表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
5/5

5.洗濯

宿でケンの部屋に入った。


「鞄と毛布渡しますね」


「ありがとう。魔法鞄、大銀貨1枚とその1割だったよね」


「はい」


「はい、これで」


「はい。確かに」


「本当にありがとう」


形は大ぶりな巾着袋。

紐を通せるようになってるので、腰紐に通してチュニックの下に隠す。


「どういたしまして。毛布、好きなの選んでください」


「じゃあ、これ」


「はい、どうぞ」


「早速洗濯するね」


「では私も」


排水の都合で井戸の側で洗濯することにした。


「まあ、まずは普通に足で踏もうかな」


たらいサイズで倍の深さの結界を出して水を張った。

洗剤を入れて軽く混ぜ、毛布を1枚入れてみた。


少し考えて、靴の上から結界で覆って踏んでみた。


「うわ。真っ黒」


「これは、洗うの大変ですね」


「うん。今日は1枚ずつ洗って続きは明日かねー」


「はい」


適当に踏んだところで、結界に穴を開けて排水。

何度か洗うことにする。


「魔法の練習として、やってみては」


「そうですね」


ケンも結界を出して洗い始めた。


わたしは、踏むのに飽きたので魔力で回して洗ってみることにした。

水を抜いて、たらいの高さを更に倍にする。壁の内側に突起を作って水を入れる。

蓋をして、斜めに立てて回してみた。


「斜めドラムの洗濯機ですか?」


「うん。ふと思い付いた」


「当時、興味はありましたが、高くて手が出ませんでした」


「わたしは実家暮らしだったから、値段は全然意識にないなー」


「普通の洗濯機の、4〜5倍くらいでしたかね。大卒の初任給くらいしたと思います」


「へー」


「それなら、まとめて洗えそうですね」


「そうね」


「残りの3枚、踏んで洗うのは私がやるので、その続きをお願いできますか?」


「うん。大丈夫」


バシャッ バシャッ と音を立てて回ってる。

洗濯機は、もっと速く回ってた気もする。

でもこっちの方が大きいから、落下距離が長い分洗浄力あるかもしれない。


排水して、脱水…したら周りに飛び散るね。危ない。


ドラムに細かい穴を開け、更に外側に覆いを作ってから中のドラムを回す。

うん。上手く脱水できてる。


もう一度すすぎ洗いと脱水して、終わりにした。


結界で物干しを作ってとりあえず干しておく。


ケンを見ると、最初に洗ってた毛布は結界のたらいに入れてあって、更に大きいたらいで3枚まとめて踏み洗いしてた。


「4枚まとめて洗っていい?」


「お願いします」


「この洗濯機、結構便利かも」


「乾燥もできますか」


「どういう方法がいいかな。普通に干すより洗濯乾燥機使う方がふんわりするらしいよ」


「はー」


「となると、温風吹込みながら回転かなー」


継続的に温風吹かせ続けるって、魔力的にどうなんだろ。

うーん。

まあ、やってみよう。


「パーティで買う物考えて、明日買い出しかな」


「そうですね」


「午後、一人で自分の買い物行っていいかな?」


「どうぞ」


「ありがとう。魔法鞄売ってもらったから、物増やそうと思って」


「なるほど」


「荷物ぎりぎりに削ってたから、着替えもほとんど持ってないくらいで」


「ここだと、あまり売ってないかもしれませんね」


「そうだね」


排水して、脱水する。

もう一回すすげばとりあえず良いだろう。


「回転を維持するのには、やはり魔力を使うのでしょうか」


「うん。少量流し続けてる」


「今度試してみます」


「わたし、大抵のことは魔法で済ませてたから、鍋も持ってないんだけどどうする?」


「それで、不都合はなかったのでしょうか」


「うん。特には」


「では、パーティとして大きいのを買うとかはなしで、様子を見ましょう」


「わかった」


「私はソロなので基本は宿に泊まってたのですが、レナは結界で野営とかしてたのでしょうか」


「そう。泊まるのもお風呂も困らなかったから、食べ物以外では町に泊まる理由なかった」


「実は、物質を簡単に生み出せることに釈然としない思いがあります。

 水と石以外には何が出せるのでしょう」


「鉄は出そうとしてできなかった。他は試してないよ」


「石が出せるのに鉄が出せない。では石英やチャートは…いえ。ここでやるべきではありませんね」


「あぁ。二酸化ケイ素」


「はい。あちらでありふれた普通の石は、二酸化ケイ素を含んでいました」


「魔法で生み出している石が何なのか、気にしてなかった」


「魔法で、分離や精製はできるのでしょうか」


「試したことない。言われてみると、わたしの魔法は冒険に関わることに限られてるかも」


「その歳でソロなら、生活で手一杯だったでしょうし」


「そうだけど、歳変わらないよね?」


「18歳です」


「同じ」


「私は家族に恵まれて余裕があったのです。魔法鞄もらいました」


「なるほど。うちは普通の村人だけど、まあ生まれに不満ないよ。家族仲良かったし。

 強いて言えば、冒険者協会がある町だったら、実家暮らしのままお金貯められたのになーって思うけど、マイナススタートじゃなかっただけ良かったと思ってる」


「私も家族仲は良かったので、家に何かあった時は助けになりたいと思っています。ただまあ、私まで情報届かないと思いますが」


