+11 道草は食べたくなる。
王都から姫様が行きたがっている村ってのは、歩いて数日かかる。ってか1週間かかりかねない。
まあ別に悪くはないと思う。俺としては姫様のエスコートって言う仕事は面倒だけど、姫様が楽しんでくれるのなら、まあ別に1週間とかを歩くだけで費やしても別にいいけど。
けどまあやっぱりね。うん。姫様としても、早くお墓に行きたいと思うんだよ。……、いやまあ故人の事を思い出したくないとかがあったら話は別だけど、まあお墓参りするぐらいだし、速いに越したことはないと思うのね。
だからボクもちょっと本気だしました。
「凄いですね。まるで物語に出てくるものみたいです!」
「凄いでしょう?」
「リアがドヤらないでくれる?俺が構想から創造まですべてやったかんね?」
まあありていに言えば。空飛ぶ絨毯だよね。まあそれ以上でもそれ以下でもないよね。
「結構スピード出るから、どこかに掴まってくださいね」
「わ、わかりました」
……。わぁお。
いやまあ確かにね。どこかに掴まれと言った。スピードでるから危ない的なニュアンスでどこかに掴まれと言った。
そしてこれは空飛ぶ絨毯であり、車だったり馬車だったり電車だったりしない。つり革とかがある訳じゃないの。安全に掴まっていられる場所なんてありはしないの。
だからまあ、ね。結果的に安全な場所と言うか、掴まっても安全な場所と言えば、まあ人になるというかなんというか。
そしてどこからその信頼度を勝ち取ったのか謎ではあるものの、どうやら安全地帯認定を受けたらしい。
なんとも可愛らしく、ぎゅっとされました。萌える。
「んなッ!?その手があったか!?」
「はーいリアさんは何回もこれに乗ってますよねー既に乗り心地理解してますよねーってかなんなら一回目からあのスピードに驚くどころか楽しんでたもんねーちょっと危なくなってもスリルがどうのこうのって言ってたもんねーここからはたしてどういう理由で俺にしがみつこうというのかな?」
「ぐにゅ」
「おとなしくしてろ、いいな?」
「やらかした」
いやね。うん。そりゃあリアみたいな超絶グラマラスなぼでえに抱き着かれるとかね。男としてはものすごく嬉しい事ではあるのだけれどもね。なんというかさ。やっぱり人間、恥じらいって大切というか。そうするのが当たり前、みたいな感じでやられても興奮しないというか。
まあつまるところ。なんの恥じらいも持ってないリアに抱き着かれたところで、すべすべぼでえと脂肪の塊を押し付けられてるだけになっちゃうのよ。なんかそう聞くと興奮しないじゃん?一部の特殊性癖持ちの事は考慮しない。
「……、いやディアもさ。うん。嫌とは言わんけど、流石にこっちが恥ずかしいというかね?」
どういう理屈でか、ディアがちょこんと隣に座り、抱き着くとまではいかなくとも、なんか袖をつまむみたいな感じの、とても可愛らしい行動に出た。とても、kwaiiです。
が、なんというか、ディアはリアとは違い一般人と同じように、ってか普通の人よりちょっと過剰なぐらいに恥ずかしがると言うか。こう、異性に触れるだけで滅茶苦茶ビクッって感じの反応を取る感じなのね。だから滅茶苦茶恥ずかしがってるんだけど。
どーも負けん気が強いらしく、リアが攻めればディアも攻めて来ちゃうわけでございまして。恥ずかしさを押し殺して、はできてないけど。恥ずかしい思いのまま行動に移しちゃうのね。
まあ何が言いたいのかと言うと。向こうが異様に恥ずかしがってるせいというかなんというか、まあそのせいでこっちも恥ずかしくなるというか。意味は違うはずだけど、共感性羞恥と言うか。とにかくこっちまで恥ずかしくなってくるのね。
あと、隣に姫様がいるってのも恥ずかしポイントね。わたくしは彼女といちゃつくという経験がないため、大衆がいるような場所でいちゃつくなんてできやしない。恥ずかしいもんね。だから今も同じような感じ。
「ディアは良くて私はダメなんですかー冒険者さん?」
「あーもういいよ好きにしてください」
