+13 狙われる
姫様の護衛が終わったし、王都を離れよう。
なんたってまあ、姫様に素性がバレちゃったせいで、ここにいたら危ないだけだから。あ、別に姫様を責めたい訳ではない。ただ単に、ちょっとでも身の危険があるのなら、早急に離れるべきだろうさ。
んでもって、この辺りの冒険は終わった。まあ全部終わった訳では無いが、まあパーセントで言えば、大体三割ぐらい見れたはずだ。だからとりあえず、次の冒険に出かける。
え、パーセントで言うのか割合で言うのはハッキリさせろ、だって?まあまあ、大体一緒なんだし、気にするな。
んでもって、今は王都にて、旅立つ準備をしている。
俺には空飛ぶ絨毯とか、まあ名前はまだない謎の乗り物だとかで、高速移動手段を持ってるけど、流石に昨日王都に居ました、今日南の国に居ます、じゃおかしな事になる。
だって、どれだけ速い馬車を使っても、やっぱり丸1日は掛かっちまう。それも一切馬を休ませることなく、そして常に全速で走らせたら、という条件付き。
それを馬も使わない人間が、たったの1日で国と国とを移動したとなると、色々と面倒が起きる。
だから違和感を与えない為にも、歩いてゆっくりと旅をする。だからその旅に必要になる、食料を買い込む。
「にしても、野菜少なくないか?」
「しょうがないじゃない。時期的には別に3日4日直射日光が当たっても問題ないだろうけどね。やっぱり長旅になるのに、鮮度に不安があるものを食べるのって、勇気がいるじゃない?」
「うんまあ、一理ある。一理あるけど、俺はその辺りの常識は壊せるのだけど」
「……」
うん。だって、氷を入れた発泡スチロール容器とか、全然作れるし。いつどこでも氷を作れるし。うん。流石に生ものは厳しいけど、野菜程度なら、1週間は持たせられる。
「だってお肉を食べて良いなら食べたいんだもの!」
「うんまあ、俺もそれはわかるけどさ。ディアは菜食主義というかさ。野菜をメインで食べてる訳でさ。うん。もうちょい野菜買わない?」
「い、いえ、私の事は、その、気にしなくても、良いので」
「よかねえだろ。そりゃあ緊急時じゃ信仰より生き抜く事が重要だろうけど、これは緊急時じゃねえじゃん。信仰を蔑ろにするのはダメでしょ。罰が当たる」
「その神様って、私の事?私の事だよね?」
「はーいキャスさんは黙って」
まあ確かにね。俺のすぐ隣に神様を名乗っている謎の者がいて、恐らくディアの信仰している神ってのはキャスの事になるだろうけどさ。やっぱり宗教関連は、あれじゃん。経典に基づいた行動をするべきだと思うんだよ。いくらキャスが許そうとも、経典が許さないんだったら意味ないじゃん。
「だ、大丈夫です。別にお肉を食べてはいけないって事じゃ、ないので。た、ただ、贅沢をするな、と、そ、それだけです」
「うーん、まあそれなら良いけど」
「ならお肉の買い足しをしましょう」
「そうはならんやろ」
別に野菜を買い足さなくても良いってだけで、肉を買い足すってのは、意味がわからんだろう。
「んーーーー、」
「どうしたの、坊や」
「んにゃ、ちょーっとばかし、忘れ物をしたような気がするんだわ」
「ん?別に坊やなら、物を無くしたところで、すぐに作れるでしょうに」
「いやー。ほら、俺の持ってるものって、基本はオーバーテクノロジーだし、他人に拾われたくないってかさ」
「あー。なるほどね。じゃ、私もついていくわ」
「わ、私も」
「いや、なんか忘れてるかも程度だから、無駄骨になるかもしれないし、そっちは先に宿に戻っててくれ。あとはまあ、買い足しがしたいのなら、銀貨3枚ちょっとまでなら許すから、なんか買ってきな」
「ぶーぶー。坊やと一緒が良いのが伝わらない?」