「そっか。とりあえず脱水まで終わった」


「どうやって乾かすことにしましたか」


「温風吹込みながら回転させてみようかと」


「なるほど」


「わたしの毛布も入れちゃうね」


「はい」


その後乾燥は想定通りにできてふわふわになった。


「今晩楽しみ。本当にありがとう」


「どういたしまして。何枚か使って大丈夫ですよ」


「荷物の量に心配なくなったから、後で売ってもらうかも」


「差し上げますよ」


「ううん。これはケンが一人で手に入れたものだから、お金は払うよ。あの見積もりの額だけど」


「わかりました」


乾いた毛布を仕舞って、夕ご飯買いに行った。

いつものシチューだ。


「あんたら良く来るな。他のやつらは、これで1日分の野菜、とか言ってるのに」


「普段野菜あまり食べられない分、食い溜めしてるの」


「はー。そんなもんか」


「毎食食べても良いくらい美味しいよ」


「ありがとよ」


シチュー以外は、適当に串焼き肉と平たいパンを買って帰った。


「結局、パーティで買う物って思い付かないね」


「さしあたってこのまま行動してみて、必要感じたら検討するのでいいのかもしれませんね」


「そうだね」


「昼食は、朝に買って魔法鞄に入れていって、夕食は用意せずに次の町目指して、いざという時は保存食食べるということで良いでしょうか」


「うん。夕食あったかいの食べたいよね」


「明日は1日各自で行動で良さそうです」


「じゃあそれで。武器屋も一人で行ってまとめて受け取ってくるよ」


「ではお願いします」


「うん」


部屋に戻って、お風呂に入って洗濯して寝る準備終えた。


「ふふ。洗いたての毛布、楽しみ」


毛布を縦半分に折り、間に挟まって寝た。

幸せを感じながら、あっと言う間に眠りに就いた。




…朝だ。


窓を開けて明るさを確認する。

…少し寝過ぎたかもしれない。


まあ、朝早くからお店はやってないからいいだろう。


やはり毛布は良いものだ。

もう1枚、譲ってもらうべきか。


支度をして、朝ご飯食べに出た。


1級の魔法鞄を中古で買うまではと思って節制してきたけど、初級の魔法鞄入手して気が楽になった。


…意地を張らずに、まずは初級を買っておくべきだったのだろう。


とりあえず、下着の替えを買おう。

街着の様なのは、もう少し大きい街で探そう。


屋台で朝食を済ませ、町をうろつく。

…特に買いたいのは見かけず、予定通り肌着だけ買った。


夕方まで時間が余ったので、昼食を買って食べて宿に戻り、身体強化の練習をした。


夕方、根を取りに行って宿に戻るとケンがいた。


「はい、これ」


「ありがとうございます。何か買いそびれた物とかありませんか」


「大丈夫。ただ、毛布もう1枚売って欲しい」


「はい。私も沢山持っていてもしょうがないので、1枚の値段で2枚どうぞ」


「うーん。じゃあ、お言葉に甘えるね。これまで節制し過ぎてたって反省した」


「では好きなの選んでください」


「うーん。じゃあこれ」


「どうぞ」


「ありがとう。はい、お金」


「ありがとうございます。

 少し、手合わせしてみますか?」


「お願いします」


井戸の側で手合わせしてみた。

全く手も足も出ない。

ケンの動きが速いわけではない。

多分、わたしと同程度の速さに抑えてくれている。

にも関わらず、わたしの攻撃は軽く受け流され、ケンの攻撃は虚を突かれて防御が間に合わない。


「相手の一点を凝視しては駄目です。

 こちらの狙いを読まれますし、凝視している部分以外が見えなくなります。

 ピントを遠くして、相手の全体をぼんやりと見ます」


「わかった。やってみる」


その後も手合せを続けた。

…これで急に強くなったりはしないけど、とりあえず一点を凝視せずに全体をぼんやり見るのはできるようになった。



「今日の夕飯どうする?」


「折角だから、少し豪勢にしてもいいですけど、行きたいお店ありませんか」


「ごめん。全然思い付かないから、お任せしてもいいかな?」


「私も思い付かないので、いつものシチューと、その近くの屋台にしましょうか」


「うん。あのシチューなら間違いないよね。

 ところで、ケンが参考にした小説のキャラって、職業は何だったの?」


「侍です」


「え。和風ファンタジー?」


「いえ。世界観は完全に西洋で、そこに侍と忍者という職業が入っていました。

 原作ゲームでの侍は、単に攻撃魔法も使える剣士で、和の要素はなかった様に思います。

 『気』で斬るというのは小説の独自設定ですね」


「はー」


「そう言えば、原作での忍者は武装度が低い程攻撃力が高いという面白設定な上に、クリティカルが出ると相手の首を斬って一撃死させるのですが…」


「え。脱ぐと強くなる?」


「いえ、そういう意味では多分ない、はず」



屋台で食事を終えて宿に戻ると、明日の朝宿を引き払うことを親父さんに告げて部屋に入った。


いつもの様に食器を洗って、お風呂に入って、肌着を洗う…

今日買ったのも洗い、魔法で乾かして身に着けた。


そして、毛布と毛布の間に挟まって寝た。


新しい肌着とたっぷりの毛布。

幸せだ…と思いながら眠った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