二章・五話
「願いを叶える?はぁ?何ふざけたこと言ってんだ?私の願いは私しか叶えることはできない。お前みたいな訳わかんねぇ奴に叶えられる程、甘い夢じゃねぇよ」
罪人はそう嘲笑すると、再び壁の文字列--数式--に向き直り、壁に続きを刻み始めた。
「此処から出してあげよう。そして、僕の望みを1つ叶えてくれたら、君に研究所と実験台をあげよう。…………どうだい?」
一瞬、罪人の数式を書き刻む手が止まったが、再び動きだし、目を細め鼻で笑った。
「はっ、交換条件なら合理的で納得がいくだろうと?私は馬鹿じゃねぇ。一体どんな策略か知らねぇが、この私が必要な程楽しいってことなんだろ?」
「そりゃあ楽しいよ。だって君が幸せになる為にするんだからさ」
「………まぁ、もし私を殺そうものなら、ここん中にいる奴らが黙ってねぇけどな」
罪人は自らの火傷の跡の様に爛れて瞳孔の白濁した右目を撫で、目の前で不気味に優しく微笑む道化師を脅した。
「大丈夫さ。僕は自分にしか嘘を吐かない。約束するよ」
罪人は暫く道化師を睨んだ後、牢屋を出ていった。
歩いた。ただ、その声の導くままに。
何処にどんな答えがあるのか。それは真の答えなのか。
はたまた、そもそも私は本当に生きているのか。
何もかもがわからない。
信じられるのは、その声だけ。
その声の言うまま、ただ、歩く。
そんな時、ふと掛けられた、優しい、暖かい言葉。
そして、暖かい場所。
これが幸せなのか。
あぁ、私は幸せなんた。
ビエールイ、あなたもおいでよ。
また、一緒に、遊ぼう?
ねぇ、行かないでよ。
やだ。
消えないで。
まだ----------------
「目覚めたかい?酷く魘されていたみたいだけれど…?大丈夫?」
「う、うん…………大丈夫」
酷く頭が痛む。
最近いつもそうだ。全く同じ悪い夢を見る。
見知らぬ女の子の名前を、喉が枯れるほどに叫ぶ、夢。
つづく




