+15 始末される側
魔力が増える奴の原理は、一切わからない。わからないけどまあ、魔力がどんどん増えられたら面倒な事になるから、さっさと始末したい。
普段の試合みたいな感じだったら、じっくりと攻略法を見つけ出そうとするけど、今回はそうはいかない。魔力が増えたら面倒になっていくし、馬鹿魔力になったら、流石に周囲に俺達が戦ってる事がバレかねないし。まあ一番は、1人目を既に戦闘不能にさせたから、辺りにいる人間が逃げるのか襲ってくるのかの二択になった。
だからじっくりと戦ってたら、知らぬ間に後ろに人がいる、って可能性がある。だからさっさと倒したい。
「(イデア式暗殺術92番、テキドク)」
「っと」
またまたどっかから声が聞こえた。
んで針が飛んできた。さっきとは違い、ちゃんと飛んできてくれた。だから躱すのなんて、ちょちょいのちょいだった。
「げぇ。毒付きかよおい」
針が刺さった場所がどういう訳か溶けてる。
そして針は溶けて、針が刺さった地面が1m程度溶けた。まあ針が刺さった場所とその周りだから、溶けてる場所はほとんどないんだけど。
でもまあ、とりあえずえげつない毒が付いた針が飛んできた。
けどまあ、ね?今度は針がちゃんと射線がわかってるから、居場所を突き止める事ができる。
「よぉ。お前さんだな、俺を二回も殺そうとした奴」
「は?」
このは?は、俺の移動速度が異次元で驚いているのか、はたまた別人で心当たりがないのか。まあどっちでも良いや。
「毒ってのはな。こういうのを毒って言うんだよ」
左足の黒くなっている辺りを切る。一瞬で傷口は塞がるものの、俺が自分で傷をつけたから、血は滴った。
じゃあびっくり。じゅうじゅう言いながら、地面を溶かしていくではございませんか。
まあこれだけならさっきと一緒だけど、これはさっきのとは比べ物にならないぐらいに強力でおっかない毒だ。なにせ、この毒は侵食していく。一滴たらせば、たちまち毒は辺り一面に広がっていく。
実験した事あるけど、1分程度で10m弱のクレーターが出来上がった。
「ま、俺は赤の他人を殺すような事はしないからなら。おとなしく拘束されてろ」
「イデア式」
「実力の差を理解できない残念な人は、痛い目に合うんだわ」
こいつの襟を掴み、思いっ切りぶん投げる!時速にしておよそ300ちょっと。……。俺、二刀流できちゃう?MVPとれちゃう?
もちろん投げるのはホーム、じゃなくて、さっき置いてけぼりくらった、魔力が謎に増える奴に向けて。およそ50mぐらい離れてるのかな?
んでもって、せっかくだからギミック搭載済み。
「おお、おお。うまくギミックが作用してくれたようで」
勿論今投げた奴は俺を狙ってた訳だから、若干高所な場所にいて、んで魔力が増える奴に向けて投げたから、地面に叩きつけた形になる。
だから、その地面に叩きつけられた衝撃で作用するギミックを搭載しておいた。
そのギミックはまあ、あれだ。さっきもやった、糸を絡ませ地面に縫い付ける感じのギミック。
つまりまああれよ。拘束させた。
男同士、暗闇、路地裏、何も起きないはずがなく…。
ちなみに俺の投擲が上手くいったのか、その男同士は、胸と胸が当たっており、見事顔と股間が抱き合っている。うふぇ。
「うーん。一件落着かな」
あと、ちゃんと書置きを残しておかないとな。文言はこう。『無知で無礼な我々は、あろうことかナナシ様を殺そうとしてしまいました。反省も後悔もしておりません』
うん。完璧じゃあないか。あいや、ナナシって名前は出さない方が良いか?いやでもナナシって名前があった方が信憑性があるというか、信じてもらいやすいというか。うーん、ま、それはあとで考えよう。
「ふっ。人が最も油断するのは勝利を確信したとき。いくら強い強いともてはやされてても、所詮はルーキーって事か」
突如、音もなく心臓を撃ち抜かれた。
いやはや、その腕前には恐れ入った。
「さて。言葉をそっくりそのまま返させてもらおう」
「なっ」
