表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
6/11

6.魔力感知

朝だ。

寝過ごさずにちゃんと起きれた。


いつもの様に身支度する。

背負い袋の中身はほぼそのままにして、毛布を魔法鞄に入れた。

元々荷物は削っていたから、背負い袋は負担になる程の重さはない。


窓の鎧戸と扉を開けたままにして物思いにふける。


昨日年齢の話が出たが、今18歳。

前世での歳に大体追いついた。


最後の方の記憶は曖昧だ。

高校の卒業式は憶えている。

私服の学校なので和装した。

大学の合格通知も憶えている。

家族でお寿司を食べにいった。

しかし、大学生活を送ったのかどうかよく分からない。


「おはようございます」


ケンが通りがかった。

ケンは、歳上っぽい感じがする。

あるいは、こっちでの育ちの違いか。


「おはよう」


「もう出られますか?」


「大丈夫」


「では荷物持ってきます」


「うん」


2人で受付に行って、部屋の確認を受ける。

宿は、シーツ持ち去られるだけで赤字だから。


問題はなく、鍵を返して外に出た。


朝御飯食べて、昼食を調達して魔法鞄にしまい、来た時とは反対側の門から町を出た。


2人並んで街道を歩く。

わたしは身体強化の練習をしながら。


「ケンはどこから来たの?」


「プレンツです。国境近くの」


「どんな魔獣が出るの?」


「基本は小鬼で、一番強いので牙猪ですが、偶にしか出ません」


「小鬼じゃ銀級になれないね」


「はい。でもソロで牙猪狩りに行こうとしたら止められますし」


「うん」


「レナはどのような感じですか」


「わたしはアンガミ領のピノ村。

 茶狼がたまに出るくらいで、角兎狩ってた。

 村には冒険者協会ないから、角兎は肉屋に売って、魔石貯めてた」


「なるほど。目的地はどこですか」


「とりあえず王都目指して、どこかで情報得ようかと」


「同じです。基本、海側は強い魔獣が少ないですから、街道をこちらに向かうしかないですよね」


「シュヴァイツ国境の黒森は強い魔獣沢山いるらしいけど、国の反対側で遠いし」


「路銀稼ぎながらだと、半年掛かっても不思議はないですね」


「だよね。あ、わたしの路銀は、全く収入なしだと一月もつかどうかくらいしかない。ごめん」


「魔法鞄あるから、道中の獲物狩れば大丈夫でしょう」


「魔法鞄、おんぶにだっこになる。お世話になります」


「パーティだから気にしないでください」


「ありがとう」


「角兎なら、どのくらいの距離いけますか」


「動いてないなら、40間は一発でいける。それ以上なら何発か同時に撃ってる。60間は問題ないよ」


「それ以上の距離で見つけることはそうなさそうですね」


「そうだね。ケンの〈斬撃〉はどれくらい?」


「倒すだけなら15間はいけますが… 丁度横向いていてくれないと、腸ごと真っ二つにしてしまいます」


「あー。食べられないね」


「はい。草食動物なら問題ないのですが」


「〈石矢〉の練習方法はわかったと思うから、今日は〈石弾〉やってみる?」


「はい。どれくらいの大きさが良いのでしょう」


「悩ましいけど、わたしはこれ」


2寸✕5寸、280mLのペットボトルくらいの大きさの石を出した。


「貫通力はあえて抑え気味にしてるのでずんぐりしてる」


「あぁ。打撃力持たせる感じでしょうか」


「うん。近付いて来たのを足止めできるように。

 角兎にはオーバーキルだけど、それ以外は基本これ」


「角兎にはどのようなのを?」


「これ」


マッキーくらいの石を渡す。


「これはなんて呼んでいるのですか」


「〈石針〉」


「なるほど」


「どっちの練習でもいいよ。まずは同じ大きさを安定して作ることから」


「では〈石弾〉にします」


それぞれ、〈石弾〉と身体強化を練習しながら歩いた。



お昼前に、角兎を見つけた。

70間くらい離れてる。

身体強化で、視力も少し上がってるかもしれない。

立ち止まって指差すと、ケンも見つけた。


ケンが、(どうぞ)ってゼスチャーするのでわたしが撃つことにする。


指を向けて狙い、〈石針〉を5本まとめて撃つ。


角兎が気付いて動きかけたところに着弾。

2発が貫通した。


「この距離で、凄い」


ケンが呟いた。


「遠いから、魔力を余分に使って速度を上げてる」


「反応してましたね。昨日の私の〈石矢〉の速さなら余裕で逃げられていました」


