一章・二話
無事家路につくことができた俺は、まっすぐ自宅に帰る。
中1から一人暮らしをしているし、親からの仕送りもあるから生活には何ら困っていない。むしろ親がいた方が色々と面倒だとさえ思う。物心ついた時には独りぼっちだったし、一匹狼なのは天性だろう。
自宅に到着し室内に入ると、見覚えのある人影が見えた。
「おかえり兄貴!飯作っといたぞ!」
「久しぶりだな。どうしたんだよ」
居たのは俺の弟…とは言っても血縁ではなく、正確には俺を兄と慕う年下の幼馴染みと言ったところだ。
「いやぁ、最近まともに会話できる連中とつるんでなくって。人間と接するのは正直苦手だし、兄貴に会いたいなーと!」
「馬鹿なのかお前は。いい加減人間に慣れて人間の真似して平穏に暮らせよ」
「でも兄貴はまだマシだけど、俺なんかすぐ力が漏れて怖がられちゃうっていうか…窮屈だよ、環境が」
そう。簡単にいうと、俺達は化物のようなものなのだ。
俺達は数百年前から人間を見てきた。俺の場合は半分人間な分見た目が人間と酷似している。
「なら、お前も明日から俺の通ってる学校に来い」
「ええっ!?!?無理でしょ!戸籍だってないのに…」
「それぐらい俺にはどうにだって出来る。出来なかったら俺も通えてないだろうが」
「あっ…確かに…でも怖いなぁ…」
「お前が怖がってどうすんだよ。別に普通にその場にいてやることやればいいだけだ」
「でも人間いっぱいいるんだよな…?」
「だからなんだ。当たり前だろ」
「…俺って名前あるの?」
「…あぁ……なんて名前がいい?」
「兄貴と似てる名前で!」
「…分かった。物の準備はしてやるからお前は心の準備だけしてろ」
そう言って俺は風呂場へ向かった。
風呂から上がると、奴は夕飯の準備をし終えてテレビを観ていた。奴は人間の好むスポーツというのが最近のお気に入りらしく、よくテレビでその試合を観戦しているのだ。
「兄貴、ご飯できてるぞ!飲み物何がいい?」
「緑茶。てか本当スポーツ好きだな。これは何だ?」
「バレーボールだよ。四角の中でボール落としちゃいけないスポーツらいぞ。んっ、出してもいけないんだっけ…?」
「お前やっぱり学校行った方がいい。弊害が酷い。」
「??そうなのか??兄貴がそう言うなら行く!」
「そうか。ならよかった」
そう言い寝室に向かおうとすると、奴が少々キツイ口調で訴えるように話しかけてきた。
「兄貴!っあのさ…もし、学校にいったら…」
―――まただ。頭が、痛い。
「…人間も、妖も、獣も草木も、みんな幸せにのびのび生きれるように出来るかな?」
「……………それは分からない」
「そっか……「でも」
「何もせず、突飛な意味も無く生きてそんなことを嘯くより…そのお前の〝夢〟とやらに近付くんじゃ無いのか?」
「…そうだな…。良く分からない言葉も多いけどさ、兄貴の言ってること、伝わった」
「そうか。…少し外に出てくる。お前は寝ていろ」
「分かった。早く戻ってこいよなー」
奴が寝室に行ったのを見計らい、俺は外に出た。
外は点々とある街灯と月の明かりだけで、人間なら歩く事すら恐怖を感じるだろう。此処は大して都会じゃないから人が少ない。住むことを決めた理由もそれだ。
そんな街中を歩きながら、また昨日と同じ事を考える。
「〝夢〟か」
夢とは何かと問われれば答えられる。だが、「夢は何か」と問われても、俺には分からない。
夢が無いと云えば単純で改善の為ようがありそうなものだが、俺は〝夢〟が分からないのだ。だから俺は夢を見る事が出来ない。
さっきも奴が〝夢〟について熱心だったのも、俺には理解出来ないのだ。
「そうだ、奴の名に夢を入れるか…夢…斗…」
「よく名前間違われるけれど、私は“むー”だよー」
突如頭上から降ってきた声は少女の声だった。
つづく




