自称普通の高校生は混乱した
巨大なプレッシャー。
そいつは北の森から現れた。
俺は身体強化を視力に使い、それの姿を確認した。
魔物の大型化が著しい中、そいつは一層小さく見えた。
しかし、他の大型の魔物以上のプレッシャーを発し、そいつが最大にヤバい奴だと脳内で警報を響かせる。
あれはヤバイ
俺の感が、俺の本能が、俺の全てがそう告げる。
勝てない。殺される。死ぬ。悟ってしまう。諦めてしまう。
そいつはゆっくりとこちらに向かって歩きだす。
見た目は普通の人間に見える。
しかし、頭部には羊の角を持ち、背後にはコウモリのような羽があり、腰元からは尻尾が見えている。
俺はそいつの正体が何なのか、直感で悟ってしまった。
「あ、悪魔……」
それは無意識に俺の口から漏れた声だったが、その言葉が漏れた途端にそいつと目が合った。
!!
マジか?この距離で聞こえたのか……?
俺はより視力に力を入れてそいつを視察する。身体の震えが止まらない。
全体的に黒っぽく、髪の毛、瞳は艶のない黒。
顔は非常に整っていて、人形のようで、そこに生気が感じられない。
体型は大きくは無いが小さくもない。しかし、胸部に巨大な袋を持ち、破壊力は抜群と思われる。
少々前かがみになりながらも俺は視察を続ける。少しでも情報を入手しなくてはいけない。
わりかしピッチリとした服装を好むのか、肌色の部分の多い服を着ている。
スラリと細い手足。一歩一歩と歩を進める度にコチラからは見ることが出来ないであろう尻が男を誘うように揺れているのだろう。
あ、何故かターンしてくれた。
結構、サービス精神旺盛なのかもしれない。
そんな若干、眼福な視察をしていてもそいつからのプレッシャーは消えない。
冷や汗が頬を伝う。
そいつの後ろからは魔物が出て来ないことを考えるに、そいつがラスボス的なアレなんだろう。
終わりが見えた事への安堵と共に、最後の最後でとんでもない難敵が現れた事への絶望を感じる。
しかし、悲観してばかりもいられない。たとえ勝てない敵が相手だとしてもやらなければいけない。
俺は覚悟を決めてそいつ目掛けて全力で魔法をぶっ放す。
俺の魔法は全く効かなかった。傷一つ付けることも敵わない。
しかし、そいつの着ていた服は別だった。
魔法が生み出した炎に焼かれて、そいつは今、全裸だ。マッパだ。すっぽんぽんだ。GJだ俺。
そいつは今、その場にしゃがみ込んで蹲っている。羞恥心はあるみたいだ。先程生気が感じられないと視察したが、間違いだったみたいで今すっごく顔を真赤にして泣きそうな顔をしている。なんだかその顔、すっごいそそる。
しかし、そいつが動けない今、他の魔物目掛けて魔法を打ち込むチャンスかも知れない。終わりが見えれば頑張れる。
残った気力を振り絞って俺は作業を再開させる。
あらかた魔物の多い場所に魔法を打ち込み終えた頃、そいつに視線を移せばいつの間にかそいつは服を着ていた。
!!
何故!いつの間に服を?どこから取り出したんだ?って、なんで佐藤さんがそいつの隣に居るの?
そんで、そいつの着ている服って佐藤さんの服だよね?で、なんで佐藤さんそんなに楽しそうにおしゃべりしているの?
しかも、そいつもなんか満更でもなさそうに佐藤さんとの会話を楽しんでいる風。
え?佐藤さん?なんで?今、魔物の大量発生中なの忘れているの?
それともそいつに魅了とかかけられちゃった系なの?
少々の……いや、すっごい混乱しながらも俺は身体強化を使い、佐藤さんの元へ向かった。




