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最強チートで無双してるのに、美人で可愛くてスタイル抜群な三人のヒロインから“キモいセクハラ野郎”と罵られ続ける俺の異世界冒険記  作者: トワイライト
第2章 海の街セレナ・マール編――ヒロイン三人とわちゃわちゃ・いちゃいちゃ冒険

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第57話 ジェンガ対決

 馬車の中には食後の満腹感が広がっていた。テーブルの上には空になった皿がいくつも並び、カレーの香りがまだほんのりと残っている。


 四人はそれぞれ椅子やソファに体を預け、しばらく動く気も起きない様子だった。


 その中でも、エステルは明らかにぐったりしていた。


 ソファの背もたれにもたれ、片手でお腹を押さえながら苦しそうに息を吐いている。


「うぅ……食べすぎた……」


 小さく(うめ)くように言う。


 その様子を見て、カナタが呆れた顔で尋ねた。


「エステル、何回おかわりしたの?」


 エステルは一瞬だけ視線を逸らす。


「さ、三回ぐらい?」


 少しだけ声が小さい。


 それを聞いたリヴィアが腕を組みながら淡々と言った。


「こんなの将来デブ確定だわ」


 容赦のない一言だった。


 エステルがすぐに反応する。


「そんなことない!」


 勢いよく否定するが、その動きのせいでさらにお腹を押さえることになり、顔をしかめた。


 セラフィナがカップを持ちながら静かに言う。


「最近食べてばっかですもんね」


 落ち着いた口調だった。


 エステルがぴたりと止まる。


「そ、それはそうだけど!」


 そのやり取りを見ていたカナタが、ニヤニヤしながらエステルの方を眺める。視線がわずかに下へ落ちた。


「エステルは発育いいから大丈夫じゃない?」


 ちらりと胸を見る。


 その瞬間、エステルの顔が一気に赤くなった。


「このセクハラやろう!」


 勢いよく身を乗り出し、エステルはカナタの頭を思いきり叩いた。


 ぱしん、と乾いた音が馬車の中に響く。


「いてっ!」


 カナタは頭を押さえながら顔をしかめたが、どこか楽しそうだった。


 食後の空気が少し落ち着いた頃、カナタが軽く指を鳴らした。


 次の瞬間、テーブルの上に並んでいた皿やカトラリーがふわりと浮き上がる。空になった皿はそのまま滑るようにキッチンの方へ移動し、流し台の中へ収まると同時に水が勝手に流れ出した。


