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戦国魔法少女〜丹羽長秀と人形少女〜  作者: ザザミス


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第17話 蝦夷の女王

 蝦夷《えぞ》。


 後の世で北海道と呼ばれる大地。

 本州の人々から見れば辺境であり、未知の土地でもあった。


 そこには和人とは異なる文化を持つ人々が暮らしている。

 後にアイヌと呼ばれる民である。


 彼らは森と共に生き、川を渡り、獣を狩りながら暮らしていた。


 だが今。

 その蝦夷が。かつてない異変に襲われていた。



 深い森。


 雪解けを迎えたばかりの山野を、一団の男たちが必死に駆けていた。


「走れぇ!!」


 背後から轟音が響く。

 振り返った男の顔が絶望に染まった。


 熊。

 巨大な熊だった。


 だが普通の熊ではない。

 その口から灼熱の炎が噴き出した。

 炎は木々を飲み込みながら男たちへ迫る。


「ひっ――」


 悲鳴を上げる暇も無かった。

 炎が男を包み込む。


 周囲の仲間たちは更に速度を上げて逃げた。


 だが。

 今度は横の森から何かが飛び出した。


 狼だった。

 黒い毛並みを持つ狼。


 しかしその速度は異常だった。

 矢より速い。

 風のように駆け抜ける。


 男の一人が首を掻き切られ、そのまま地面へ転がった。


「何なんだよこいつら!」


 叫ぶ声。

 返事は無い。

 あるのは獣の唸り声だけだった。


 空では巨大な鷹が旋回している。

 その翼からは雷光が散っていた。


 地上では狐が青白い炎を操りながら逃げ場を塞いでいる。


 人間たちは狩られていた。

 圧倒的な力で。

 獣たちによって。



 場面は変わる。


 かつて集落だった場所。

 焼け落ちた家屋。


 転がる死体。

 乾き始めた血。


 その中央で。

 一人の少女が踊っていた。


 金髪。

 年の頃は十歳ほど。


 子供向けの白いワンピース。

 しかしその上から羽織っている着物は真っ赤だった。


 村人から奪ったものだろう。

 血で染まっている。


 少女は気にした様子もない。


 くるくると回る。

 楽しそうに。

 嬉しそうに。


 その周囲には無数の獣がいた。


 熊。

 狼。

 狐。

 鹿。

 猿。

 鳥。


 ありとあらゆる動物たちが少女を見つめている。

 まるで王を見守る臣下のように。


 少女は踊りを止めた。

 そして満面の笑みを浮かべる。


「さあみんな。」


 両手を広げる。


「アリス。」


 動物たちが耳を動かした。


「私の名前はアリスよ。」


 少女は自分を指差した。


「ほら、せーの?」


 静寂。

 やがて。

 熊が口を開く。


「ア……」


 狼が続く。


「あり……」


 狐が首を傾げながら。


「リス……」


 掠れた声。


 まだ言葉とも呼べない。

 それでも。

 アリスは飛び跳ねた。


「そう!!」


 満面の笑み。


「みんなすごい!」


 熊の首に抱きつく。

 狼を撫でる。

 狐の頬をつつく。


「この調子だよ!」


 嬉しそうに笑う。


「すぐにみんな賢くなるからね!」


 獣たちが少女を見つめる。


「人間なんてすぐに追い越しちゃうんだから!」


 アリスは空を見上げた。

 そして少しだけ唇を尖らせる。


「前のとこでは失敗しちゃったけど。」


 残念そうな顔。

 だがすぐに笑顔へ戻る。


「ここの人間は弱そうだし。出来ちゃうかな?」


 両手を広げる。


 獣たちが唸る。

 アリスは高らかに宣言した。


「人類絶滅!」


 熊が吠えた。

 狼が遠吠えを上げる。

 鳥たちが一斉に飛び立つ。


 アリスは満足そうに頷いた。


「さぁみんな張り切って行こうね!」


 くるりと回る。

 血染めの着物が翻った。


「目指せ、世界征服!」


 獣たちが応えるように咆哮する。


「目指せ!人類絶滅!」


 アリスが両手を突き上げる。

 その瞬間。

 森全体が震えた。


 熊の咆哮。

 狼の遠吠え。

 鳥たちの鳴き声。


 数え切れない獣たちの雄叫び。


 蝦夷の大地に、新たな王の誕生を告げるように。


 その中心で。

 アリスは無邪気に笑っていた。

 遊び場を見つけた子供のように。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 敵を匿い続ける比叡山。これ以上の交渉は無意味と判断した信長は、ついに軍を動かす決意を固める。だが、その先に待つのは歴史に残る大虐殺。罪なき者を巻き込まず、敵だけを止める方法は本当に存在するのか。未来から来た少女・桐原天音は、その問いを一人の魔法少女へ託す。そして沢渡ククリは、あまりにも簡単そうに答えた。「私なら出来る。」


 次回「お仕事ですよククリさん」

 戦国の常識、人形師が壊します。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

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