わざわさ野営してる人はいないと思うけどね。

 うちらが場所変えてもいいし」


「そうですね」


夕飯を食べた後、明日の分の食べ物は結界を解いて魔法鞄に入れ直した。


「野営用のマットとかってあるのかな」


「枯草を入れて使う袋がなくはないのですが…」


「ふんふん」


「枯草を集めるのも簡単ではないです」


「言われてみれば確かに」


「基本はただの敷物として使って、状況によってはマットにもなる、という程度なのでしょう。

 それか、枯草を入れっぱなしにして運ぶか」


「そっか。結界の寝台と毛布の方がずっと快適だね」


「はい。軟らかい結界で、エアマットなら作れそうです」


「それだ! やってみる」


空気を通さないことを意識しながら、軟らかい結界で座布団みたいなマットを作って座ってみた。


「あれ?」


潰れて地面についてしまった。


「軟らか過ぎた?」


少し固めの結界を意識しながら、マットの厚みを倍にしてみた。


「うーん?」


地面にはつかないけど、座り心地悪い。

何だろう。真ん中が沈み過ぎる?


「円筒状の結界を、何本も並べる形にしてはどうでしょう」


言いながら、ケンも作ってみてた。


「うん。座ってみてください」


ケンと場所を代わる。


「断然いい!」


「安いエアマットで定番の形です」


「へー」


わたしが知ってるエアマットは、バルブを開けると勝手に膨らむ奴で、平らなクッション状だったけど…

色々あるんだね。


「これを身長分並べればいけそう」


「ですね」


「よし。じゃあ天幕に入るね。おやすみ」


「おやすみなさい」


お風呂に入って、洗濯して、お湯を捨てて湯船を消した。


さあ、寝る準備だ。


ちょちょいと寝台を作って、朝まで保つ様に魔力を込めた。


2尺四方のマット作って、寝転がってみる。

…大丈夫そう。

さらに2枚作って並べた。

毛布を1枚敷いて寝てみる。

いける。


毛布1枚は温存だ。

掛ける用の毛布を出して、荷物を片付けて横になった。


〈灯火〉を消して、天幕を半透明にして寝た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