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最強チートで無双してるのに、美人で可愛くてスタイル抜群な三人のヒロインから“キモいセクハラ野郎”と罵られ続ける俺の異世界冒険記  作者: トワイライト
第2章 海の街セレナ・マール編――ヒロイン三人とわちゃわちゃ・いちゃいちゃ冒険

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第36話 チート馬車作成――現代ホテルのような設備にヒロイン達は大興奮

 カナタが馬車の扉を開けると、四人は順番に中へ乗り込んだ。


 外から見ると、それはごく普通の旅用馬車だった。木製の箱型の車体に大きな車輪、特別な装飾もないありふれた見た目である。


 しかし一歩中へ入った瞬間、三人の足がぴたりと止まった。


 そこには、外観からは想像もできないほど広い空間が広がっていた。

 

 厚い絨毯が床一面に敷かれ、室内の中央にはゆったり体を預けられる長椅子と低い机が置かれている。


 壁には柔らかな光を放つ魔導灯が並び、大きな窓からは外の街道の景色がはっきりと見えていた。


 ただしその窓は、外からは内部が見えない特殊な作りになっている。


 その内装は、昨日カナタたちが泊まったあの超高級ホテルを参考にして作られていた。


 しばらく沈黙したあと、最初に口を開いたのはエステルだった。


「昨日のホテルより豪華じゃない!」


 信じられないという顔で叫びながら、エステルはきょろきょろと室内を見回す。


 セラフィナも静かに目を丸くしていた。


「……外から見た大きさと合っていませんね」


 落ち着いた口調だったが、明らかに驚いている。


 リヴィアは無言のまま一歩進み、床を軽く踏みしめてから周囲を観察する。


「空間拡張……?」


 短く呟くその声には、わずかな困惑が混じっていた。


 その後、三人はそれぞれ興味のままに室内を見て回り始めた。


 まず見つかったのは、扉の奥にある小部屋だった。


「ちょっとこれ見て!」


 エステルの声に二人が集まる。そこには見慣れない陶器の設備が置かれていた。


「多分、トイレですね」


 セラフィナが冷静に言う。


 さらに奥へ進むと浴室があり、金属製の蛇口や広い浴槽が並んでいた。


「お風呂まであるの!?」


 エステルが目を輝かせる。


 別の扉を開けると、そこには大きなベッドの置かれた寝室。


 さらに壁際には、用途の分からない機械や装置まで並んでいた。


「……これ何?」


 エステルが怪訝そうに指差す。


「分かりません」


 セラフィナはあっさり首を振る。


 それでも三人の表情は完全に高揚していた。


「何これすごい!」


「意味が分からない設備がある!」


 興奮した声が次々に上がる中、カナタだけがその様子を見ながら、どこか満足そうに頷いていた。


 一通り馬車の内部を見て回ったあと、四人は最初の部屋へ戻ってきた。


 厚い絨毯の敷かれた室内に、しばし静かな空気が流れる。


 そのとき、セラフィナが小さく首を傾げた。


「一つ違和感があるんですが」


 穏やかな声だった。


 隣で壁にもたれていたリヴィアも短く頷く。


「私も」


 そして腕を組んでいたエステルも、むっとした顔で口を開いた。


「私も思った」


 三人の視線が同時にカナタへ向く。


 なんとなく嫌な予感がしたのか、カナタは少しだけ身構えた。


「なんでベッドが一つしかないの?」


 エステルがはっきり言い切る。


 沈黙が落ちた。


 カナタは数秒だけ目を泳がせ、それからわざとらしく肩をすくめる。


「まあパーティになったし、一つでもいいんじゃない?」


 あまりにも軽い口調だった。


 次の瞬間。


「いいわけないでしょうが!」


 エステルの怒鳴り声が馬車の中に響いた。


 勢いよく一歩踏み出し、カナタの胸ぐらを掴みそうな勢いで詰め寄る。


「なんで男女で同じベッドなのよ!」


「いや広いし四人くらい余裕で――」


「余裕でもダメなのよ!」


 エステルは顔を真っ赤にして怒鳴る。


 その横で、リヴィアが腕を組んだまま冷たい目で言った。


「却下ね」


 短い一言だった。


 セラフィナも静かに続ける。


「さすがにそれはあり得ません」


 柔らかい声だったが、完全に否定だった。


 三人の視線が一斉にカナタへ突き刺さる。


 カナタはしばらく黙っていたが、やがて小さく息を吐いた。


「……分かったよ」


 そう言うと軽く指を鳴らす。


 その瞬間、部屋の奥の壁に淡い光がふわりと広がった。


 光はゆっくりと形を作り、やがて新しい扉へと変わっていく。


 木製のしっかりした扉だった。


 エステルが目を丸くする。


「え、今作ったの?」


「うん」


 カナタは何でもないことのように頷く。


 リヴィアが扉を開ける。


 そこには、もう一つの寝室がきちんと作られていた。


 同じように大きなベッドと家具が並んでいる。


 リヴィアは数秒だけ無言で眺め、それから小さく息を吐いた。


「最初からやりなさい」


 静かな説教だった。


 エステルは腕を組みながら、まだ少し怒った顔でカナタを睨んでいる。


「ほんと最低」


 ぼそりと呟く。


 カナタは肩をすくめながら苦笑した。


「そんな怒ることか?」


 一通りの騒ぎが落ち着いたが、エステルはまだ少し不機嫌そうな顔をしている。


 部屋の中を見回しているうちに、ふと壁の一角に目を留めた。


「ねえ、これ何?」


