+12 お参り
目的の村についた。名前すらないような、小さな集落だ。
「し、失礼しました。あまりの速さに、少々取り乱しました」
「いやー、姫様の素が見れた感じがしてよかったですよ」
「わ、忘れてください」
「忘れさせましょう」
「ちょい待て、キャス。お前の忘れさせるは冗談じゃ済まないんだよ」
しかも珍しく、キャスがやる気になってる。こいつ、ガチでやりかねない。
「やめろよ!俺はこの光景を一生記憶に焼き付けるんだから!」
「フフフ」
「フフフ」
あ、ヤバい。どうも、リアも敵に回したらしい。
そしてこいつも、詳しい能力は知らんけども、記憶を弄る事ができる。つまるところ。こいつらがガチで協力したら、俺の今の記憶が消されるどころか、俺がリアに好意を抱いているという認識を埋め込む事も可能な訳で。
「や、やめろ!俺には心に決めた人が」
「大丈夫大丈夫。どうせその心に決めた人ってのは、貴方の事は死んだと思っているのだから。フフフ」
「……。私はそこには関与しないよ?」
「おやおや、騒がしいと思ったら、旅の人かい?」
「おばあちゃん、久しぶりです」
「おや、来てたのかい?」
「はい。この方達は、私の護衛です」
「冒険者がかい?」
「む。確かに冒険者ですけど、騎士なんかよりもよっぽど私の意見を聞いてくれますし、頼りにもなります」
「いやいや。冒険者が悪い訳じゃないよ。ただ、いつもみたいに、ひとりでに抜け出したわけじゃないんだね」
「ええ、前回、あんな事がありましたから」
出迎え?てくれたのは、前回も姫様に優しくしていたおばあさんだ。
「じゃあ、行ってくるのかい?」
「はい。じゃあ、ナナシ様。護衛、お願いします」
「あ、はい」
見事に俺だけを名指しして、護衛をお願いされた。
「えっと、他の人は」
「出来ればついて来てほしくはないです。あまり、気分のいいものではないですから」
「まあ、人それぞれあるからね。いいわよ。まあそもそも私達は戦力にならないから、邪魔になるだけだろうし」
「えと、祝福があらんことを」
「いってらっしゃーい」
思いの他、彼女らは大人しくここに残る事を了承した。普段の彼女らなら、何がなんでもついてくるような人物なんだけど。まあ良いや。その方が都合が良い気がするし。
リアも言ってた通り、あの3人は戦力としてカウントできない。まあキャスは一応戦えるんだけど。まああの自己中ですからね。戦力カウントはできない。
まあつまるところ。俺一人の方が、姫様を守りやすい。なんたって二人を守る必要がなくなるから。
「では行きましょう」
「姫様、テンション高いですね」
「そうですか?」
いやまあ勘違いかもしれないけど。なんとなく、言葉の節々に喜びと言うか、そういう感じの感情を感じとれた。
「やっぱりついて行こう」
「え、えと、その、なんでです?」
「今の姫様見た?あれは恋する乙女のあれよ。貴方から感じる波動と同じそれを感じたわ」
「で、でも、普通に考えて、まだ出会って1日も経ってない人間を、す、好き、に、なる事はないんじゃないでしょうか?」
「貴方ねぇ。貴方はあの坊やを正確を知ってから好きになったの!違うでしょ!一目惚れでしょ!そういう事よ」
「で、ですが」
「もう、とにかく!彼女を放っておいたら、彼が取られちゃうかもしれないよ?」
「行きましょう」
「人間って面白いわぁ」
_________
うーん。今更だけど、姫様の護衛を冒険者がやるってのはどうなんだ?こう、あるじゃん?冒険者は野蛮人、みたいな評価。
まあ姫様のご要望なんだし、別に良いんだろうけどさ。やっぱり、世間体と言うか?冒険者って言う野蛮人と王族って言う超絶エリートが関わりがあるのは、やっぱりダメなんじゃない?
