二章・三話
私達は双子。
東の国のお母さんと、西の国のお父さんとの間に生まれた。
お父さんが死んじゃって、お母さんとこの北の国で暮らしてから、ずっと平和で、幸せな日々だった。
私達は知らなかった。
日常は決して永遠のものではないことを。
二度と巡り会うことのない、幸福の連続にすぎなかったんだと。
それは突然だった。
「今日もあの夢……あの人……また私を呼んでた…」
お母さんの様な服装……お母さんの様な優しい声……。
怖いような嬉しいような気持ちになりながら、私はまた目を瞑った。
ベッドでいつもの様に蹲っていた私に、クラースヌイが息を切らせて飛び付いてきた。
「ビエールイ……大変……!!街の人達がみんな……私達を殺す気なんだよ……!!」
「えっ……?」
「とにかく……とにかく逃げないと!!」
クラースナヤに連れられるままに家を飛び出し、山道を街とは反対に駆け抜けて行く。
「クラースヌイ!どうしたの!?なんで……!?」
クラースヌイは何も言わなかった。ただただ私の手を引いて、山をひたすらに下っていく。
しかし、しばらく走った所で、突然クラースヌイが漆黒の翼を広げ、身を翻した。真っ直ぐ私達の家の方角――西――に飛んでいく。
「どうしたの!?クラースヌイ!!どこいっちゃうの!?」
いくら叫んでも、クラースヌイは反応を示さなかった。私はどうすればいいのか分からず、その場に座り込んでしまった。
追い駆けるべきだったのだろうか。クラースヌイは私にどうして欲しかったのだろうか。何も分からないまま、私は必死に懇願した。何者かも分からぬ、何かに。
「教えてよ……どうすればいいの……?」
―――――――――――――おいで。―――――――――――――
頭の中に、直接囁く様な声音で響く、その声。
「夢……の……?」
―――――――――――――そうだよ。―――――――――――――
「教えて……!私…みんな……みんな……」
―――――――――――――こっちだよ。―――――――――――――――
声に誘われるまま、素足で山道を踏み締めていった。
つづく




