第24.5話:美魔女のサバサバト
時計の長針と短針が0に重なるとき、NPCにされたはずの彼らは再び産声を上げる。
「ブヒ!ブヒヒ!」
「ここは一体どこだ!そうか、やはり最強の主人公であるこのカイザー・エンペラーは輪廻の輪を超え、蘇ったのか!」
漆黒の部屋の中、かつて女神とその奴隷に討伐されたはずの二人は、それぞれ違った反応を示す。
そんな騒がしい状況を無視し、漆黒の髪に豊満な身体をもつ妖しげな女性がカメラを構えて話し出す。
「夜更かししている悪い子たち、真夜中の世界にようこそ♪凛凛と響くは鈴の音、大人気・秒でBANされる『美魔女のサバサバト』の主のリリスよ♪」
鈴のような美しい声に、振り向いたカイザーは驚きの声を上げた。
「お、お前は!?俺の第6夫人候補である漆黒の女神ではないか!さすがだ!俺を死の淵から救ってくれたのは、君だったのか!さあ、今すぐ式を挙げようではないか」
嬉しそうに近づこうとするカイザーは、自分が鎖で椅子に縛り付けられていることに気づく。
「なっ!?これはどういうことだ!隣にはガタイのいい男も縛られているし……まさか、そういうプレイか!」
リリスが鬱陶しそうにカイザーに手を向けると、声が出なくなったのか、彼は口をパクパクさせた。
餌を求める金魚のように口を開閉させるカイザーを満足げに一瞥してから、彼女はカメラを自分に向けた。
「まずは、簡単に今日の動画の趣旨の紹介よ♪なんと!ハデスの力により、一部界隈でバズった『エクスカリバー』に敗北した負け犬たちを模擬人格として復活させちゃったわ♪」
ハデスは無言で、頭の上で大きく丸を作った。
「じゃぁ、二人とも、簡単に自己紹介をしてね♪」
まるで、沖に打ち上げられたナポレオンフィッシュのようにバタバタするカイザーと、おろおろしている巨体に痺れを切らしたリリスは……
「ほら、二人とも早く、早く♪あ、余計なことを話したら、模擬人格のまま、永遠の悪夢を味わうことになるからね♪」
あまりの圧に怯えながら、彼らは自己紹介を始めた。
「コンバンハ、『豚足』の世界で女神に捕らえられ、消されたはずのカイザー・エンペラーデス」
「コンバンハぶひ。『豚足』の世界で奴隷に敗れた『七光 流星』ですぶひ」
「あら、二人ともしっかりとあいさつ出来て偉いわね♪それにしても、そちらの元豚ちゃんは名前も初出ね!」
「そうですぶひ。当時は記憶もあいまいで、皆様に迷惑をかけてしまい大変申し訳ありませんでしたぶひ」
椅子に固定されたまま、頭を40秒ほど下げ続ける彼を見て、リリスはハデスに視線を投げた。
ハデスは、フリップに文字を書いてリリスに見せた。
――
模擬人格を形成した時に、あまりにも放送禁止用語しか話さなかったため、綺麗な部分だけをつなぎ合わせました。
――
カイザーは、ヴィーナスに自白させられた時のピー音の連発を思い出し、上には上がいるのだなと、隣のやけに体格が良く眼鏡を掛けた綺麗な七光に目を細めた。
「さぁ、それでは今日はリリスと七光 流星そしてカイザー・エンペラー(笑)の3名で『エクスカリバー』について語り合うわよ♪」
「いや、ちょっと待ってくれ!今俺の名前の後ろに(笑)がついていなかったか!?」
「そんなことないわよ、カイザー(笑)・エンペラー(笑)」
顔を真っ赤にするカイザーの横で、七光が苦笑いをした。
「カイザー殿、落ち着いてくださいぶひ。リリス様のご機嫌を損なえば、我々は地獄をみることになるぶひ。どうか耐えてくださいぶひ。」
「お前は、元の名前がかっこいいからそんなことを言えるのだ!なんだ!『七光 流星』って!芸名か!セブンライト メテオと呼んでもいいかな!?」
「……カイザー殿。人の名前で遊ぶのは、どうかとおもいますぶひ。親が悩んでつけてくれた名前なのだから、大切にするべきだと思うぶひ」
「え……いやだ、この人。なんか綺麗すぎない?」
「久々の登場だからって、少しうるさいわよ。皇帝・皇帝、本名『凡田 太郎』君♪」
「よし!早く『エクスカリバー』について語り合おうではないか!あと、黒魔女よ!今変なルビをふったな!違うから!5人の嫁がいたからね!」
「どうどう、カイザー殿。やはりあなたもこちら側でしたかぶひ」
「視聴者の皆様も、出番の少ない負け犬の遠吠えには飽きたころよね? それじゃあ、いよいよ本題よ♪」
カイザーはようやく容赦ないイジリから解放されることを察し、今日一のテンションで喜んだ。
「イエ――――イ!待ってました!」
「ふむ、拙者を破った『エクスカリバー』について興味は尽きないぶひ」
ここでハデスがフリップを出した。
――
彼らが敗北した記憶及び『神罰』の記憶はインプット済みです。また、発狂しないように調整もしております。
――
「さすが、ハデス!仕事が早いわ♪では、二人とも、何か話題を出してちょうだい♪」
七光はすかさず手を挙げた。
「では、拙者から質問ぶひ!彼は【女神の奴隷:社内兼務】を使用することで2つのスキルを発動していましたが、【女神の奴隷:意思疎通】を発動する前に、【女神の奴隷:ヒューマンエラー】と【女神の奴隷:36協定】を使用していましたぶひ!これは、実質3つのスキルを使用していたのではないでしょうかぶひ?」
カイザーは【女神の奴隷:36協定】という名称を聞き、腹を抑えた。
「うぅ……古傷が疼く。だが、確かに!黒魔女よ!これはおかしいのではないか!チートを超えて設定を無視しているのではないか!?ぜひあいつにも【最後の神審】を!」
「あら、あなたたちは【女神の奴隷:社内兼務】を誤解しているわ♪簡単に言うと、【意思疎通】や【36協定】は放置ゲームみたいなイメージよ。そして、【ヒューマンエラー】や【エンタークラッシュ】は、操作ゲームといったところかしら♪」
首をかしげるカイザー。
納得したように頷く七光。
「そういうことぶひか!放置ゲームは、一度開けば操作が不要ですが、パズルゲームは普通一度に一つのゲームしか操作できないぶひ。しかし、【社内兼務】を使用することでリソースを増やし、一度に二つのゲームを操作できるようになるということぶひね!」
七光の想像以上の理解力に目を剥くカイザー。
「そういうことね!さすが綺麗な七光♪名前だけピカピカなカイザーとは、違うわね♪」
――カイザーは今更、自称ネームに後悔した。
リリスは、心を読んだかのように妖しい笑みを浮かべた。
「まぁ、あなたの名前は、自称というより自傷ってとこかしらね♪」
「なぜ俺の心の声が分かった!?……まぁいい!それより、次は俺からの――!」
「あら、もうこんな時間♪じゃあ視聴者の皆さん、またいつかの真夜中に会いましょう♪」
「え……ちょっ、おれはまだ!?」
「ここまでまとまらない話にお付き合いいただき、ありがとうございましたぶひ。これまで散々皆様に迷惑をかけてしまった拙者ではありますが、このような謝罪の場を設けてくださったリリス様とハデス様には感謝してもしきれませんぶひ」
「それじゃあ、またね~♪」
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