「ところでタイシ様」
「はい」
「いつ、仮面を取ってくれるのです?」
「……。はい!?」
あの。あの、あの。ボクちゃん、そんな身分をばらすようなへましました?
「えっと。いつから?」
「さあ?ナナシ、という名前を聞いた時から、なんとなくは」
「……」
その段階で気づいたのならもう誤魔化しようがないんじゃないでしょうか?ってか名前で気づかれるなら、ちょっともう俺、やっていけないような気がするんだけど。
「大丈夫ですよ。私以外は気づいていないようですし」
「いやまあ他人が気づいていないのは良いけど、姫様が気づいてるのが怖いんだけど」
「まあ、名前を見た段階では、なんとなく、って言う感じでした。依頼を出したのは、男の人でも、周りの女の人がいるのでしたら、襲われるような事はないかなと思いまして。それに冒険者協会誕生以来最も優れた冒険者と呼ばれるにも関わらず、驕っているなどの話は聞きませんでしたし。大丈夫かなー、と思いました」
「いやいやいや。冒険者になった俺が言うのもなんですけど、冒険者なて碌な奴いないですよ。めっちゃ危ない橋を渡ってるじゃないですか」
なんか、ちょいと話がズレている気がするけど。まあ良いや。もう俺が俺ってバレてるなら、隠す必要はないだろ。
「とにかく。もう二度と冒険者なんか頼らないでくださいよ」
「だめ、ですか?」
姫様は自分の武器を理解しているようだ。
そんな捨てられた犬のような目をしないでほしい。とてもじゃないが断れない。
「頼るのなら、俺だけを頼ってくださいよ。あと、騎士」
「騎士は私のためだと言って、私の意見を聞いてくれないんですよ?そんな人達なんて頼りたくないです」
「我儘言わないでくださいよ」
「ちゃんと、タイシ様に頼らせてもらいますね」
……。やっぱりこの姫様は自分の武器を理解しているだろ。もし理解していないのであれば、素直に凄い。無意識でこんな事できちゃうのは、うん。凄い。
何というか、小さい子犬が懐いている感じだ。うん。もしこれが姫様なんて言う偉い立場にいる人間じゃなかったら、よしよしと頭を撫でてやりたい。とても可愛げがある。
「ぐぬぬ。あやつ、坊やに対してあんなに慣れ慣れしく」
「な、慣れ慣れしくは、ないんじゃないかな」
「くうー!私も、頼ってくれ、って言われたい!」
「まあ、そんな事言わずとも、私達は既に、た、タイシ君に頼ってますけど」
墓の前に来た。
前回同様、なんかあそこだけ別空間みたいな、木の間から、月明りが差し込んでいる。あ、因みに今は夜です。
「少し待っていてください」
「はい」
今の俺は、姫様の強い要望により、仮面を外している。勿論火傷フェイスなんかではなく、タイシフェイスである。
「にしても、こういうのは不謹慎だけど、様になってるなー」
めっちゃ失礼な話よ。亡き母に祈りを捧げている娘を見て、ああ、美しいなぁと。そう思ってしまう。
「ありがとうございました」
「じゃ、帰ろっか」
「はい」
まあ帰ると言っても、正直夜はこの村で過ごす必要はある。なんたって夜は危ないからね。普通に。道が見えないし。
「ところで。君達、それで隠れているつもりなのかな?」
「ギクッ」
「えと、その」
「あの。お二人方。どうしてついて来たのですか?」
「えっと、その」
「あははー。記憶よ消えろ!」
「何してんだてめぇ!」
姫様相手に魔法行使とか、何考えてんだよ。
リアとディアの魔法はなんとなくで記憶を弄る事ができる、というのは決まっているのですが、正式な設定がありません。なんたって彼女達が戦う事が無く、魔法を使う事が無いからです。なにかいい意見があればおにゃしゃす。
『馴調魔姫』始めました。タイシ君の子供が活躍したり、しなかったりな話の予定です。見てください。




