最終話 新たな旅立ち
食事が進む中、一番若い僧侶がためらいがちに質問した。
「師匠、どうしてあの剣がただの手入れ不足だとわかったんですか?本当に悪霊が憑いていた可能性もあったはずです」
カルロスはシチューを一口味わい、満足そうにほおばりながら答えた。
「昔、勇者パーティで戦士をしていた時にな、毎日剣の手入れをしていた。剣というものは、ちゃんと世話をしてやればやるほど、応えてくれるんだ」
彼は木のスプーンを置き、真剣な表情で続けた。
「幽霊でも悪霊でも、本当に人を苦しめたいだけのものは少ない。たいていは何か不満があるか、誤解されているかだ。この剣も同じさ。長い間、ちゃんと愛されていなかった。だから寂しさと不満で、夜な夜な叫んでいたんだ」
その瞬間、テーブルの上に置かれていた剣が微かに震え、かすかな声で呟いた。
「……ありがとう……」
一瞬の沈黙の後、広間には爆笑が湧き起こった。
僧侶たちは笑い転げ、剣士は驚きと感動で目を潤ませた。
「ほら見ろ!」
カルロスは腹を抱えて笑いながら言った。
「感謝の言葉まで言えるんだ!これで立派な剣になったってもんだ!」
彼はシチューのおかわりを要求し、満面の笑みを浮かべて続けた。
「問題解決の秘訣は、複雑に考えすぎないことだ。まずは基本的なことから確認する。空腹なら食事を、喉が渇けば水を、剣がうるさければ手入れをしてやる。それで大抵のことは解決する」
その夜、一行は廃城でゆっくりと休むことができた。
剣士は久しぶりに深い眠りにつき、いびきをかいて寝息を立てていた。
剣は彼の枕元で静かに輝き、もはや何の文句も言わなかった。
翌朝、荒くれ者僧侶一派は旅立つ準備を始めた。
カルロスは朝日を浴びながら伸びをし、深呼吸した。
「さて、次はどんな奴に会えるかな」
彼らが廃城を後にした時、剣士は門まで見送りに来て、何度も頭を下げた。
「本当にありがとうございました。これからは毎日、剣の手入れを欠かしません」
カルロスはにやりと笑い、手を振り返した。
「そうこなくちゃな!また困ったことがあったら、いつでも頼ってこい!」
一行が丘の向こうに消えていくのを見送りながら、剣士は胸に抱えた剣に語りかけた。
「これからはちゃんと世話するからな」
剣は微かに震え、温かな輝きを放った。
それはもう、苦しみの光ではなく、満足と安らぎの光だった。
彼の旅はまだ始まったばかりだった。
荒くれ者僧侶の伝説は、これからも続いていく。