「これ、放物線じゃなくてイメージに従って飛んでるから、軌道修正もできるよ。でも寸前で跳ばれると修正が追いつかないから、複数撃ってる」


「なるほど」


「楽に上げられる速さには上限があって、それを超えると魔力の効率がどんどん悪くなる。

 魔法はイメージではあるけど、限界もある」


「では、レナの結界にも限界があるのでしょうか」


「あるよ。わたしの結界はわたしの〈岩槍〉で壊せる。

 それに、全力で魔力込めても竜を止められるかはわからない。

 根拠はないけど、今のわたしでは止められないと思うべき」


「格の違い、でしょうか」


「うん。この世界にレベルはないけど、格の違いはある。

 角兎程度しか倒していないわたしでも、筋力は上がってる。

 竜は、桁違いの強さのはず」


「魔法力の上昇はどのようになるのでしょう」


「わからない。勝手に威力が上がるのか、楽に上げられる上限が上がるのか、魔力効率が良くなるのか」


話しているうちに角兎のところに着いた。

短刀で首を切って血抜きをする。

魔法鞄がなければ、内臓も抜いて軽くするところだ。


「これはレナの獲物にしてください。パーティで分配するのは、街で依頼を受けるようになってからにしましょう」


「うーん…。手持ちが少ないから甘えるね。ありがとう」


角兎と言っても、普通の獣である兎とは関係ない。

兎みたいに後ろ脚がゴツくて、跳んで頭突してくる魔獣だ。

柔らかくて美味しい肉が10kgくらい取れるので売れる。

魔石と毛皮もそれぞれこづかいくらいの額にはなる。

これ1匹で、1日分の旅費には十分なる。


ちなみにわたしの服はこれの革だ。

食肉としても革としても、この国の海側の平原部では一番馴染み深い素材だ。


結界で吊るして血抜きをしている間に昼食にした。


魔法鞄の中身は互いに干渉しない。

中で昼食がこぼれたりしないし、獲物を仕舞っても他の荷物が汚れたりしない。

でも腐敗はする。

よくわからない。


焼いた小麦粉生地で巻いたソーセージと深皿に入ったシチューを出して、魔法で温めて食べた。


「温かい物がこんなに手軽に食べられるのは幸せです」


「わたしも魔法鞄のおかげで重さを気にせず運べて幸せ。

 1級を買うまでお金貯めようなんて無理しないで、もっと早く初級を買えば良かったって昨日反省した」


「獲物を入れるには半端ですが、旅にはとても便利ですね」


「本当に」


「少し怖いことを思い付いてしまったのですが… 食事を温めている魔法、離れた生物にも掛けられるでしょうか」


「あー。レンジに生き物入れるアレだね」


「はい」


「うーん。生体は、魔力による直接的な干渉に対して、抵抗力がある。

 それに、魔力は距離による減衰が酷い。

 だから、できたとしても、効率的にどうかはわからない」


「なるほど。だから、石を飛ばして攻撃するのですね」


「うん。ただ、炎系の魔法の効率はわからない。

 売る魔獣も食べる魔獣も土系で倒すから、炎系って練習もほとんどしてない。

 打撃耐性の高い魔獣向けなのかな」


魔法で水を出して食器をゆすいで仕舞う。

角兎を例の1級の魔法鞄に入れて貰って、街道に戻った。


「ケンは武術の達人っぽいから聞くけど、気配って感じられる?」


「近ければ感じられますが、魔力を感じている気がします」


「凄い!」


「でも角兎で10間弱がせいぜいです」


「何か、練習方法ないかな」


「今、私の気配って感じますか」


「わからない」


「では、少し視界の外に出てみるのでそのまま歩いてください」


「うん」


ケンが後ろにまわる。


「どうですか」


「わからない」


「では」


「…!? 感じる!」


「やはりそうですか」


「何したの?」


「身体強化を強く発動しました」


「じゃあ、やっぱり魔力を感じるんだ」


ケンが横に並んできた。


「この感覚が、鍛えられれば良いわけですね」


「そうだね。歩きながらするのと、瞑想みたいにするの、どっちがいいんだろ」


「瞑想は、現状時間が取れないですね。宿に着いてからくらいです」


「だよね」


「では、私が後ろを歩いて、身体強化を強めたり弱めたりするので、感じられたら手を挙げてください」


「うん。交代交代でやってみよう」


「はい」


ケンは、わたしが普通に身体強化掛けた状態なら10間くらいまで感じ取れた。

わたしの存在感、角兎並…

角兎の跳躍力は、身体強化によるものなのかもしれない。


