第34話 ヒロイン三人コスプレ回――リヴィアポリス、エステルセーラー服、セラフィナナース
カナタはソファに深く腰掛け、テーブルの上のカードを指で弄びながら、隣の部屋の扉をちらちらと眺めていた。
三人が着替えてから、すでに数分は経っている。中からはときおり小さな声が聞こえてきたが、内容までははっきりとは分からない。
やがて、カチャリと扉が開いた。
三人が並ぶようにして部屋へ戻ってくる。
最初に目に入ったのはリヴィアだった。黒い警察制服風の衣装に身を包み、体にぴったりと合ったジャケットと短いスカートがすらりとした脚線を際立たせている。頭には警察官の帽子まで乗っており、腕を組んだ姿は妙に様になっていたが、どこか落ち着かない様子で視線がわずかに逸れていた。
その隣ではエステルが不機嫌そうに頬を赤く染めている。白と紺のセーラー服に短めのスカートという、学生そのものの格好で、普段のローブ姿とはまったく違う雰囲気だった。慣れない服装に落ち着かないのか、スカートの裾を気にするように引っ張りながら、こちらを睨みつけている。
そして最後に立っているのがセラフィナだった。白いナース服に身を包み、上品なシルエットの衣装が彼女の落ち着いた雰囲気と妙に噛み合っている。胸元がやや強調されるデザインのせいか、いつもの穏やかな表情のままでもどこか恥ずかしそうに視線を伏せていた。
三人を見た瞬間、カナタの目がぱっと輝いた。
「おお……!」
思わず声が漏れる。
三人はその反応を見て、同時に顔をしかめた。
「早く終わらせなさい」
リヴィアが腕を組んだまま低く言う。
「見るな変態!」
エステルが顔を真っ赤にして叫ぶ。
その横で、セラフィナが小さくため息をついた。
「こういう趣味だったんですね……」
穏やかな声だったが、視線は明らかに冷たい。
しかしカナタは三人をまじまじと眺めながら、完全に楽しそうに口元を緩めていた。
(いや、これはなかなか……)
まず視線が止まったのはリヴィアだった。
黒い警察官風の制服は、驚くほど彼女に似合っている。腕を組んでいるせいで、ジャケットの袖から見える二の腕がやけに目立つ。剣を振るう腕のはずなのに、白くて妙に女っぽい。帽子の影からのぞく鋭い視線と無表情な顔つきが、まるで本物の取締官のような迫力を出していた。
(完全に“厳しい女警官”じゃん……)
街で出会ったら普通に職務質問されそうな雰囲気である。腕を組んで立っているだけなのに、妙な威圧感があるのがまた面白い。
次に視線が移ったのはエステルだった。
白と紺のセーラー服は、意外なほど似合っている。普段の派手な魔法使いのローブとはまったく違う格好だが、明るい金髪と制服の組み合わせが妙に映えていた。ただ一つ問題があるとすれば——。
(いや、それ制服きつくないか……?)
胸のせいである。セーラー服の上着がやや窮屈そうで、立っているだけでも布がぴんと張っている。本人は腕を組んで不機嫌そうにしているが、その姿が逆に制服のラインを強調してしまっていた。
そして最後に視線が向いたのがセラフィナだった。
白いナース服に身を包んだ彼女は、三人の中でも一番違和感がない。落ち着いた雰囲気と柔らかな表情が衣装と妙に噛み合っており、まるで最初からそういう仕事をしていたかのような自然さだった。
(いや、これ普通に本職っぽいな……)
派手さはない。胸も大きくなく体つきも華奢だが、白いナース服の上からでも分かる柔らかなラインとすっと伸びた腰が妙に目に残る。主張は強くないのに妙に女らしく、気づけば視線がそこに引き寄せられていた。
三人を一通り見比べながら、カナタは小さく頷く。
(うむ、これはいい罰ゲームだ)
「ちょっと後ろ向いて」
カナタが何気ない調子でそう言った瞬間、三人の視線が一斉にこちらへ突き刺さった。
「なんでそこまでしなきゃいけないのよ」
リヴィアが腕を組んだまま、呆れたように言う。
「いいからいいから」
カナタは軽く手を振りながら笑った。
「は?」
リヴィアの眉がぴくりと動く。
「ゲームに負けたでしょ。早くして」
当然のことのように言うと、三人はしばらく無言でカナタを睨みつけた。
「こいつ……」
エステルが低く呟く。
しかし結局、罰ゲームである以上拒否する理由もない。三人は不満そうな顔をしたまま、しぶしぶその場でくるりと背中を向けた。
カナタはソファに座ったまま、腕を組んでその後ろ姿を眺める。
(うん、これはこれで……)
まず目に入るのはリヴィアだった。警察官の短いスカートの下からすらりと伸びる脚がまっすぐで、背筋を伸ばして立っているせいか、妙にシルエットが綺麗に見える。余計な動きがない立ち方も相まって、どこか本物の取締官のような雰囲気だった。
