三章・一話
放課後、生徒会室で落ち合った俺と間野先輩。どうやら間野先輩は俺が半妖であることを知っていて、更に夢兎の存在までも解っていた。
ついて来いと言われ、ビルの屋上やら電柱の上やらを飛び回っているのだが、こんな妖怪らしいことを、俺はしたことがなく、途中何度か落ちそうになったことは言うまでもない。
「先輩、何処行くんですか?」
「黙ってついてこい。別にお前を痛め付ける訳じゃない。寧ろお前を救ってやろうと言ってるんだ」
全く訳が解らない。確かに俺は妖怪の界隈にはあまり干渉しなかったし、情報に関してはそこら辺の人間といい勝負なのかもしれない。もしかしたらこれは、妖怪の事について知る、いい機会かもしれない。
「降りるぞ。目的地はすぐそこの森林の中だ」
久々の地面。降り立ったのは学校から数㎞離れた山の麓だ。
「お前は水妖性だろう?川を上った方が早いな」
川を?上る?確かに俺は水の妖だが、そんな事はしようとも思わない。やろうと思えば出来なくはないが、妖の本分である“自然に違う”行為は、半分が人間の俺にとっては少なからず無理がある。
「上るのは構わないが、俺は先輩より遅いと思いますよ」
弱音の様な本音を口にすると、間野先輩は鼻で笑った。
「お前は妖の事どころか、自分の事ですら、ちゃんと解っていやしない。モノは試しだ。黙って先輩について来い」
仕方無いと思い、黙ってついて行くと、そこそこの横幅のある川に着いた。流れはそこまで速くは無さそうだが、並の人間が入ったら簡単に流されて溺死してしまうだろう。周囲に巨大な岩があり、例え俺でもぶつかってしまったら大怪我をしてしまいそうだ。
「ふぅ~。冷たいが入れなくは無いな。ほら、早く来い。行くぞ」
間野先輩はとっくに川で立泳ぎしていた。溜め息を吐きつつ、仕方無しに俺も川に入る。
やはり、水中は落ち着く。ある程度なら水を操れ無くもないが、それは精々自分の周囲の水の動きを多少変える位に小さい力だ。
「……なんだ、流され無いじゃないか。泳ぎもせずに流されないなら、問題無いんじゃないか?」
「でも泳げる自信はないです。ここは山の麓だし、それなりに急流ですし」
「さっきも言っただろう。モノは試しだ。良いから私について来い」
溜め息混じりに上流へと進み始める。進む事など叶わずに静止したままかと思った。
ーーーが。
「……なん……で…………?」
目前でニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべる間野先輩。
いや、まぁ………神様は寛大なんだか。悪戯好きなんだか。
つづく