「やー。自分でわかってんのに、勝利を確信して油断するなんて、まだまだだね」
まあ俺も油断していたのは本当だ。まあ演技ではあったけど。
ってか俺の場合、油断してたところで、どーせ死なないから。バケモノ級の毒も足に飼ってるし、現に今も心臓に刺さったはずの矢は見事に消え失せているし傷口も塞がってるしで、死ぬことはない。
「さて。お前がボスだな。本当なら聞くつもりは無かったんだけど、どーも腑に落ちないからな。色々と聞かせてもらおうか」
「殺せ」
「一体全体、誰の命令で俺を殺すよう言われたのかな?」
「殺せ」
ぶー。男のくっころは流行らないんだぞ。
……。あ。喋れるようにしてたらダメじゃん。舌を噛み千切って死ぬ可能性もあるじゃん。
「はい、あーん」
「さっさと殺せ」
「口を開けろって言ってんのがわかんねのか?」
いや、ご本人様は殺してくれって言ってる訳だし、脅しなんて通用しないか。
仕方ない。俺がちゃんとお世話してやろう。
「ほら、口を開けるんでちゅよー。はーい、良い子でちゅねー」
あり得ないぐらいの力を籠めて顎を握って、口を開けさせる。
ちょっと、ミシッ、って音が聞こえたような気がしたが、まあ気にしない事にする。
んでもって、猿轡を噛ませる。
いやー、くっころが出来て猿轡を噛ませての羞恥プレイが出来て、こいつは超優秀なヒロインなのでは?カマド・タンジェロなのでは?
「ま、これで、あ、魔法か」
こいつの魔法がなにか知らんけど、基本的な五属性の魔法なら、基本は自死することができる。だから魔法を封じる必要がある。
「はー。まだ試作品だけど、こいつを付けてっと」
えー、私が取り出したるは、ありふれたブレスレット。なんのへんてつもない、ただのシルバーのブレスレット。
けどまあ、これはただのブレスレットではない。見た目はただのブレスレットだけど、効果が凄い。
なんとこれは、魔力を吸収してくれるのだ!まあいわゆる、魔吸石搭載ブレスレット。
俺が身に着けたら、せいぜい全体の魔力の4分の1も吸収できるかどうかだけど、一般人相手であれば、魔法を使うどころか、魔力による身体強化すらままならない、はずだ。
だから、これを付ける。
「さてさてさーて。お前の中を見せてもらおうか」
はー。いくらキャスに教わったと言っても、まだ試しも数回しかやってないってのに。やるっきゃないよな。
魔法を作るには、今までみたいなあやふやな想像ではいけない。しっかりとしたイメージ、それが必要になる。
んでもって、魔法を使う条件や、魔法を使った時に得られる効果を明確に言葉で説明できるようにしなければならない。別にあやふやでも魔法は作れるのだが、ちゃんとこれを説明できなければ、そもそも魔法を使ったのかわからず、使った実感があったとしても、思っていた効果と違うってなった時に、何がどう違うのかもわかるようにするために、ちゃんと明確に魔法の設定を組む必要がある。
「さーて。ふんふんなるほどね。お前があいつらの言ってたお頭ね。ふーん。なるほどなるほど。なんであんな残念な奴の下で働いてるんやら」
俺はこの国の王様の印象なんて最低だぞ。姫様の兄だからあまり口に出して悪い事は言わないけど、マジでただただ最低だぞ。
現在の貴族様なんて、基本平民を見下したり、シンプルに手を出したりしてるのに、全くそれらに対しての対策をしないし、国民の声を聞かないし。どーも税金が上がったのに、公共事業が無ければなんか国民の暮らしが豊かになってないし、そういう予定もないらしいし。
まあ俺は政治は興味ないから、あんまりそういうところの話はついていけないんだけど。まあ一つ言えるなら、俺は一回あそこの護衛のお手伝いをして、王様の人柄を知る事にはなったけど、まー最低だった。マジで。
「はい、ありがとさん」
うん。うまく魔法を発動させれた。よかったよかった。