「やったー!」
……。俺は別に、されるがまま、今起きている現状を受け止めるだけの度量はない。
「おい。確かに好きにしろとは言った。けどそれはあくまでも俺にしがみつく、抱き着くのを許可したのであって、服を脱がす事は許可してない。あとお前ナイフどこに隠してた?」
絶賛姫様にディアと、服を脱がすのには障害がある。
が、リアはそんなのどこ吹く風で、どっかから取り出したナイフを用いて、服を脱がすではなくてはぎとるという手段に出たらしい。
そしてこいつの何が悪いって、無駄に行動力がある事。おかげで服の下の方をちょっと切られた。うん。脇とかから切られなくよかった。
「せめて抱き着くにとどめておけよ。なんだって服を脱がそうってすんだよ。ここに姫様いるの忘れてるの?」
「いんやー?その姫様がいるからしてるんだけどー?」
「ああ、そうですか。じゃあいうけど。俺、別にリアの物って訳じゃないんですけど?」
「そうなんですか?お二人は仲がよさそうなので、てっきり」
「まあ確かにこんな風にやりとりをしてたら他人から見れば仲が良いように見えるのかもしれないけど」
「夫婦に見えちゃう?やっぱり見えちゃうよね?」
こいつは俺の話を遮って何を言っているんだ。
「い、いえ、その」
「ごほんっ。俺はあくまでもこいつがからかってくるから、真正面から否定、いや拒否してるだけだ」
「そ、そうなのですか」
若干ではあるが、ほっとした様子を見逃しはしなかったぼくちゃんであった。
え?いや、え?冒険者ナナシのどの部分にそんな好かれる要素あった?いや俺の自意識過剰ならそれで良いんだけどさ。え?冒険者ナナシ、顔も出てなければ今のところ格好いい姿を披露する機会はありませんでしたよ?
どう頑張っても、こんな短期間で好かれようと思ったら顔だと思うけど、さっきも言った通り、顔は仮面で隠してましてよ?じゃあ声に惚れたのか?でも俺の声なんてあれぞ?無能ボイスぞ?いやー、わからんわ。
「ひゅー。たい、ナナシってばモテモテー」
「いやほんと、有難い事にモテモテだよね。なんかお前を見てたら、俺は別に万人から好かれる訳じゃないってわかって落ち着くよ」
「え?私はナナシのこと好きだけど?」
「あーうんありがとー」
こいつの好きはあれなのよ。幼稚園児とかが「わっくんすきー」レベルのあれなのよ。好きは好きでも、別に好意ってよか信頼的なあれなのよ。うん。この例え下手だった変える。
こいつの好きは、親に対する好きって感じなのよ。友達として好きって感じなのよ。うん。相変わらず例え話が下手でした。
「ナナシ様は好かれているのですね」
「あー、うん。ありがたい事にねー。ディアは本当になんでこんなろくでなしを好きになっちゃったのか不思議なレベルだけどねー」
「そ、そんな事は、ないです」
「いやいやいうじゃん?恋は盲目って。絶対それだって。俺なんて人に好かれる要素ないもん」
自分で言ってて悲しくなるんだけど、実際俺ってそんな人に好かれる要素ないもん。イケメンでもないし?身長もないし?声も微妙だし?性格はまあ、普通だし?その他諸々も普通とかだし。悲しいね。
「まあそういう訳ですね。リアはもう悪質な結婚詐欺師みたいで早く縁を切りたいところですけど」
「んんー、坊やの攻めもアリね」
こいつの脳みそは本当にポジティブで出来てるよな。そこまで来たら清々しいし、普通に羨ましいよ。
「あ、これからとばすんで、会話は無しで。舌噛みますから」
「え、は、はい」
会話は終了。今日中に目的地に着けるよう、可能な限りスピードを出す。
「わ、わあああああああああああああ」
まあ。うん。初めてお乗りになられた姫様には、ちょっと刺激が強すぎたらしい。
なんか会話パートになってました。本来なら村について、村の困ってる事を解決する予定だったのに。だからサブタイも冒険者にしていたのに。なんか予定がすべて変わりました。あれもこれもそれもタイシ君がなろう主人公ムーブをしようとするのが悪い。




