第49話 マリ◯カートでチーム戦
レースが始まってしばらく経った。
カラフルなコースの上を四台のカートが走り続ける。三人も少しずつ操作には慣れてきていたが、まだ動きは安定していない。
ドリフトのタイミングやコーナーの感覚が掴めず、時々ふらついている。
その時だった。
セラフィナのベ◯ビーデイジーがカーブへ差し掛かる。
だが曲がりきれない。
そのままコースの外へ滑り出した。
「きゃっ……!」
小さな悲鳴と同時に、画面の中のカートは空中へ落ちていく。下には何もない。
その様子を見たエステルが大笑いした。
「ちょっとセラフィナ下手すぎでしょ!」
ク◯パのカートを操作しながら、楽しそうに言う。
だがその直後だった。
エステルのカートが壁にぶつかる。
勢いのままバウンドし、そのままコースの外へ滑っていく。
「え、ちょっ……ちょっと!?」
叫びながら画面の中でク◯パが落下していった。
カナタがそれを見て吹き出す。
「今の完璧なフラグだったな」
エステルが振り向く。
「うるさい!」
怒鳴りながらコントローラーを握り直す。
一方、リヴィアのキノ◯オは比較的安定して走っていた。
派手なショートカットも無理なドリフトもせず、ただ淡々とコースを走っている。だがその分ミスも少なく、気付けば順位はじわじわと上がっていた。
そしてレースはそのまま終了する。
結果が画面に表示された。
1位、カナタ。
4位、リヴィア。
8位、エステル。
12位――セラフィナ。
最下位だった。
セラフィナはモニターを見つめたまま少し肩を落とす。
カナタは隣で笑いながら言った。
「セラフィナ、もしかして下手くそ?」
からかうような声だった。
セラフィナがむっとする。
「最初だからです!」
* * *
その後も何回かレースを続けた。
最初こそ操作に戸惑っていた三人だったが、回数を重ねるうちに少しずつゲームにも慣れてくる。ドリフトのタイミングも分かり始め、アイテムの使い方もなんとなく理解してきたらしい。
「さっきより曲がれるようになってきたわ」
リヴィアが画面を見ながら淡々と言う。
「ほんとだ、ドリフトってこうやるんですね」
セラフィナもコントローラーを操作しながら頷いた。
一方エステルはというと、壁にぶつかりながらも楽しそうに叫んでいる。
「このゲームめちゃくちゃ面白いじゃない!」
そんな様子を見ながら、カナタがふと思いついたように言う。
「じゃあ今回はチーム戦にしよう」
三人が一斉にカナタを見る。
「チーム戦?」
エステルが首を傾げる。
「二人ずつのチームで戦うんだよ。せっかくだし勝負っぽくしようぜ」
その提案に三人の目が少し輝いた。
チーム分けはシンプルに決めることになった。
「じゃあグーとパーで分けるぞ」
四人が手を出す。
「グーとパーで分かれましょ!」
結果。
カナタとセラフィナ。
リヴィアとエステル。
チームが決まる。
カナタがすぐにセラフィナを見た。
「足引っ張らないでよ?」
からかうような笑みだった。
セラフィナは即座に言い返す。
「チームメンバーの士気下げないでください」
冷静な口調だが、少しむっとしている。
エステルは今度はリヴィアの方を向いた。
「絶対あいつに勝とう」
小声でそう言い、さらに続ける。
「あっちのチームにはお荷物がいるから勝てるかもしれないわ」
その言葉にセラフィナが即座に反応した。
「聞こえてますよ!」
エステルはまったく気にした様子もなくニヤリと笑う。
「もちろん罰ゲームありよね」
その一言で空気が少し変わった。
カナタも楽しそうに笑う。
「そうだな。いつも通りの罰ゲームで」
そして簡単にルールを説明した。
チームの順位を合計し、数字が低い方が勝ち。
シンプルだが分かりやすい。
四人はそれぞれコントローラーを握り直した。
次のレースが始まる。
画面に表示されたコースを見て、三人が同時に声を漏らした。
「すごいコース……」
リヴィアが小さく呟く。
目の前に広がっているのは、空の上に浮かぶ虹色の道路だった。赤、青、緑、黄色、様々な色が光りながら曲がりくねり、その周囲には何もない。下は果てしない空間だ。
レインボーロード。
その名の通り、空に架かる虹の道だった。
