+14 始末する側
こいつ、強いな。
まあ正直言って、俺は膨大な魔力にものを言わせていた感じだから、剣術やら拳術やら、ほとんど知らん。だからそういう意味合いでの強さってのは、俺は測れない。
でも、こいつは間違いなく強いだろう。正直言って、俺がこいつと魔力が同程度だったのなら、俺に勝ち目なんて無いほどに強い。
流石にギルマスほど強いかと言われたら、そこまで強くないけど。俺が出遭った拳を使って戦う人間の中で、恐らく2番目に強い。1番目はギルマス。
「チっ」
けどまあ、ここは日本じゃないから、技術や筋力だけでものは語れない。魔力もあるし、魔法もある。考慮するべきものが大量にある。
まあ結論を言って。俺とこいつとじゃ、相手にならない。
確かに、こいつは強い。だって今のところ、押しているのはあっちだし。まあ押してるだけで、いつでも馬鹿な量の魔力を使って防御しての反撃ができる。できるけど、ギルマスとの一件のせいで、攻撃を喰らうのが一種のトラウマみたいになってる。まあ痛さを感じないから、恐怖はないけど。
だからまあ、押されている訳であって、正直いつでもこいつを倒す事はできる。
あ、そうそう。こいつを倒せない原因は他にもある。
俺の事を監視している人が、どーも3人はいる。うざい事に、この距離感は、倒して回ろうとすると、最低でも1人は逃してしまう。
まあ、俺がここでダラダラと戦っていても逃げられる可能性はあるんだけど、流石にそれはないと思う。だってまだ味方が負けてもいないのに、姿も見せずに逃げる事は、恐らくないだろう。多分だけど。
ハッキリ言えば、あいつらは一体全体何が目的で俺を殺そうとしているのかがわからない。でも確かに言えるのは、俺を殺そうとしている事。だからそうそうに逃げる、撤退することはないと思う。
けど、そうそうに今回殺す事を諦め、撤退する可能性も、なくはない。
だから理想としては。こいつとダラダラと遊んで、しびれを切らして援護に来てもらう。まあそこまではいかなくとも、目の前のこいつと戦って疲れるであろう俺を仕留める為に近づいてくる、って事になってほしい。
「はぁ」
ん?なんか相手、ため息をついていらっしゃるんですけど。何故に?
「こいつは、使いたくなかった。俺以外の力を借りてる気になるかなら」
「何言ってんだ?」
「諦めろ。この技を使って生き延びた奴はいねえ」
ほう、俗に言う、必殺技ですか。たいしたものですね。必殺技は技術や技などで大打撃を与える威力や破壊力があるらしく一流の冒険者や騎士は誰しもが自分の必殺技を持っているらしいです。
あ、俺?俺は必殺技はない。だって必ず殺す技じゃないし。
「イデア式拳術」
なんか、形容しがたいけど、雰囲気が変わった。本気を出したギルマスと、なんか同じ香りがする。
「イデア式移動術」
「!?」
速い。速すぎて目で追えない。目に魔力を籠めてたはずなんだけど、それですら残像すら捉えれなかった。
けど、辺り一帯は、いわば俺の結界の中だから、どこに行ったのかはわかる。わかるけど、目で追えない速さで動いたって事は、恐らく相手が動いた方向を向いたところで、攻撃は終わってる事だろう。
すなわち、攻撃の手を一切見る事なく、防御するしかない。
「イデア式拳術74番、内破臓壊」
いや、これは防御じゃダメだ。俺の直感が全力で警鐘を鳴らしている。ギルマスがやってきた攻撃に近いと、直感が言っている。
躱すしかない。だがどうやって?俺が魔力を全力で足に回したところで、今からジャンプとかやっても遅い、遅すぎる。膝を曲げて魔力を足に集めて等色々な工程を行っていたら、防御することよりも酷い事になる。
くそっ、こんな相手に魔法を使う事になるとは。ちょっとばかし舐めてたようだ。
「なっ!」
糸を使った緊急脱出。
糸でぴゅっと引っ張ってる訳だから、俺が何かしらの溜めを行った訳じゃない。だからこそ余計に、相手はびっくりしたようだ。
「くそが。イデア式拳術88、」
「!?」
どうも、目の前の相手を注視しすぎていたらしく、俺に向かってきていた人間に気づけなかった。
