第17話 愉快な幽霊を退治
「師匠、次の村はどこへ行くんですか?」
弟子の一人が尋ねた。
カルロスは荒野の道を歩きながら、地平線を見つめた。
「さあな。でも、どこへ行っても、助けを必要とする者がいる。ならば、俺たちの旅に終わりはない」
風が吹き、砂塵が舞い上がる。
その向こうに、新たな町の灯りがかすかに見え始めていた。
町の入り口には、奇妙な張り紙がしてあった。
『緊急!町を騒がす愉快な幽霊を退治してくれる勇者求む!報酬:町長の感謝と、たっぷりの食事付き!』
カルロスの目が輝いた。
「愉快な幽霊か……」
彼は拳を握りしめた。
「よし、あの幽霊を真剣に泣かせてやる」
弟子たちはため息をついた。
「師匠、幽霊を泣かせるって…」
「心配するな」
カルロスはニヤリと笑った。
「俺のやり方には、いつもハッピーエンドが待ってる」
町の門をくぐりながら、カルロスは弟子たちに言った。
「さて、まずは腹ごしらえだ。幽霊退治はそのあとだ」
「でも師匠、張り紙には『報酬がたっぷりの食事付き』って……」
「空腹では良い仕事はできない!」
カルロスは朗らかに笑った。
「それに、幽霊だってきっとお腹が空いてるに違いない。まずは食事で話し合いだ!」
弟子たちはまたしてもため息をつきながらも、思わず笑みを浮かべていた。
「師匠、幽霊を泣かせるって……普通、『成仏させる』とかじゃないんですか?」
「成仏?」
カルロスは首をかしげた。
「泣いて懺悔した方が、きっとすっきりするだろ。よし、行くぞ!」
一行が町に入ると、そこはいたって平和な様子だった。
ただ、所々で奇妙な光景が繰り広げられている。
市場では魚が空を泳ぎ、広場の噴水からはゼリーが湧き出し、鍛冶屋の親方はひげを編んで三つ編みにしていた。
「どうやら、本当に『愉快な』幽霊の仕業のようだな」カルロスがうなずく。
町長は泣きそうな顔で彼らを迎えた。
「どうかお願いします!この幽霊、悪意はないんですけど……昨日は私の靴下を全部ダンスパーティーに招待しやがって、今朝は教会の鐘が『にゃーご』と鳴るんです!」
カルロスは真剣な面持ちでうなずき、町中をくまなく調べ始めた。
そして、夕暮れ時、町はずれの古い劇場でついに幽霊を発見した。
その幽霊は、半透明の道化師の姿をしていた。
名前は「ギグルス」かつてこの劇場で笑いを取ろうとして失敗し、悲しみのあまり幽霊となったらしい。
「さあ、みんなを笑わせてあげる!」
ギグルスが叫び、カルロスの兜の中からウサギ(これも幽霊)を取り出そうとした。
カルロスは一瞬でその手首(というか、手首らしきもの)を掴んだ。
「お前のショーは終わりだ」
「え?でも、まだトリックが……」
「聞け」
カルロスは深くため息をついた。
「お前は笑わせようとしてる。でもな、この町の連中、お前の冗談にうんざりしてるんだ」
ギグルスはしょんぼりした。
「……そうですか?」
「ああ。でもな、ギグルス」
カルロスは、意外にも優しい口調で続けた。
「お前が本当にやりたいのは、人を笑顔にすることだろ?だったら、もっとマシな方法がある」
カルロスは弟子たちに指示を出した。
彼らは劇場を掃除し、壊れた椅子を直し、ギグルスが生前使っていたという大道具を引っ張り出した。




