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最強チートで無双してるのに、美人で可愛くてスタイル抜群な三人のヒロインから“キモいセクハラ野郎”と罵られ続ける俺の異世界冒険記  作者: トワイライト
第2章 海の街セレナ・マール編――ヒロイン三人とわちゃわちゃ・いちゃいちゃ冒険

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第37話 馬車ランチ開幕――カナタの料理にヒロイン達が思わず唸る

 豪華な馬車は静かに街道を進んでいた。


 厚い絨毯が敷かれた室内の長椅子に四人は腰を下ろし、窓の外に流れていく景色を眺めている。


 大きな窓の向こうには、緑の森に囲まれた街道がまっすぐ続いていた。


 木々の隙間から差し込む光が揺れ、草原の草が風に合わせて波のように揺れる。空には白い雲がゆっくり流れ、時折鳥が羽ばたきながら森の上を横切っていった。


 しかし馬車の中は驚くほど静かだった。


 普通の馬車なら石や段差でがたがたと揺れるはずだが、この馬車はまるで滑るように進んでいる。


 エステルが長椅子から身を乗り出した。


「全然揺れないんだけど!」


 信じられないという顔で窓の外と床を見比べている。


 リヴィアは腕を組んだまま、静かに周囲を観察していた。


「普通の馬車とは別物ね」


 短く言いながら、窓の外にいるストームホースへ視線を向ける。


 セラフィナも穏やかに頷いた。


「本当に快適ですね」


 そう言いながら、長椅子の背に体を預ける。


 エステルは完全に落ち着きがなくなっていた。


 窓のところまで歩いていくと、ガラスに顔を近づけて外を覗き込む。


「うわ、森すごい!」


 楽しそうな声だった。


 街道の両側には背の高い木が並び、風に揺れた葉が光を反射してきらきらと輝いている。遠くには丘が見え、その上にはゆっくりと雲が流れていた。


 エステルがくるりと振り返る。


「思ってたより冒険って楽しいかも!」


 さっきまでの不機嫌な顔はすっかり消えていた。


 その様子を見ながら、カナタは長椅子に背中を預けて軽く伸びをする。


 しばらく馬車は静かに進み続けた。


 そして次の瞬間。


「……ぐぅ」


 小さな音が室内に響いた。


 カナタは少しだけ顔をしかめる。


「……腹減った」


 ぼそりと呟く。


 エステルがすぐに反応した。


「私も!」


 勢いよく振り返る。


 セラフィナも小さく笑う。


「そろそろお昼の時間ですね」


 カナタは窓の外の空をちらりと見てから、軽く頷いた。


「そろそろ昼にするか」


 その言葉に、エステルが窓の外から振り返る。


「昼ごはんどうするの?」


 素直な疑問だった。


 カナタは特に考え込む様子もなく答える。


「俺が作る」


 その瞬間、三人の動きがぴたりと止まった。


 エステルがゆっくり目を細める。


「あんたが?」


 疑いしかない声だった。


 リヴィアも腕を組んだまま冷静に続ける。


「料理できるの?」


 短い問いだったが、まったく信用していない目だった。


 その横でセラフィナがやんわりと微笑む。


「無理なら言ってくださいね。私がやりますから」


 丁寧な口調だったが、つまり「あなたには無理でしょう」という意味である。


 カナタは少しだけむっとした顔をする。


「大丈夫だって」


 自信ありげに言うと、腕を軽く組んだ。


 エステルが眉をひそめる。


「何作るのよ」


 その問いに、カナタは少し考えるふりをした。


 次の瞬間、視界に半透明のウィンドウがふわりと浮かび上がる。


 カナタのチート能力による情報検索だった。


 頭の中の画面に、いくつもの料理の名前が並んでいく。


 肉料理、煮込み料理、焼き料理。


 その中から、カナタは一つの料理を選んだ。


「これだな」


 小さく呟く。


 ウィンドウには、香草とともに焼き上げられた肉料理の画像が表示されていた。


 香ばしく焼かれた肉の表面に、ローズマリーやタイムが散らされている。


 カナタはウィンドウを消すと、三人を見て言った。


「香草焼きの肉と焼き立てパン」


 さらりと言った。


 沈黙が落ちる。


 三人は同時に顔を見合わせた。


 そして次の瞬間。


「「「え?」」」


 三人の声が綺麗に重なった。


 カナタは軽く指を鳴らした。


 次の瞬間、テーブルの上にいくつもの材料が現れる。


 白い小麦粉の袋、水の入った瓶、小さな壺に入ったイースト、そして塊のバター。突然現れた材料に、三人は一斉に目を丸くした。


「ちょっと待って、それどこから出したのよ」


 エステルが怪訝そうに言う。


「インベントリ」


 カナタはあっさり答えると、小麦粉をボウルに入れ、水とイーストを加えた。


 指先で混ぜ始めると、生地はゆっくりまとまり始める。


 カナタは手のひらで生地を押し、折りたたみ、また押す。何度もこねるうちに、生地はだんだん滑らかになっていった。


 エステルが長椅子から身を乗り出す。


「ほんとに料理するんだ……」


 半信半疑の声だった。


 カナタは軽く肩をすくめる。