けどまあ、驚いた理由はそこじゃない。完全な不意を突いたにも関わらず、攻撃がぬるすぎる。ぬるいというか、ただタッチしただけ。攻撃ですらない。
「1秒にも満たないたった1回のタッチで、これだけ魔力を取れるとは。いやはや、お頭が始末しろというのも無理はない」
「誰だあんた?」
いやなんでその質問をした、俺。さっきまで戦ってた相手すら誰かわかってないじゃん。
「おいてめぇ、なんで出てきやがった。こいつは俺の獲物ぞ」
「ええ、普段なら手を出すつもりはないよ。なんたって僕達の班でのタイマン最強は君だからね。敵に回したくない。だから機嫌を損ねるような事も、普段ならしない。そう、タイマンの邪魔なんてしない。でも今回の君は、自身のプライドより命令を優先した。だからこうして出て来た訳だよ。我々としても、君を失うのは大きな損失だからね、死なせる訳にはいかないのさ」
「チっ、減らず口を」
「いえいえ。君だってお頭の命令は破りたくないでしょう?ですのでこうして出て来た訳だよ」
「勝手にしやがれ」
「ええ、勝手にします」
ん?こいつらは、俺の敵で、あいつらは仲間同士って事だよな?流石にそうだよな?
じゃあつまり、俺の目標は達成されつつある、って事だな?相手が観戦じゃなく、参戦してくるって言う、ありがたいパターンに入ったか?
「では失礼して。イデア式暗殺術25番、シュンドウ」
こいつもよくわからん技を使ってくるのかよ。
「うわっ、速いな」
さっきあいつが見せたほど速くはないものの、それでも常識で語れるような速さをしてない。
「ああ、すごい、すごすぎる!たったの2回しか触れていないのに、すでにお頭よりも魔力は多い!」
……、? !
あいつ、攻撃前と攻撃後で魔力の量が違う。うん、なんで?
さっき言ってた、イデア式暗殺術ってのと関係してるのか?うーん、考えるにしては、証拠も無ければ、やられた回数もまだ1回しかないし、考えようがないけど。(最初に触られた事は既に頭かは消えている)
いやでも、魔力が増えるのなら、やっぱちゃんと考えておくべきだよな。だって放置してたら厄介な事になるだろうし。
「俺を無視するんじゃねえ!」
「うをっっと!」
そうだったそうだった、こいつがいたな。あり得ないぐらい身体能力が高いこいつを忘れてた。いやー困るなー。俺はマルチタスクってのは苦手なんだよ。ただでさえ、あいつの魔力の増える仕組みについて思考しつつあいつをいなさないといけないってのに、こいつとも戦わないといけないとか、ちょっと俺には厳しいよ。
「ってな訳で、お前には退場願おう」
「は?」
「俺を殺しに来たんだ。多少の怪我は覚悟してるだろう?」
これは、あれだ。あなた、覚悟して来てる人ですよね、って奴だ。俺を殺そうとするって事は、殺そうとされるかもしれないという危険を覚悟して来ている人ってわけだ。
てな訳で。俺は容赦なく攻撃させてもらおう。
「紫電一閃」
「ぐああああああああああ」
まあ流石に普段の俺なら躊躇するんだけど、どーも俺の命が狙われる理由がわからんから、ここは正当防衛という事で、あいてに攻撃することを許してもらいたい。
え、まさか、俺がタイシだって、バレちゃった?……、それなら悪い事したかも。相手は正当な事をしてるのに。ま、いいか。始末しようとしたって事は、始末される覚悟をしてきているはずだし。
「さらに、ちょちょいのちょいちょい」
魔力の糸をちょちょいのちょいして、相手の手を拘束し、壁に縫い付けた。
「さあ、やろうか?」
いやー。本当ならこの暗殺者の話って1話で終わる想定だったんですけど、なんか2話目も終わり、3話目に入ろうとしているのですが。
あ、ちなみにあの魔力が増える人ですけど、魔法です。『手で触れている間、相手の魔力を吸う』ってな感じの魔法です。詳細は、語られるのかな?語られないのなら、次回のあとがきにでも書こうかしら。
新作『馴調魔姫』やってます。面白いはずです。読んでやってください。私が喜びます。