カウントダウンが始まる。
3。
2。
1。
スタート。
四台のカートが一斉に飛び出す。
今回は全員がタイミングを掴んでいた。
ロケットスタート。
カートが勢いよく加速し、虹色のコースを高速で走り出す。序盤からかなりの接戦だった。四台がほぼ横並びで走り、カーブを曲がるたびに順位が入れ替わる。
カナタはヘ◯ホーのカートを操作しながら、前を走るク◯パの背中を見ていた。
エステルだ。
少し時間が経ち、カナタの手元にアイテムが出る。
トリプル赤甲羅。
カナタはにやりと笑った。
「悪いなエステル」
そう言って一つ投げる。
赤甲羅がコースを滑るように進み、ク◯パへ向かって一直線に飛んでいく。
命中。
エステルのカートが弾けるようにスピンした。
「ちょっとカナタぁ!」
怒った声が馬車の中に響く。
その隙にカナタのカートが前へ出る。
だがカナタはまだ赤甲羅を二つ持っていた。
バックミラーをちらりと見る。
すぐ後ろにエステルのク◯パが迫っていた。
カナタは軽くコントローラーを操作する。
後ろ投げ。
赤甲羅が後方へ飛ぶ。
そして、また命中した。
ク◯パが再びスピンする。
「ふざけんなぁぁ!」
エステルが本気で叫んだ。
レースは中盤に差しかかっていた。
虹色のコースの上ではカートが入り乱れ、順位はかなり混戦になっている。先ほどまで前を走っていたカナタも、赤甲羅の応酬や接触で順位を落とし、今は全員が中位あたりで固まっていた。
そんな中、リヴィアのキノ◯オがアイテムボックスを通過する。
アイテムが回転し、表示されたのは――
きょだいキノコ。
次の瞬間だった。
キノ◯オが巨大化する。
小さな体が一気に膨れ上がり、コースの上に巨大なキノコ頭が現れた。カートもそれに合わせて巨大になり、まるで戦車のようなサイズになる。
巨大キノ◯オがそのままコースを走り出した。
リヴィアは特に声も出さず、ただ静かにコントローラーを操作している。
だがその進路には容赦がなかった。
前方を走っていたベ◯ビーデイジーへ、そのまま突っ込む。
踏みつけ。
「きゃあ!?」
セラフィナのカートがあっさり踏み潰された。画面の中でベ◯ビーデイジーのカートがぺちゃんこになり、そのまま減速する。
巨大キノ◯オは止まらない。
次に目の前へ現れたのはカナタのヘ◯ホーだった。
そのまま踏む。
どん、と鈍い音が響く。
「ちょっ、なんでそんなに轢くの上手いんだよ!」
カナタのカートもあっさり踏み潰されるが、リヴィアは特に反応しない。
ただ黙々と巨大キノ◯オを操作し、目の前に現れるカートを次々と踏んでいく。
巨大キノ◯オが虹の道を突き進む。
完全な無双状態だった。
レースは最終ラップに入り、虹色のコースの上をカートが高速で走り抜ける。順位はすでに大きく動いており、先頭にはリヴィアのキノ◯オ、そのすぐ後ろにカナタのヘ◯ホーが続いていた。
リヴィアは無駄のない操作でコーナーを抜けていく。派手なショートカットはしないが、ミスも一切ない安定した走りだった。
そのまま最後の直線へ入る。
リヴィアのカートがゴールラインを通過した。
1位。
すぐ後ろを走っていたカナタも、そのまま続く。
ヘ◯ホーのカートがゴール。
2位。
「よし」
カナタが軽く笑う。
だがレースはまだ終わっていなかった。
残るはセラフィナとエステル。
二人のカートがほぼ横並びで最後のカーブを抜ける。
完全なデッドヒートだった。
ベ◯ビーデイジーとク◯パが並び、虹の道を全速力で走る。
ゴールまであと少し。
その瞬間、セラフィナがわずかに前へ出た。
「勝ちます!」
嬉しそうな声が響く。
だが次の瞬間だった。
エステルのク◯パがキノコを使用する。
加速。
カートが一気に前へ飛び出す。
「えっ!?」
セラフィナが驚いた声を上げる。
そのままク◯パがゴールラインを先に通過した。
続いてベ◯ビーデイジーもゴールする。
結果が画面に表示された。
1位、リヴィア。
2位、カナタ。
5位、エステル。
6位、セラフィナ。
カナタが腕を組みながら画面を見る。
「ってことは……」
チーム順位を合計する。
カナタ・セラフィナ。
8。
リヴィア・エステル。
6。
勝者は――リヴィアとエステルだった。




