サンタ
ヤバイよヤバイよぉ
…なんて芸人さんが言ってるけど
ホントにヤバイよぉ
「うぅ…何回見直しても変わらない」
朝起きて、支度して…カレンダーを見れば今日は24日
そう、クリスマスイブ当日なのだ
「何回見ても変わんないんだから、早く学校に行きなさい」
「お母さんまで冷た過ぎぃ」
「帰りのコンタッキー、忘れないでね」
「はぁい…行ってきます」
白い息を吐きながらいつもの通学路を行く
今日、学校は半日で終わりで、しばらく樹くんとも薫くんとも会えなくなる
それはまぁ仕方ない
冬休み…謳歌しようじゃないか
しかし、今日の問題は深刻だ
誰だ、クリぼっちなんて言葉作ったのは
「おはぁ」
「ん…おはよ」
「茜ちゃんおっはぁ」
「…薫くんは、クリぼっちと無縁そうでいいね」
「お?朝から俺の恋バナ聞いちゃう?」
「聞きたくなぁい…このリア充めぇ」
なんとなくグーパンチ
こんなしょうもないことだけど、してた方が現実逃避できていい
思い起こせば…ずっとクリぼっちだったんだよなぁ
いつも家族と一緒に過ごして、それが当たり前で
そりゃ、周りにカップルもいたけど、いいなぁって思ったことはなくて
やっぱり…クリぼっち作った奴のせいだ
「真美ぃ…やっぱいいや」
「ん?なぁに?」
「今日は?って聞きたかったけど、答えは目に見えてるし、答えられたら私が虚しくなるだけに気がついたの」
「そんなぁ…答えてもよかったよ?」
「やめなさい」
終業式のため、体育館に向かう途中の廊下で真美と遭遇
話しかけたものの、以上のとおりで本日2度目のグーパンチ
はぁ〜…校長先生の話なんて全て流してやったぜ
イブの午後
いつもよりは、お客さん少なめかな
まぁ紗希さん含む女子会はいつもどおりで…私と同じ境遇なのかなって思うと親近感湧いて…
寂しさっていう傷の舐め合い…なんて言わせないよ!
「茜ちゃん、今日は家族とかい?」
「はい、いつもコンタッキー買って、家族で過ごします」
「なら早めに上がればいいさ、コンタッキー、混むだろ?」
マスターの言う通りなのです
予約してあるとはいえ、みんな考えることが一緒だから凄いお客さんの数なんだよねぇ
1年で唯一だし、美味しいからって割り切ってるけど
「お疲れ様でしたぁ」
マスターと樹くんに見送られお店の外へ
結局、樹くんに今日の予定聞けなかったなぁ
多分…たぶんだけど…1人で過ごすんだろうな
あ、忙しいご両親は帰ってくるのかなぁ
それとも…それともって考えて、相手がいるの?ってなるんだけど…
「私に誘う勇気があれば…あれば…ってムリィ!」
そりゃ、樹くんと過ごせたら夢ですわ
好きとかうんぬんじゃなくて、カッコいい男の子とクリスマスっていうシチュエーションが、もう神ってるでしょ
ここは…次回のお楽しみ♡…なぁんて自分に言い聞かせるか
そんなこと考えてたらコンタッキーに着いて…
わぉ…やっぱりお客さんいっぱい
嬉しそうにコンタッキー入りのバケツを抱えた男の子…2人で仲良く袋を持つカップル…家族に買ってあげたのだろうサラリーマン
うぅ…麗しい女子高生がサラリーマンと同じ境遇なんて…悲し過ぎるぜ
「買ってきたよぉ」
「ありがとう…どうしたの?なんかやつれてない?」
「現実を見るって、時に残酷だよね」
こんなところで詩人的要素が生まれたぜ
「姉ちゃん今年も独り?」
「うっさい、あんたも変わんないでしょ?」
「明日、デートの予定が入ってますからぁ、残念!」
「古いわ!」
こんな身近にリア充がいたなんて
初登場の弟にしては中々の登場じゃねぇか
「あれ?…私の携帯知らない?」
こたつでぬくぬくして、携帯…って思ったら見当たんなくて…
あんれぇ…喫茶店に置いてきちゃったかなぁ
「ねぇ鳴らしてもらっていい?」
「面倒だなぁ…はい、コールしてるよ」
弟の携帯を受け取って、周りに耳を澄ませても近くでは鳴ってなくて…
「…もしもーし」
「あ、もしもし?」
「おう、やっぱ茜ちゃんのか」
「マスター?じゃあ、やっぱ喫茶店に?」
「置いてあったぞ…取り来るかい?」
「はい、伺いまーす」
よかったぁ…電話出てくれたのが知ってる人で
知らない変な人に拾われて、悪用でもされたら最悪だもんねぇ
「ってなことで、取り行ってくるねぇ」
「先食ってるよ?」
「いいけど、ちゃんとコンタッキー残しといてね」
「骨?」
「肉!」
はぁ…ため息しか出ないなぁ
あっちを見てもこっちを見ても、カップルだらけ
可愛くてつい買っちゃった白いコートも、1人で歩いてると浮いちゃうというか、目立って1人ってことを意識させられて
♪冬が寒くてホントによかった 君の冷えた左手を
僕の右ポケットにお招きするための この上ない程の理由になるから♪
私の好きなバンドの曲が流れてる
左手どころか、両手共に冷え切って、ポケットの中でホッカイロをぎゅっと握りしめてるぜ
「クローズ…早めに閉めたんだね」
札が掲げられ、カーテンも閉まってる
中からは柔らかい光だけ
元々、決まった時間のない喫茶店だし、マスターが豆の仕込みでもしてるのかな
「お邪魔しまぁす…ん!?」
マスターの気が散らないようにそっと店内に入る
いつも見てる店内…のはずなのに…そこは別世界に思えた
カウンターの吊り下げライトが優しく光ってて、それが間接照明として幻想的な感じになっていた
その奥には…
「い、樹くん…どうしたの?」
「ん?…お帰り」
「た、ただいま」
ってそうじゃないだろ!
思わず反応してしまったが
なんだろ…今日ずっと、彼氏とか、カップルとか、そういうこと考えてたせいか、今この状況がもの凄く落ち着かない
だって、樹くんと2人っきりなワケで、幻想的なこの空間で…思いっきりクリスマスムードが充満してるじゃないか
「これ…マスターから」
「あ、ありがと…また練習?」
「ん…飲んでいく?」
「じゃ、じゃあ…お言葉に甘えて」
最初にここに来た時みたいに、カウンターにちょこんと
なんか…いいなぁ
「ちょっとだけ…目瞑ってもらっていいか?」
「えぇ?なんか楽しみなんだけど」
言われた通り目を瞑る
ワクドキだなぁ
「…お待たせしました」
「ん…うわぁ!!」
「メリー、クリスマス」
目の前のカップの中には、可愛いサンタさんが
ラテアート…いつの間にか上達してるんですけどぉ
「明日限定で出す予定で…」
「可愛いくて飲めないよぉ…凄いなぁ」
樹くんって器用だよねぇ
私も…って、まずは珈琲をもっと上手に淹れられるようにならないとねぇ
「樹サンタさんからプレゼント貰っちゃった♡」
「そんな、大したものじゃ…」
「ううん、大したものだよ、ありがと」
「ん…こちらこそ」
あれ?…今のって…
間接照明でよく見えなかったけど…
樹くん…照れてる?