「まあ見てろって」


 まとまった生地を丸めると、カナタは軽く指を鳴らした。


 すると生地がふわりと膨らみ始める。


 普通なら時間がかかる発酵が、わずか数秒で終わってしまった。


 セラフィナが目を瞬かせる。


「……発酵を短縮しましたね」


 冷静な指摘だった。


 カナタは何事もないように頷く。


「便利だろ」


 膨らんだ生地をいくつかに分け、手の中で丸く整えていく。


 丸い生地がいくつも並び、カナタはそれをオーブンへ入れた。


 しばらくすると、馬車の中にふわりと香ばしい匂いが広がり始める。


 エステルの鼻がぴくりと動いた。


「なんかいい匂いしてきた!」


 嬉しそうな声だった。


 セラフィナも小さく頷く。


「パン……ですね」


 焼けていく香りがゆっくり広がっていく。


 リヴィアは腕を組んだままオーブンを見つめていた。


「本当に焼いてるのね」


 どこか感心したような声だった。


 やがてオーブンの扉を開けると、こんがりと焼けた丸パンが姿を現した。


 表面はきつね色に焼け、ふわりと湯気が立ち上っている。


 馬車の中には、焼きたてのパンの甘く香ばしい香りが広がっていた。


 焼きたてのパンをテーブルの上に並べると、カナタは次の材料を取り出した。


 どん、とまな板の上に置かれたのは分厚い肉の塊だった。


 エステルの目がすぐに丸くなる。


「でかっ」


 思わず声が漏れる。


 カナタは気にした様子もなく、包丁で肉の表面に軽く切れ目を入れていく。


 そこへ塩と黒胡椒を振り、さらにオリーブオイルをたらした。


 続いて刻んだにんにくをすり込み、ローズマリーとタイムの香草を肉の表面へ押し付けるように馴染ませる。


 香草の香りがふわりと広がった。


 セラフィナが少しだけ目を細める。


「いい香りですね」


 落ち着いた声だった。


 カナタは軽く頷きながら肉をひっくり返す。


「香草焼きだからな」


 調味料をすり込んだ肉は、そのままフライパンの上へ置かれた。


 次の瞬間。


 ジュッ、と大きな音が響く。


 熱された鉄の上で肉の表面が一気に焼け始め、香ばしい匂いが馬車の中に広がっていった。


 エステルが思わず身を乗り出す。


「なにこの匂い!」


 興奮した声だった。


 肉の表面はすぐにこんがりと色づき、油がぱちぱちと弾ける。


 リヴィアは腕を組んだままフライパンを見つめていた。


「肉料理ね」


 短く言うが、その視線はしっかり焼き色を観察している。


 カナタは表面に焼き色をつけると、肉を取り出してオーブンへ入れた。


「ここからは中まで火を通す」


 そう言いながら、フライパンに残った肉汁へバターを落とす。


 溶けたバターに香草を加えると、濃い香りが一気に広がった。


 エステルの鼻がぴくぴく動く。


「お腹すく匂いなんだけど!」


 やがてオーブンから肉を取り出すと、カナタはまな板の上に置いて包丁を入れた。


 すっと刃が通る。


 切り分けられた肉の断面から、じゅわりと肉汁が溢れた。


 その上から溶けたバターと香草をかける。


 皿に並べられた香草焼きの肉から、食欲を刺激する香りが立ち上っていた。


 しばらくして、馬車の中のテーブルには料理が並んでいた。


 焼きたての丸パンが籠に盛られ、その横には香草焼きの肉が美しく並べられている。さらに人参や玉ねぎ、じゃがいもを軽く焼いたグリル野菜まで添えられていた。


 立ち上る香りだけで食欲を刺激される。


 エステルが呆然とテーブルを見つめた。


「豪華すぎない?」


 素直な感想だった。


 リヴィアも腕を組んだまま料理を眺めている。


「……馬車の昼食とは思えないわね」


 冷静な口調だったが、視線はしっかり料理を観察していた。


 セラフィナは小さく微笑む。


「では、いただきましょうか」


 その言葉を合図に、四人は食事を始めた。


 エステルはさっそく丸パンを手に取り、ぱきっと割る。


 中から白い湯気がふわりと立ち上り、柔らかい生地の香りが広がった。


「うわ、ふわふわ!」


 嬉しそうな声だった。


 続いてフォークで肉を切る。


 ナイフがすっと入ると、断面から肉汁がじわりと溢れた。


 一口食べた瞬間。


「なにこれ美味しい!」


 エステルが目を輝かせる。


「めちゃくちゃ美味しいんだけど!」


 勢いよく続けた。


 その横でリヴィアも静かに肉を口へ運ぶ。


 数秒だけ無言で噛み、それから短く言った。


「……予想以上ね」


 あまり感情を表に出さない彼女にしては、かなり高い評価だった。


 セラフィナもパンを少しちぎり、肉と一緒に口へ運ぶ。


 しばらく味わうように噛んだあと、柔らかく微笑んだ。


「料理もできるんですね」


 穏やかな声だった。


 カナタは腕を組みながら得意げに頷く。


「まあな」


 簡単に答えるが、表情はどこか満足そうだった。


 窓の外では森の景色がゆっくりと流れていく。


 豪華な馬車の中で、焼きたてのパンと香草焼きの肉を囲む昼食。


 まるで旅とは思えないほど贅沢な時間だった。

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