 洗浄の魔法が働いたのか、皿は数秒でぴかぴかになり、乾いた状態で棚へ戻っていく。


 ほんの数秒の出来事だった。


 気づけばテーブルの上は何もない綺麗な状態になっている。


 エステルが目をぱちぱちさせた。


「便利すぎるでしょそれ……」


 カナタは特に気にした様子もなく椅子に座り直す。


「まあな」


 そして三人を見回した。


「今日は何のゲームしたい?」


 その問いに、エステルが即座に手を上げ間髪入れずに答えた。


「勝てるゲーム!」


 間髪入れずに答えた。


 その横でリヴィアが腕を組み、淡々と言う。


「あんたが負けるゲーム」


 カナタは余裕の表情で腕を組みながら言った。


「セラフィナとチームでもない限り負けないよ」


 セラフィナが苦笑する。


「まだマリ◯カートのこと言ってるんですか」


 少し呆れた声で言った。


 そしてセラフィナはカナタをちらりと睨む。


「てか、私負けてもないのにマッサージ受けさせられたんですけど」


 わずかに不満そうな声だった。


 カナタはくすっと笑う。


「気持ちよくて寝落ちしちゃったのに罰ゲーム扱いしてるの?」


 からかうように言った。


 セラフィナの頬がほんのり赤くなる。


「うるさいです」


 しばらく軽口の応酬が続いたあと、カナタがふと思い出したように言う。


「それじゃあ今日はジェンガするか」


 三人が同時に首を傾げる。


「ジェンガ?」


 聞き慣れない言葉だったらしい。


 カナタはテーブルの中央へ手をかざす。


 次の瞬間、木のブロックがいくつも現れ、きれいに組み上がったタワーのような形がテーブルの上に出来上がった。


 エステルがまじまじとそれを覗き込む。


「なにこれ?」


 カナタは説明する。


「木のブロックをこうやって積んだタワーから、順番に一本ずつ抜いて上に乗せていくゲーム。崩したやつが負け」


 リヴィアがタワーを観察しながら小さく頷く。


「なるほど、単純ね」


 セラフィナも興味深そうにブロックを見ている。


「バランスのゲームなんですね」


 ルールを理解した三人は、それぞれ椅子を引き寄せてテーブルを囲んだ。ジェンガのタワーは中央に置かれ、四人がそれを見下ろす形になる。


 カナタが軽く手を叩く。


「じゃあエステルから始めていいよ」


 しかしエステルはすぐに眉をひそめた。


「は?騙されないわよ」


 疑いの目でカナタを見る。


 カナタはとぼけた顔で肩をすくめた。


「今回のゲームはターンが回ってくるほど不利じゃない」


 エステルは腕を組み、じっとカナタを睨む。数秒ほど考えてから、ふっと鼻を鳴らした。


「騙そうとしたバツとしてカナタから始めて」


 カナタの顔が一瞬止まる。


「え?」


 予想外だったらしい声だった。


 その横でリヴィアが淡々と頷く。


「そうするべきね」


 セラフィナも小さく頷いた。


「当然だと思います」


 三対一だった。


 カナタは小さくため息をついた。


「じゃあ俺から時計回りで、セラフィナ、エステル、リヴィアの順番で」


 テーブルの中央に積まれた木のタワーを、四人がじっと見つめていた。小さな木のブロックが互い違いに積み上げられたタワーは、まだ綺麗な形を保っている。


 カナタが軽く指を鳴らした。


「じゃあ始めるか」


 そう言うと、タワーへ手を伸ばす。下の方のブロックを指で軽く押し、ゆっくりと横へ滑らせる。まだ序盤で隙間も多く、ブロックはあっさりと抜けた。


 カナタはその木片をタワーの一番上に乗せる。


「こんな感じ」


 何でもない顔だった。


 次はセラフィナの番である。


 セラフィナは少し身を乗り出し、タワーをじっと観察する。どのブロックが動くのか、指先で軽く触れながら確かめていた。


「……これですね」


 そう呟くと、中央あたりのブロックをゆっくりと押す。慎重に、少しずつ引き抜いていく。


 やがてブロックがするりと抜けた。


 セラフィナはそれを上へ重ねる。


「できました」


 ほっとしたように微笑んだ。


 次はエステルの番である。


 エステルは腕を組みながらタワーを睨んでいたが、やがてゆっくり手を伸ばした。


「別に簡単じゃない」


 そう言いながらも、指先の動きは少しだけ慎重だった。ブロックを押してみて、動くものを探す。やがて一つのブロックが少し動いた。


「これね」


 ゆっくりと引き抜く。


 タワーはほとんど揺れない。


 エステルはふん、と鼻を鳴らしながらそれを上へ乗せた。


 最後はリヴィアである。


 リヴィアは無言でタワーを見つめると、迷いなく手を伸ばした。指先で軽く押し、動くブロックを見つけると、そのまま静かに引き抜く。


 動きはとても落ち着いていた。


 ブロックは問題なく抜け、そのまま上に積まれる。


 こうして一巡した。


 しかしタワーはまだほとんど崩れる気配がない。序盤ということもあり、全員が安全そうなブロックを選んでいた。


 それから何ターンか同じようなやり取りが続いた。


 やがて再びカナタの番が回ってくる。


 カナタはタワーを軽く見上げ、指を伸ばした。


「そろそろ怪しくなってきたな」


 そう言いながら一つのブロックを押す。


 すると、その瞬間だった。


 木のタワーがわずかに揺れた。


 三人の目が一斉に見開かれる。


「ちょっと揺れた!」


 エステルが思わず声を上げた。


 タワーはしばらくゆらゆらと揺れていたが、やがて静かに止まる。


 カナタはそのままブロックを引き抜き、ゆっくりと上へ乗せた。


 今度の揺れは、さっきまでとは明らかに違っていた。


 四人の視線が、自然とタワーへ集中する。


 数ターンが過ぎた頃には、ジェンガのタワーはすっかり姿を変えていた。あちこちのブロックが抜かれ、タワーに隙間がたくさんできている。


 上へ上へと積み重ねられたせいで高さも増し、見た目にもかなり不安定だった。


 順番はリヴィアの番である。


 リヴィアは静かに身を乗り出し、タワーを観察する。どのブロックが動くのか、指先で軽く押して確かめていた。


「……これね」


 小さく呟くと、中央あたりの一本に指をかける。


 ゆっくりと横へ引く。


 木のブロックが少しずつ外へ滑り出す。


 その瞬間、タワーがぐらりと揺れた。


 エステルとセラフィナが思わず息を止める。


 しかしリヴィアは慌てない。


 揺れが収まるのを待ちながら、そのまま静かにブロックを引き抜いた。


 やがて木片は完全に外れる。


 リヴィアはそれをタワーの上に乗せた。


 タワーはまだ崩れない。


「……セーフ」


 エステルが小さく息を吐く。


 次はカナタの番だった。


 カナタは腕を組みながらタワーを見上げる。


「だいぶ怪しいなこれ」


 そう言いながら手を伸ばした。


 いくつかのブロックを軽く押してみる。


 そのうち一本がわずかに動いた。


「これか」


 カナタが指先でゆっくり引き始めた、その瞬間。


 タワーが大きく揺れた。


「ちょっと待って!」


 エステルが思わず叫ぶ。


 木のタワーがぐらぐらと揺れ続ける。上に積まれたブロックが今にも崩れそうに揺れていた。


 しかし――崩れない。


 数秒の揺れのあと、タワーはぎりぎりのところで静止した。


 カナタはそのままブロックを完全に引き抜き、何事もなかったように上へ乗せる。


「ほらな」

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