自称普通の高校生は今回出番なし
今回三人称っぽくなりました。
現在、魔術師と呼ばれる人達は護符と呼ばれる物を使って魔術を発動する。
魔力操作やマナを感じることが出来なくても護符さえあれば、それを媒体に魔術が発動できる。
逆にいくら魔力操作に優れていても、マナを鋭敏に感じ取れたとしても護符がなければ魔術師は魔術を発動することが出来ない。
失われた技術とされる魔法だが、これは空気中にあるマナを身体に取り込んで魔力に変換して、変換した魔力を操作して自分の望みどおりに発動させる。護符のような媒体は必要ないが、マナ自体がなければ魔法を発動することは出来ない。
日本に居たときでさえ、ほんの僅かばかりのマナがあったので、ささやかな身体強であったり、極々初歩の魔法は使うことが出来た。
何が言いたいのかと言うと、多分俺はこの世界中の誰よりもマナを感じる事にかけては一番じゃないだろうかという事だ。
最近少しずつ濃くなってきたマナ。
それとは別に北の森の方角でマナが集まり始めている。
それは日に日に大きくなっていく。
空気を入れた風船のように少しずつ、少しずつ膨らんでいく。
限界ギリギリまで膨らんだ風船は、やがて破裂する。
そして、三日後、魔物の大発生が始まった。
パアァンッ!
決して大音量では無いものの、しかし誰の耳にも届くような音が響いた。
その音はこの世界中の至る所で鳴り響く。
誰もが身を震わせ、僅かばかりの抵抗と家の出入り口を塞ぎ、家具を移動させて魔物の侵入を防ごうとする。
しかし、北門にて待機していた者たちは音が聞こえるやいなや我先にと北の森目掛けて走り出す。
そこに作戦は無く、愚直なまでの特攻のみだ。
数の暴力の前には作戦なんて無意味だ。僅かに残り、伝えられた歴史がそれを証明している。
襲い来る魔物の津波に備えて、両足を踏みしめて耐えるのではなく、自ら突っ込んで津波に立ち向かう事を選択した者たち。
自分たちが大切にしている街が、人が少しでも魔物の大発生で傷つかないように。
「おぉぉぉぉぉぉ!」
誰の声だろうか。
自らを奮い立たせるべく大声を上げる者がいた。
そしてその声は他の者も奮い立たせ、声は大きくなっいく。
ドドドドドドド!
北の森から地響きが聞こえる。
数を数えるのも馬鹿らしくなるような黒い津波が見えてくる。
「魔術行くぞーっ!」
後方から魔術師達による攻撃だ。
焼け石に水だが、確実に数は減らせる。全体からすれば微々たるものだが魔物の大発生も無限ではない。
複合的な魔術効果で予想していた以上の魔物の数を減らすことに成功した。
「まだまだ行くぞーっ!」
魔術師達による複合的な魔術攻撃は二回、三回と続く。手元にある護符が無くなるまで、続けられる。
魔物の大発生の為に事前に準備していた護符は一人辺り数百枚。これ以上の護符を用意するには材料も時間も足りなかった。護符もタダではない。世界中至る所で魔物の大発生は起こっている。それでもこれだけの数が用意できたのはプッタ辺境伯の手腕のおかげだろう。少しでもその辺境伯へ報いるためにも魔術師もひたすら魔術を行使していく。
「俺、この魔物の大発生が終わったらプロポーズしようと思うんだ」
前線のど真ん中でフラグを構築するのは高ランク冒険者PT『大和魂』のリーダー佐藤 裕太。
彼は日本でサラリーマンをしていたが、五年前に突然異世界に転移してしまい、今まで必死に生きてきた。両親は他界、独身、彼女なしだったために日本へ戻ることにはさほど執着していなかったが、太郎の作る料理や、太郎に出してもらったお茶にふと故郷を思い出した。
彼はいわゆる特殊能力を持たない、ただの一般人だった。
しかし、あえて特殊能力と呼べるものがあるとすれば異世界人全員に言えることだが成長率だろう。
異世界人達はこの世界の者たちと比較すると成長幅が広く、強くなりやすい。
僅か五年で中年が冒険者ギルドの高ランクになれることでも察せるだろう。
その異世界からやって来た高ランク冒険者は幅広の剣を横薙ぎに振りながら更に言葉を続ける。
「だから、生き残って、プロポーズする相手を見つけるぞーっ!」
残念ながら知力補正は無いようだ。
勢いのままで書き続けてますが、もう少しで終わります。




