祭囃子
「う〜ん…こんな感じでどう?」
「お!お母さん意外と上手だねぇ」
鏡の中には、久しぶりに髪の毛アップにした私
後ろには、やる気まんまんのお母さん
話をしたらすっごいのっかってきたのだ
「茜の浴衣姿なんて、小学校以来かなぁ」
「そんなに経った?」
「経ったでしょ…まぁ可愛くなったんじゃない?」
「おだててもなにも出ないよぉ」
まぁ…ちょっぴり嬉しかったりして
そして、ちょっぴり気分が上がってたりして
「行ってきまぁす」
カランという心地いい下駄の音が響く
コスプレって正直理解できないけど…今日だけはわかる気がする
洋服でこんなにも気分変わるんだね
「そろそろかな…」
一体さっきから何回時計を気にしただろうか
ウキウキしてた気分が、どんどんとドキドキ不安に変わって行く
変な緊張感が私を支配して行く
「変…じゃないよね…」
髪の毛、浴衣も何回確認しただろうか
相変わらずだぞって言い聞かしても、この不安は全然収まらない
今までで1番は確定だね
「ねぇねぇ、もしかして俺のこと待ってたりする?」
「へっ?」
聞いたことない、明らかにチャラい声をかけられる
振り返れば、やっぱりチャラ男
それも3人も
「お!あっくんさすが!後ろ姿だけでビンゴ!」
「俺の獲物なんだから横取り禁止だからな」
「独り占めはズルくない?」
な、なにこいつら?
勝手に話進めて、獲物とか言ってるし
そんなのゲームの中だけでしょ
「えっと、その…」
ナンパなんて初めてだけど、こんな奴らかよぉ
正直不愉快で、でも、それ以上に…怖い
手震えてるし、収まらないし
怖い…助けて…
樹くん…早く
「ねぇ、なんか勘違いしてる?ただのナンパだよ?そんな怯えなくてもいいじゃん」
「ってか今時こんなウブな子いる?超うけるんだけど」
「いやいや君らの格好の方が超うけるんだけどぉ」
「んぁ!?」
聞き慣れた声でハッとする
顔をあげれば薫くん…そして、隣には樹くんがいた
よかった、来てくれた
「茜ちゃんお待たせ!ゴメンね、俺が忘れ物しちゃったせいでちょい遅れたのだ」
「う、うん…」
「うそぉ?こんな奴が男?絶対つまんないっしょ?」
「この子は俺らに用があるんだってぇ」
チャラ男を無視した薫くんの発言に、無視されたチャラ男が反発を始める
なんか…一触即発というか…ぶつかりそうで…
「ん…行こっか」
「う、うん」
そんな中、すすっと樹くんが私の前に歩み寄って来て、エスコートしてくれる
思わず、私も樹くんの袖を軽くつまんでついていく
周りも呆気に取られてるみたいで…
「お、おい!」
「………」
チャラ男の1人が遅れて反応する
樹くんの肩に手をかけ、呼び止めたのだ
でも…樹くんは無反応…というか、顔だけ振り向いて、まっすぐチャラ男の目を見ている
言葉はなにも発しない
「………」
「…っち、行くぞ」
「あ、あっくん待ってよぉ」
なにが起きたんだろう
わからないけど…チャラ男はどこかへ行ってしまった
なんか、少しだけ青ざめているように見えたけど…でも樹くんはいつもと変わんないし…
「あ、ありがと」
「ん…待たせて悪かったな」
「なに食おっかなぁ」
薫くんは食欲全開です
「なんかあっくんらしくないんじゃない?」
「うるせぇな…ってかなんなんだよあいつは…まだ震えが…くそッ」
祭囃子が聞こえてきました




