第18話 幽霊劇団の特別公演
その夜、カルロスの「指導」の下、幽霊劇団の特別公演が開かれた。
ギグルスは、カルロスが書いた(かなり無理やりな)台本に沿って、町の人々の日常の悩みをコミカルに演じた。
市場の魚が空を泳ぐ代わりに、カルロスが大げさに驚いて見せ、噴水のゼリーでは弟子たちが「おいしい!」と叫びながら食べる真似をした。
最初は困惑していた観客たちも、次第に笑い声を上げ始めた。
特に、町長の靴下が踊るシーンでは大爆笑が起こった。
公演の最後、ギグルスは深々とお辞儀をした。
その姿は次第に光り輝き、透明になっていく。
「ありがとう……」
ギグルスの声がかすかに響いた。
「ようやく、ちゃんと笑いを取れた気がする」
幽霊は晴れやかな笑顔で、光の粒子となって消えていった。
町は元の平穏を取り戻した。
いや、以前よりも活気づいていた。
町長は約束の「たっぷりの食事」を振る舞い、カルロスたちはひさしぶりのごちそうに舌鼓を打った。
「師匠」
弟子の一人が尋ねた。
「あの幽霊、結局泣かせませんでしたね?」
カルロスは満腹でごろりと横になり、満足そうに笑った。
「ああ、でもな。最後にあいつ、嬉し泣きしてただろ?」
弟子たちは顔を見合わせ、またため息をついた。
しかし、その目には、少しだけ尊敬の色が宿っていた。
翌朝、カルロスたちは再び旅立った。
町の人々に感謝され、見送られながら。
地平線の向こうには、また新たな町の灯りが見え始めていた。
そして、おそらくそこにも、どこか変わった形で助けを必要とする誰かが待っているのだ。
カルロスは背中の大剣の柄を軽く叩き、口元に笑みを浮かべた。
愉快な幽霊も、泣き虫の悪霊も、困っている者がいれば、どこへだって行く。
荒くれ者僧侶カルロスの伝説は、今日も、少しだけ優しい笑いを加えられながら、書き足されていくのだった。




