宇宙人
「ちっ、これしかねぇのかよ、愚図が!」
今思い返せば、俺ってすっげぇ落ちぶれてたよなぁ
それがカッコいいなんて勘違いして
「人が死ぬとこ、見たことあるか?」
強烈な一言
一生忘れられねぇぜ
いつも通り俺の隣を歩く大親友
口数少ねぇし、笑ったとこなんて見たことないし
あいつといてなにが楽しいの?ってよく言われるけど
けど、大親友だ
一生ものの
俺の片想いかもしれんけどな、ははっ
小学校…4年のときだっけな
両親が離婚して…まぁ親父の浮気だけど
母親は少しでも手取りがいいとこっていうんでキャバクラで働いて…源氏名沙羅だってよ
家帰れば金だけ置いてあって…まぁなるべく使わずに自分と母親の分のメシ作ってたけど
その頃は友達もいた
でも、こんな生活じゃ正直遊んでる暇なんてなかった
だからみんな上辺だけの付き合い
本音で話したことなんてない
俺はというと、段々とその生活に嫌気がさしてきて
叱ってくれる大人もいなかったから、徐々にすさんでいって
気づけばいわゆる不良になってた
見事に善悪逆転
盗み、恐喝、たかり…
よく捕まんなかったもんだ
その日も俺は、後輩を呼び出して金をむしり取っていた
俺は基本一匹狼で、誰かとつるむってことは少なかった
どうせ、上辺だけの付き合いになることは目に見えてたしな
正直、金額が多かれ少なかれどうでもよかった
ただ単に、恐喝っていう行為に憧れていただけ
意味もなくとんがって、なにに対しても反発して
なぜなら、それがカッコいいって思ってたから
…馬鹿だろ?
俺もそう思う
「次もよろしくなぁ」
「ぅぅ…」
「んぁ!?聞こえねぇんだよ!!」
「うっ」
メンチ切りながら相手の腹を殴る
殴ったとき、正直俺の手も痛いんだよね
見よう見まねだし
カツっ
そんな俺らがいた路地に、別の足音が響く
邪魔が入ったかと思って見れば、近くの中学校の制服を着た男が立っていた
逆光のせいで、うまく顔は見えない
同い年くらいかな
「なんだてめぇ?」
邪魔が入った怒り、その隙に逃げていった後輩への怒り、こいつも殴って脅して金とってやろうという気持ち
それらを混ぜ合わせてこいつに近づく
それまでなら、相手はビビってみんな後ずさりしていた
でも、こいつは違った
微動だにせず、ずっと俺を見ている
見下す冷たい目
中学生とは思えない眼力があった
「なんか文句あんのか?」
「…」
…変化なし
1分、2分と時間が過ぎる
「人が死ぬとこ、見たことあるか?」
急に、前置きもなく、そいつは言った
冷たい目が、哀れな者を見る目に変わっていた
「んぁ?」
「さっきの相手、なんとか怪我で済んだ。でも、さらに殴り続ければ、腫れて、血が出て、そして、いずれは死ぬ」
「…なにが言いたい?」
「人はいずれ死ぬ…そんなことわかりきってる。でも、その死を早める権利は誰にもない…どんなに偉くても、神様でも、そんな権利持ってない」
「………」
「何様だ、貴様」
正直、この時の俺はぶるってた
今までに感じたことのない威圧感
恐怖で支配されていく
こいつこそなに者なんだ
ホントに中学生か?
そいつは、俺に背中を向け去っていく
言い返す、追っかけて殴る
そういった感情すら出てこない
とにかく、動けないでいた
得体の知れない宇宙人に出くわした人間のように
町の喧騒はいつもと変わらない
俺は、生まれ変わった




