第23話:他意は、ないのです
【衝撃の展開!!】『豚足』に新たな転生者出現!ついに魔王四天王の一人と決着!
セツナは、ユキの心配をよそに、再生を始める。
画面に映るのは、白い肌に金髪を靡かせた少女が、見覚えのない豚を鞭の先に縛り付けて、魔王四天王に叩き込む姿であった。
言葉を失うユキ。きっと、あの金髪の少女が転生者なのだと、思うことで、何とか理性を保つ。
そんな彼に、ヴィーナスとトトの解説が虚しく響く。
――
「トト様!どうして、白豚だった子が人の姿に戻っているのでしょうか?」
「ふむ。…おそらく前回『エクスカリバー』が、『神器』を彼らに還元していたのが原因ですね」
「えぇっと、それは、どういうことですか?確か『神器』のベースになったのは、『巨大化』と『拡大解釈』でしたよね?」
「そう、まさにそこなんですよ。そもそも『拡大解釈』は隠しスキルのはずだったんです。しかし、討伐されたイノシシは『赤い飴』を用いて、『拡大解釈』を完全に暴走させたため、スキルとして表に出てしまったのです」
「なるほど!その影響でそれぞれのスキルをベースとした『神器』が生まれたのですね!」
「ええ。そして、その力を取り込んだ豚達は、一定時間主人公のように、『拡大解釈』と『巨大化』を発動出来るようになったんです」
「トト様、それでも謎が残ります!大勢の豚達にスキルは、分配されたんですよね、つまり、一人一人のスキルは弱いのでは?」
「それは、おそらく皆のステータスが関係しています」
「ステータスですか?ちょっと見てみましょう!おっと、残念!ステータスの一部は、『来訪者のスキル』名であり、配信は出来ないので、伏字で紹介しますね」
豚達のステータス:『〇〇の信者』
「う〜ん、これじゃあ少しつまらないから、こんな感じかな!」
豚達のステータス:『エクスカリバーの信者』
ユキの表情は、完全にハニワと瓜二つになっていた。
「トト様!これは一体どういうことでしょうか!?」
「このステータスは、『神器』の還元を受けた、全ての豚についています。つまり、全員が同じ気持ちを持つ事で、『信じる対象』の姿が巨大化し、『拡大解釈』が本来の効力を発揮したということですね」
「そんなことあるんですね!おっと、後ろに半裸で顔だけイノシシの2人組も敵を倒しています!」
「彼らがもっとも『エクスカリバー』と近い距離にいた豚達ですね。見てください、唯一完全な人の姿を取っている彼女の服を」
――その服は、ユキが残していった、女神にシバかれる男がプリントされたシャツだった…
ユキは、その服の柄に見覚えがあることに、セツナより先に気づいていた。そして、恐る恐る隣を見ると……
ニヤニヤと笑うセツナがいた。
ユキは動画を停止した。
「……違うんです。少しでも彼らの希望になればと、託してきたんです」
「あんたが変なこと広めるから、白豚ちゃんがとんでもないことになったじゃない」
「誤解かもしれないので、続きを!早く続きを見ましょう!」
――ユキは思考を放棄した。
停止した動画を、再生する。
「さ〜て、視聴の方に問題です!転生者はどこにいるでしょうか?」
「ヒントは、既に皆も見た動画の中にいるぞ」
「は〜い!シンキングタイム終了!では、トト様、正解をどうぞ」
「ふむ、正解は鞭の先にいる豚ですね」
「皆は、見つけられたかな〜?でも、転生者はどうして、あれで平気なんでしょう?」
「それは、彼のチートスキルが関係しています。本人がダメージを受けていないことから、チートスキルは、『硬質化』で確定ですね」
「なるほど!『硬質化』は分かりましたが、なぜ武器として使われているのかは、謎ですね」
「人にはそれぞれ、趣味がありますからね。転生者も喜んでいるから、いいじゃないですか」
「転生者は、変な人が多くて面白いですね〜!それでは、戦闘シーンをダイジェストで見ていきましょう!」
――戦闘の冒頭――
四天王が待つ部屋の扉の前。
シュリと親子分豚は、スキルを発動し、一時的に人の姿に戻る。
「いよいよ、四天王との戦いが始まりますね。皆さん、準備はよろしいですか?」
親子分豚も顔だけイノシシの半裸の姿となり、彼女の問いに答える。
「もちろんだぜ!シュリ様!ようやく四天王の一角とご対面か!」
「ついにでやんすね!『エクスカリバー』の教えを守れば、きっと勝てるでやんす」
気勢を上げる二匹の後ろで、転生者の豚だけは体を縮こまらせ、震える声を絞り出していた。
「うぅ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ……やっぱり逃げちゃおう!」
走り去ろうとする豚を、シュリは握りしめた鞭で叩いた。
「どこに行こうとしてるんですか、醜い豚さん」
ユキの知る感情豊かなシュリからは想像ができないほど、冷たい声だった。
シュリから絶対零度の視線を受け、豚は……恍惚の表情を浮かべて土下座をする。
「あぁ……もっと…もっと僕をいたぶってください。早く武器として、道具のようにつかってください!あぁ……こんな新しい世界を教えてくれた『エクスカリバー教』は最高だぁぁ!!!」
【硬質化:モーニングスターヘッド】発動
――転生者は、謎の『エクスカリバー教』に毒されていた。
――
「トト様!なぜ、『硬質化』で身体まで変化してるのでしょうか」
「これは、とても面白い現象です。彼の『拡大解釈』と豚達の『拡大解釈』が共鳴を起こしているのです。『エクスカリバーの信者』という強い繋がりが、奇跡を引き起こしているのです」
「はぁ〜なるほど、つまり何でもありということですね!では、続きをご覧ください!」
――
シュリは、豚を鞭に縛り付けて、祈りの言葉を口にした。
まるで聖職者が唱える祈祷のような、迷いのないとても温かな声で。
「どうか見ていてください、『エクスカリバー』。あなたの教えと、あなたの優しさが、私たちの支えとなっているのです。いつか平和になったこの世界に再び来ていただけるように、私たちは、全力で魔王を駆逐します」
そして、扉を開ける。
「ふふふ、よく来たぞ!勇者たちよ。最高のゲームを……ちょ、待って、いた、痛い!」
シュリは、問答無用でモーニングスターを四天王の顔面に叩きつけた。
怯んだ四天王に、2人の半裸イノシシが『部分的に巨大化』させた腕で殴りにかかる。
「『エクスカリバー』の教え通り、先手必勝だぜ!!」
「猪突豨勇!猪突豨勇でやんす!」
四天王は、荒い息を吐きながら何とか態勢を整え、震える手で結界を張る。
「ちょっと待て、お前たち!せっかくここまで来たんだから、少しは話そ……」
「ガン!ガン!」
シュリは無言で、モーニングスターを結界に叩きつける。
「いや!待て!というか、仲間を叩きつけるのは駄目だろ!」
「いぃ〜……いいぞ〜!もっと!もっと俺を使ってくれえええぇ!!!来るぞ来るぞ!新世界は、すぐそこだ~!!!」
「パキッ」
結界にヒビが入る。
四天王は叫んだ。
「もう帰ってくれ!!!」
――
セツナは、ポップコーンの器を差し出しかけて、ユキの様子を見てそっと引っ込めた。
彼はうずくまり、壊れたかのように呟いていた。
「僕は悪くない、僕は悪くない」
彼女は、優しくユキの肩をたたき、
「最高ね!」
とサムズアップをした。