(取り締まられる側になりそうだな……)
次に視線が移ったのはエステルだった。セーラー服の背中のラインが思ったよりもすっきりしており、金色の長い髪が背中にさらりと落ちている。その髪が動くたびに制服の白い布がちらりと揺れて、妙に目を引いた。
(後ろ姿は完全に学生だな……)
そして最後にセラフィナを見る。白いナース服は背中から腰にかけてのラインがなだらかで、立っているだけでも柔らかな輪郭がはっきり分かる。無理な主張はないのに、妙に女らしい形だった。
(なるほど……)
カナタは満足げに頷いたあと、ふと何かを思い出したように指を鳴らした。
「あ、そうだ」
その瞬間、カナタの手元に淡い光が集まる。小さな光の粒がくるくると渦を描き、やがて一つの黒い板状の物体へと形を変えた。カナタがそれをひょいと掴む。
三人の視線が一斉にそこへ向いた。
「なにそれ」
エステルが眉をひそめながら言う。
「あとで教えるよ」
カナタは気楽な調子で答えながら、手の中のスマートフォンの画面を軽く叩いた。
「絶対ロクなものじゃないわ」
エステルが腕を組んで睨む。
「私もそう思ってました」
セラフィナが穏やかな笑顔のまま同意する。
カナタは特に気にした様子もなく画面を操作し、カメラを起動させると三人の前に立った。
「ちょっとポーズ取って」
三人は同時に嫌そうな顔をした。
「は?」
リヴィアが低い声で言う。
「罰ゲームだってば」
カナタは当然のように続けた。
三人はしばらくカナタを睨みつけたあと、小さくため息をつく。
まずリヴィアが帽子のつばを軽く指でつまみ、体をわずかにくねらせるように立った。警察制服のシルエットがその動きで自然と浮かび上がり、すらりとした脚のラインが強調される。
次にエステルが不機嫌そうに体を少し反らす。セーラー服の裾がわずかに持ち上がり、腹部がちらりと見えた。
「ほら、これでいいんでしょ!」
ぶっきらぼうに言う。
最後にセラフィナが少し前かがみになり、片方の手を膝に置き、もう一方の手で銀色の髪をかき上げた。ナース服の柔らかなラインが自然に強調される。
カナタはスマートフォンを構える。
「はい、そのまま」
カシャッ、と小さな音が部屋に響いた。
カナタが満足そうにスマートフォンの画面を眺めていると、エステルが苛立った声を上げる。
「それなによ!」
腕を組んだまま、怪しいものを見る目でカナタの手元を睨んでいた。
「これは……みんなも見る?」
カナタはにやりと笑いながら画面を少し持ち上げる。
「は?」
三人の声が見事に揃った。
カナタがスマートフォンの画面を三人の前へ向けると、そこにはさっき撮ったばかりの写真がはっきりと映っていた。
警察官姿のリヴィア、セーラー服のエステル、ナース姿のセラフィナがそれぞれポーズを取っている。
「え? 私たちが写ってる?」
エステルが目を丸くする。
「どういうことですか?」
セラフィナも少し驚いたように画面を覗き込んだ。
「こうやって画像として残せるんだよ」
カナタが得意げに言う。
三人は顔を寄せて画面を見つめた。
「すご……」
エステルが思わず呟く。
しかし次の瞬間、セラフィナがゆっくり顔を上げた。
「でもその魔道具があれば、ずっと私たちの画像を見れるってことですか?」
穏やかな口調だったが、視線は完全に冷たい。
カナタは軽く肩をすくめた。
「みんなのかわいい画像を保存しておこうと思って。みんなのためだと思って……」
言い終わる前だった。
「今すぐその魔道具を壊せ!」
三人の怒声が同時に響いた。
「え、ちょっ——」
カナタは慌ててスマートフォンを抱え、ソファから飛び退く。
「待て!」
リヴィアが真っ先に動く。
「逃げるな変態!」
エステルが続く。
「回収します」
セラフィナも静かに追いかけた。
次の瞬間、部屋の中で追いかけっこが始まった。カナタはテーブルの周りをぐるりと回りながら必死に逃げ、三人はその後ろを本気の顔で追いかける。
「落ち着けって!」
「止まりなさい!」
「それを寄越してください」
高級ホテルの広い部屋の中を四人がぐるぐると走り回り、騒がしい声がいつまでも響き続けていた。
第一章はここで終了です。
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改めて、ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。




