あの日
それは唐突に訪れた
夜、見てたバラエティが終わりニュースが流れ始める
「さぁて…お風呂はぁいろ〜」
パジャマを取ってこようと立ち上がる
ずっと座ってたから、のびぃ〜ってやってた私の耳に入ってきたのは…
「大臣就任後、初めての死刑執行となります、今回死刑が執行されたのは、美里町地内において、当時16歳だった天笠優子さんを殺害した罪で死刑が確定していた安藤照久死刑囚です」
「えっ…」
一瞬にして私の体に緊張が走っていた
この事件は…だって…
「安藤死刑囚は、一貫して強い殺意をもって犯行に及んだことを供述しており、刑務所内においても度重なる問題行動を起こしていたことから、今回、異例の早さでの死刑執行となりました。これにより、現在日本における死刑囚の人数は…」
「樹くん!」
慌てて携帯を手に取り、メール画面を開いたところでハッとする
…送る言葉が見つからない
だって、この状況でなんて声かけてあげればいいの?
ってか、そもそも声かけていいの?
出会ってすぐ、あの事件を知って、樹くんからは気にするなって言われて…
私の頭にポンって手を置いた時の、あの優しい目は今でも鮮明に覚えている
「樹くん…どんな気持ちだろ…」
ニュースが終わり、刑事ものの連ドラがスタートする
樹くんの顔が、ずっと頭から離れなかった
「お、おはよ」
「ん?…早いな」
少しぎこちない挨拶
それもそうか
今私がいるのは、樹くんの家の玄関前
驚いた樹くんの顔がある
結局、メールでは一言も送れなかった
それでも、朝起きてからずっと落ち着かなくて
早く会いたい
けど、会っても私じゃ気の利いた言葉一つも出てこない…そんなのわかってる
でも…会いたい
「今日は寒いねぇ…自分の白い息って今年初かも」
「ん…もうすぐ冬だな」
上手く…言葉繋げてるかな
いつも通り…話せてるかな
隣を見ても、よくわかんなくて…私からすると、いつもの樹くんがいて
「冬って寒いけど、私は好きだなぁ…冬物のコートとか可愛いし、あったかい肉まんとか、イルミネーションとか…」
「…ピザまんがいいな」
「ぶっ」
樹くんの思わぬ発言に笑ってしまった
そこに食いつきますか
でも美味しいよねぇ
「…よかった」
「…ん?」
「ううん…あ、薫くんおっはよぉ」
「ぬぬっ!?俺を出し抜いて仲良く登校とは…ずるいぞ茜ちゃん」
「たまたま早く起きて…って、嫉妬するとこおかしいでしょ!」
ホッとする私
いつものハイテンションな薫くん
見守る樹くん
そう、私たちの日常だ
「ありがとな」
「へっ?」
急に樹くんからそう言われたのは、クラスの前で別れるとこ
「えっと…私?」
「ん…ありがと…嬉しかった…」
「う、うん…」
「じゃ…」
言葉は少ない…いや、少な過ぎる
でも、その優しい目は私に語りかけていて
それは、私の思惑が全て伝わっていたみたいで
「嬉しかった…って、言ってくれた…よね」
小声で、自分に言い聞かせてみた
急速に、不安だった気持ちがあったかくなってきて、広がって…
自分でもわかるくらい…口角上がってます