町まで延々続けてみたが、上達した感じはなかった。

それと、手を挙げるのは目立つので、手を開いたり握ったりすることにした。


夕方町に着いた。

門衛に、冒険者協会と肉屋の場所を聞いて入る。

冒険者協会に行く途中に肉屋があった。


「ここで売ろうと思うんだけど、どうかな」


「どうぞ」


「ありがとう」


店に入った。


「こんちはー」


「いらっしゃい」


「角兎売りたいんだけど、見てもらえる?」


「なら、こっちだ」


店の片隅の作業台を指す。

ケンが魔法鞄から出してくれた。


「血抜きして、魔石は抜いてある」


「キレイだな。大銅貨6枚でどうだ」


「うん。それでお願い」


「まいど」


わたしが冒険者登録した町の倍くらいの値段。


「思ったより高いけど、いつもこんな値段なの?」


「ああ。ここはいつでも肉不足なんだ」


「そうなんだ。ありがとう」


「おう」


店を出て冒険者協会へ向かう。


「2日分くらいの旅費になった。ありがとう」


「どういたしまして。そもそも私ではあの角兎は狩れませんし。

 まあ、弓を使えば狩れるでしょうが、矢が消耗品ですから」


「この町も、肉高いんだね」


「はい。その分野菜に期待しましょう」


「うん」


冒険者協会でお勧めの宿を聞いて向かう。

その後はいつもの流れで、宿決めて、屋台でご飯食べて、宿に戻って部屋に入って寝る準備した。


(今日も有意義な1日だった。魔力感知頑張ろう)


毛布にくるまって、幸せを感じながら寝た。



その後1週間程掛けて、雨にも降られず順調に王都近くまで来た。


途中で、撃つときに石を圧縮することを教えた。

重さはそのままで太さ・長さが7〜8割くらいになって、硬さと密度が上がるので貫通力が上がる。

同じ密度なら、長さはそのままで太さだけ縮める方が貫通力は上だけど、全体的に縮める方が簡単なのだ。


圧縮して増速した〈石弾〉は、かなりの威力がある。

…というか、わたしが相手するような魔獣にはオーバーキルだ。



わたしの路銀は角兎で賄えている。

北に向かうにつれて魔獣が増えたせいもある。


練習に〈石弾〉で狙ってみたら?とケンに勧めてみたけど、

「食べられなくしてしまうのは勿体ないし、練習はまだ立木とか岩で十分だから」

と譲ってくれた。


代わりに、小鬼は全部ケンの練習台にした。


小鬼は魔石以外売れる部位がないので、討伐依頼が出ていないかぎりお金にならない。

領主がいるような街では、領兵の訓練を兼ねて狩ってしまうので討伐依頼は基本出ない。

討伐依頼が出たとしても、普通は一匹銅貨数枚という話だ。

魔石と合わせても大銅貨1枚にならない。


魔石は、大きい街程需要があって高く売れる傾向にある。

例えばわたしが育ったような農村では、普通の村人は魔石を使わない。

そもそも魔道具を持っていないから需要がなく、魔石を買う人が基本いない。

だから、狩った魔獣の魔石は溜めておいて、行商人への支払いに使う。

魔石自体が通貨のように使われている。


「〈石弾〉も、わたしと同じくらいの速さになったね」


「おかげさまで。

 ただ、魔法としては十分なのかも

しれませんが、短槍との併用はまだまだです」


「短槍から片手離すか、短槍持ったままで指し示さないといけないのがネックだね」


「はい。物語の魔法剣士が片手剣なのは、理由があったのですね」


「わたしは、魔法使いが護身用に短槍持ってるってくらいの腕だし…」


「予備の武器として、短剣も持ってはいるのですが、将来を考えると何が良いのか…」


「根本的な解決じゃないけど、さしあたって思い付くのは、左手でも撃てるようにする、指差さずに拳で狙えるようにする、ショットガンみたいな狙わなくても良い魔法を練習する、辺りかな」


「どれも、できた方が良いことですね。

 ショットガンみたいなのって、レナは身に付けていますか」


「うん。一度に7発撃つけど、威力は悩むところ。

 でもケンの場合は、面倒臭いこと考えずに〈石弾〉と同じやつでいいんじゃないかな。

 弱い相手に使うことないだろうし」


「名前はどうしてますか」


「そのまま〈散弾〉。石って入れるの諦めた。炎で出すことないだろうし」


「なるほど」


「使う場面がわたしと違うだろうから、どのくらいの範囲にばら撒くかとかはケンが考えてみて」


「わかりました」


昼過ぎに、王都の門が見えてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