 指差した先には、小さな丸いボタンが埋め込まれている。


 カナタがちらりと視線を向ける。


「あー……」


 その反応を見て、エステルはさらに興味を持った。


「押していい?」


「いや、それは――」


 カナタが言い終わる前に、エステルの指がボタンを押した。


 次の瞬間、壁の一部がふわりと光り、半透明の映像が浮かび上がる。


 そこに映し出されたのは――浴室だった。


 広い浴槽と、先ほど見たばかりの風呂場の内部がそのまま映っている。


 馬車の中に、妙な沈黙が落ちた。


 エステルがゆっくり口を開く。


「……は?」


 リヴィアが無表情のまま言う。


「キモ」


 短く、冷たい一言だった。


 三人の視線が、ゆっくりとカナタへ向く。


 逃げ場のない視線だった。


 エステルが一歩前に出る。


「説明して」


 静かな声だったが、完全に怒っている。


 カナタは一瞬だけ視線を逸らし、それから咳払いをした。


「安全のため?」


 次の瞬間。


「死ね!」


 エステルの拳がカナタの肩に思い切り叩き込まれた。


「痛っ!」


 カナタが思わず体をよろめかせる。


 その横で、リヴィアが腕を組んだまま冷たい目で言った。


「他にもこんなことしてないでしょうね」


 完全に疑っている声だった。


 カナタは慌てて首を横に振る。


「誓ってしてない!これだけだから!」


 必死な弁解だった。


 セラフィナが静かに目を伏せる。


「失望しました」


 落ち着いた声だったが、その一言は妙に重かった。


 カナタはがっくりと肩を落とす。


「いや、ほんとに安全のためなんだって……」


 しかし三人の視線は、まったく信じていないものだった。


 しばらく続いた騒ぎが終わり、馬車の中にはようやく静かな空気が戻っていた。


 エステルはまだ不満そうに腕を組んでいるし、リヴィアは壁にもたれて腕を組んだまま無言でこちらを見ている。セラフィナだけが、いつもの穏やかな表情で周囲を見回していた。


 そのとき、セラフィナがふと口を開く。


「御者は誰がやるんですか?」


 静かな問いだった。


 カナタは一瞬だけきょとんとした顔をする。


「御者?」


 聞き返すと、セラフィナが丁寧に説明した。


「馬を操る人のことです」


 その言葉を聞いて、カナタは「ああ」と小さく頷く。


「それなら多分いらない」


 さらりと言った。


 三人の動きが同時に止まる。


「は?」


 三人の声が綺麗に重なった。


 エステルが目を丸くする。


「いらないってどういうことよ」


 カナタは特に気にした様子もなく、窓の外にいるストームホースの方を親指で指した。


「俺の馬は賢いから、なんとなく進んでくれるはず」


 あまりにも適当な説明だった。


 エステルの眉がぴくりと跳ねる。


「は?」


 さっきより低い声だった。


 セラフィナは少し感心したように小さく頷く。


「そんなこともできるんですね」


 穏やかな口調だったが、その言葉を聞いたカナタはすぐに調子に乗った。


「だろ?」


 胸を張る。


「俺の評価、今日でうなぎ登りだな」


 満足げな顔だった。


 しかし次の瞬間、リヴィアが冷たい声で言った。


「寝室とボタンのこともう忘れたの?」


 淡々とした指摘だった。


 カナタの顔がぴたりと止まる。


 さらにセラフィナが静かに続けた。


「馬よりもアホですね」


 穏やかな声なのに、やけに刺さる一言だった。


 カナタはしばらく口を開いたまま固まっていたが、やがて小さく肩を落とした。


「……評価下がってない?」


 四人はそれぞれ長椅子に腰を下ろした。


 厚い絨毯の上に置かれた長椅子は想像以上に座り心地が良く、窓の外には街の門とその向こうの街道が広がっている。


 カナタは窓の外を一度ちらりと見てから、軽く手を叩いた。


「それじゃあ出発するか」


 その言葉に三人の視線が自然と外へ向く。


 リヴィアは腕を組んだまま窓の近くに腰掛け、静かな目で街道を眺めていた。


 表情はいつも通り落ち着いているが、その視線にはほんのわずかに期待の色が混じっている。


「問題なく進むならいいわ」


 短く言うと、再び外へ視線を戻した。


 その横で、エステルは完全に様子が違っていた。


「ほんとに動くの? この馬車!」


 窓に身を乗り出しそうな勢いで外を覗き込んでいる。


「なんかもう旅行って感じよね!」


 声が明らかに弾んでいた。


 セラフィナはそんな二人を見て、小さく微笑む。


「海の街、楽しみですね」


 穏やかな声だった。


 窓の外では、二頭のストームホースが静かに地面を踏み鳴らしている。風属性の魔物特有の銀色の体毛が朝の光を受けて揺れ、その周囲には微かな風が流れていた。


 やがてそのうちの一頭がゆっくりと歩き出す。


 もう一頭もそれに合わせて動き、馬車を引くようにして街道へと進み始めた。


 車輪が石の上を転がり、馬車が静かに揺れる。


「お、動いた」


 カナタが満足そうに頷く。


 エステルは窓の外を見ながら、わくわくした声を上げた。


「ほんとに進んでる!」


 リヴィアは小さく息を吐く。


「……本当に御者なしで動くのね」


 半ば呆れたような声だった。


 それでも馬車は順調に街道へと進んでいく。


 高級ホテルを参考に作られた豪華な馬車は、二頭のストームホースに引かれながら、ゆっくりと遠くへ走り出していた。

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