「こらこら、いけませんよリア。タイシにだって事情があるのです。そう、娼館に赴き、自分好みの女の子をあーんなことやこーんなことをしたいという欲求があるのです。そっとしておいてあげましょう」
「んもう、そんなの私に言えばいくらでも捌け口になってあげるのに。許しましょう!」
なんかとてつもない誤解を招いた気がするけど、1人で行動することが許された。
「(タイシ、さっきかねちっこい視線を感じるけど、心当たりある?)」
「(あったら、既に問題を解決させてる。んでまあ、どーも殺る気満々って感じだし、二人の事、頼むぞ)」
「(任されても良いけど、大丈夫?相手、何してくるかわからないけど)」
「(まあわかってないけど、なんとかなんだろ。生半可な攻撃じゃ死ねないし)」
うん。未だにキャスの魔法を利用した、念話のようなものは苦手だ。こう、頭が痛む。ずきずきとした痛さが襲ってくる。
だから普段は念話禁止だけど、今回は緊急時だし、念話の出しどころって訳だ。
「んじゃ、行ってくりゃ。流石に晩飯よりまえには帰りたいけど、まあいつ帰るかわからんから。そのつもりで」
今の時間は、大体6時。でも冬だし、もう真っ暗。目の前真っ暗お先真っ暗♪
一体何につけられているのかわかってないけど、まあお相手さん方は俺を殺る気Maxのようですし、それに相応しい場所にやってきた。
そう。路地裏である。それもちょっとやそっとじゃ一目には付かないような場所までやって来た。その方が、俺にとってもお相手さん方にとっても良い事だから。
「(イデア式暗殺術99番、チョウエツ)」
ッ。びっくりした。
俺も戦闘態勢を取ってたから、俺の魔力を、ざっと100m弱まで伸ばしていた。この中に人や物があれば、俺は把握できる。
けど、この釘ほどの長さの針は、俺の体にあたる寸前になって、ようやく認識できた。
まあなんていうか、静かな環境と、触覚を消した事によって上がった聴力プラス聴力強化もしておいたから、うん。ハッキリとは聞こえなかったけど、何かしら言葉を発したのは聞き取れた。おかげで身構える事ができた。
でもびっくりなのは、その声が聞こえたのは、俺の魔力の範囲におらず、最低でも100m以上は離れているって事。にも関わらず、なにか聞こえたと思った瞬間に、もう針は俺のすぐそこに現れた。
いやー、びっくり。
でもまあ、俺の方が色々と上だ。躱す、のは叶わなかったけど、馬鹿魔力のおかげで、肌に突き刺さる事は無かった。
「おいおい、しくじりやがったよあいつ!」
「ふーん。近くに魔力を隠している反応があったけど、へー。お仲間なんだ」
「おいおい、こんなガキを始末しろってのかよ!ふざけやがって。こんなの趣味じゃねえってんだ」
どうも、今出て来た人間は、暗殺には不向きな人柄のようだ。けど残念ながら、騎士道を持っているとかでもない。
ただ単に、戦いに飢えている感じかな?
「まあ良い。頭が始末しろって言ったんだ。おまえ、強いんだろ?俺と勝負しろ」
「んー。俺はその方が話が単純で良いけど、いいの?お仲間さんと一緒じゃなくて」
「あんな野郎ども、足手纏いだ、足手纏い」
「でも、俺とあんたが戦ってる時に、手を出さないとも限らないでしょ」
「あ?んな舐めた真似はさせねえよ。んなことしてみろ、あいつらを俺が殺す」
うん。何一つ、俺が攻撃されないって保障は無かったけど、まあこいつはこいつで無策で来てるようだし、うん。俺としてもさっさと帰りたいところだし、ちゃちゃっと相手をして、お引き取り願おう。
さーて。一体タイシ君は誰に狙われているのやら。ちなみにですが、王都で私兵で暗殺部隊を持っている貴族様は、王族と一部の超超裕福貴族の中でも少数だと言われています。
『馴調魔姫』って作品やってます。多分面白いです。タイシ君もでしゃばってます。是非読んでください。