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うーん。いくら王城がまだ修繕中だとはしてもよ?侵入、簡単すぎない?もっと侵入って大変だと思ってたんだけど。いやだって、ねえ?王城って事は、その国で一番警備が固い場所じゃないといけないじゃん?うん。なんで俺程度の人間が王城に簡単に侵入できんだよ。
「ま、ええやん」
さっさと王様に会いに行こう。
「!! 誰だ?」
「振り向くな。声をあげるな。逃げるな。抵抗するな。振り向けば目を潰す。声をあげれば喉を潰す。逃げれば足を潰す。抵抗すれば手足を潰す。わかったか?」
「……」
ブンブンと頭を上下に振ってる。うーん、王様なのになさけないねー。
「俺からは何も言わない。代弁に来ただけだ。ただ、一つ。エモーションはいつも見張っている。もし国民を蔑ろにすれば、わかるな?」
「……!」
またまた首をブンブン振ってる。全く、情けないねー。どれだけ自分が生きて居たいのやら。
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「遅かったわね」
「ん?いや、ちょっと探しものがなかなか見つかんなくて」
「ふーん。ところで、何を落としたの?」
「これ。ブレスレット」
「なになに!プレゼント!?」
「まあリアに渡すものは何一つないんだけど」
「あってもいいじゃない」
「これはそんな立派なもんじゃない。なんたって一般人程度の魔力量なら、1秒と経たずに魔力を吸い尽くされるぞ」
「うふぇ~。遠慮しておくわ」
「だからプレゼントじゃないって言ってんじゃん」
俺だって人でなしじゃない。だからこんなプレゼントに相応しくないモノを渡したりしない。渡すなら、どうせならちゃんとしたものを渡してやりたいし。
「と、ところで。ぶ、無時でしたか?」
「ん?なにかあったっけ?」
そんな心配されるような事はしただろうか。いや、心配させないためにも、見張られてるとかいう話はしなかったんだけど。
「た、タイシさんが行っちゃったあと、い、行った方向から、なんか大きな音が鳴って。ど、どうも、空き家が、半壊してたとか」
……。
やっべ。やっべぇ。ちょっとはっちゃけてて、バレちゃいけないとかいう事を忘れてた。
「だ、大丈夫だよ。うん、丁度俺が探してた場所とは違う場所だったし」
「そ、そうなんだ。よかったです」
「うん、心配してくれてありがと」
うーん、心配させないために黙って出て行ったけど、ちょいと事情を忘れて、結果的に心配させてしまったようだ。うん、反省します。
「ま、今日は一日しっかりと休んで、明日に備えようか」
後日、とある商人の噂程度で聞いた話だが。王都の王様は急に改心したように、真面目に働くようになったとか、なっていないとか。噂では、心の怪盗団がでたとかなんとか。ジョーカーかな?
適当に相手するだけで、王都最強の暗殺集団を瞬殺したタイシ君でした。
てな訳で。語られなかったため、ここであの魔力が増える仕組みを。対象に触れれば、その対象から魔力を奪う事ができる、と言ったものです。1秒につき、現在の魔力の1割。最大魔力の1割じゃないので、10回1秒間触れば魔力が空になる訳ではないです。どんな事があってもゼロにはなりません。
そしてタイシ君は馬鹿げた量の魔力があったせいで、一瞬しか触らなくても一般人以上の魔力を奪えるし、タイシ君はその程度盗まれたところで気が付きません。なのでタイシ君はこの魔法のタネに気が付けなかったわけです。
まあ、タイシ君はこの+に入ってからチートを更に極めたので、魔力を使って魔力を作る事ができるので、いくら魔力を取られようが関係ないのですが。
そんなこんなで、次回は南の国に行く事になるはずですが、『馴調魔姫』に繋がる感じの話にしてもいいですねー。ここまで読んでる人達に、次の話へと引き入れる為に、そういう話でもいいですねー。でも面白くできる自信がないですし、まー次回をお待ちください。
是非『馴調魔姫』をお願いします。タイシ君の子供が主役のはずが、既にタイシ君改めナナシさんがでしゃばってきてますが。まあギャグ系の予定ですし、問題ないですね。




