クリスマス
12月に入り、街並みは一気にクリスマスムード一色
イルミネーションも始まり、男女共にそわそわというか…焦ってるというか…
クリぼっちだけは避けたいと誰もが思っている
そう、ここにも…
「クリスマスって…なんであるのぉ?」
「知らないよぉ、イエスキリストにでも聞けばぁ?」
いつもの女子会
いつものメンバー
いつもの恋バナ…だけど、今日は特に深刻
1人…いや、独り女子にとっては1年で一番憂鬱になる時期なのだ
「クリスマスなんて無くなればいいのになぁ」
「あぁちゃん、それ言い出したら終わりだよ、寂しさ倍増だし」
「紗希はいいよぉ、もう相手いるんだから」
「だっ、誰よ!?」
「えぇ?言っていいのぉ?」
思いっ切りにやぁってして、ゆっくりカウンターの方に顔を向けて
「い、樹さんは違うから!」
「なにが違うの?好きなんでしょ?」
「べ、別に、そんなんじゃ…」
「なぁに…あれから進展ないのぉ?」
「進展って…始まってもいないし、私なんか…」
「応援してるのに…これだもんなぁ」
そんなこと言われたって…
お気に入りの喫茶店の店員さん…ってだけだったのに
で、デートなんてしちゃって、お家にもお邪魔しちゃって
そりゃ、意識してなくはないけど…
「…うん…かっこいいもんなぁ」
カウンターの方を見れば、やっぱりかっこいい男の子の姿があって
でも、私じゃ不釣り合いだよ
言われなきゃ、意識してなかった訳だし、つまりは、そういうことで…
「誰かに取られちゃうぞぉ」
「べ、別に…樹さんがいいなら、それでいいんじゃない?」
そう、大事なのは本人の気持ち
あぁちゃんのお節介…応援は嬉しいけど、私は…
携帯を開けば、ツーショットが写ってて
それだけで…いいかな
意気地なし、負け惜しみ…言われればその通りだけどね
「私は、私のペースで…頑張ろ」
「紗希がいいならそれで…あ〜あ、今年もクリぼっち確定かなぁ」
「私たちがいるよ?」
「…傷の舐め合いになりそうだけどねぇ」
あはは…そうかもねぇ
カラン
来客を伝える音がする
出入り口を見れば、女子から見ても綺麗な女の子
モデルさん…やってても疑わないかも
綺麗な黒髪に、すらっとした美脚
お嬢様学校で知られる制服があまりにも似合ってて
「あぁちゃん、あの子知ってる?」
「知らなぁい…すっごい綺麗だねぇ…いるんだねぇ、あぁいう子」
ホント、世の中不公平だよぉ
あの子は、クリぼっちなんて無縁なんだろうなぁ
「いらっしゃいませ…お一人ですか?」
「はい、1人で…あれ…いっくん?」
「ん…おかえり、栞」
「いっくん!?わぁ〜!ただいまぁ!!」
次の瞬間、私もあぁちゃんも目を疑った
まっすぐ清楚系に見えた女の子が、ものすっごい笑顔で樹さんに抱きついたのだ
喜び全開、周りの目も気にしてませんって感じで
樹さんも、それに答えるように背中をトントンと
「…変わらないな」
「いっくんは雰囲気変わったけど…いい意味でかっこよくなったね」
「日本にはいつ?」
「夏休み終わってから…楽しかったよぉ、いっくんも行けばよかったのに」
「しぃみたいになれれば…な…カウンターでいいか?」
「うん、おっけぇだよぉ」
…どうやら、あの美貌で帰国子女…もう別次元の人ですな
私なんて全く敵いません
スキンシップの強さは海外仕込みでしょうか
「紗希…負けたね」
「うん、ボロ負けだね…非の打ち所がないってあぁいう人のことを言うんだろうねぇ」
「樹くん、ますます謎だなぁ」
美男美女…見てるだけで眩しいです
「ここ、口コミのサイトに出てて、イケメン店員って書いてあったから来てみたんだけど…いっくんだったとはねぇ」
「…知らなかったな…訂正しておいてくれ」
「えぇ?間違ってないよぉ…イケメン店員の樹さん?」
「…冷やかしならお断りなのだが?」
「えぇ?そんなぁ…えっと、じゃあ…お水!」
「………」
「わ、わかったよぉ…じゃぁ、いっくんのオススメで!」
「…うちで一番高いのが」
「やっぱブレンドで!」
なんだろ…この気持ちは…
ものすっごく、仲の良さが伝わってくるじゃないか
あの美女も、キレイ系かと思ったらその笑顔はめちゃめちゃ可愛いし
一体…どういうご関係なのでしょうか…
「…紗希…口開いたままだぞ」
「わわっ…だって…ねぇ?」
「わかる、わかるよぉ…あんな姿を見せられたらねぇ…これぞ本命現る…だもんねぇ」
そりゃ…樹さんだもん
最初から、いたっておかしくないって思ってたんだから
別に、予想どおりで…悲しくなんて…所詮私の一方通行で…
もう…なんなんだよこの気持ち
自分でも理解できないよ…ぐちゃぐちゃだ…
気づけば…独りになってた
多分…ずっと下向いたまんま喫茶店から出てきて…あぁちゃんと別れて…
ベンチに座って、さっきから携帯の画像の削除メッセージが視界にあって…
2人と1匹…うぅ
「…できないよ」
「…風邪引くぞ」
「へっ?」
顔を上げる
同じタイミングで、私の首にはマフラーがかけられて
目の前には、今最も会いたくなくて、会いたい人がそこにいて
「い、樹さん…」
「大丈夫か?…店にいたときから調子悪そうだったけど…」
「う、うん…」
「熱は…なさそうだな」
ちょっと冷やっとして、大きな手が私の額に
でも、今の私には呆然というか、それに反応する熱量を持ってなくて…
されるがまま
「樹さん…」
「ん?…」
「…あったかい…です、凄く」
それは、マフラーだけじゃ決してない
樹さん…あったかいです
私なんかいいのに…私なんか…
トン
「…少しだけ、このままでいいですか」
「ん」
やっぱ…あったかい
直接、温もりが伝わってきて
樹さんを感じることができて
途端、紐が緩んで、堪えてたんだけど…
うぅ…
雫の跡が冷たいです
「あの、えっと…ありがとう、ございました」
どれくらいの時間だったかな
それは急にやって来て
ハッとして、今の状況を理解したらものすっごく恥ずかしくなって
でも、ものすっごく名残惜しくもあって
「すいません、なんか…こんな姿見せられて…迷惑、でしたよね」
「いや…そんなことないさ」
ちょっと、まともに見れないんだけど…
やっぱり、そこには優しい目で私を見つめてて
もう…なんなんだよ!
これじゃ、意識するなっていう方が無理で
絶対、ぜぇぇぇったい無理で
まさしく…惚れてまうやろぉぉぉ!
「紗希?」
「ふぇ?…あ、はい!」
「…風邪、引くなよ」
「う、うん…」
「…じゃ」
「うん…また」
背中を見送る
なんだろ
なんて言えばいいのかな
ぼーっと…いや、ぽーっと?
熱が出てる感じに近いかな
「…あっマフラー!」
あったかい…なんて浸ってたら忘れてた
まぁ…いいかな
近くに感じられるし
今日だけは…
「樹さん…ズルイです」
口角が下がりません




