自称普通の高校生は大和魂の事を教えてもらった
お茶を飲み干した後、佐藤さんは今までの事を語ってくれた。
五年前、突如異世界に転移した佐藤 裕太は右も左も解らないなりに何とか冒険者になり日々を過ごしていた。
ある日、依頼の最中に大怪我を負い、危機一髪のところを同じ日本人の小林 洋一、渡辺 茂に助けられ、その後、彼らと行動をともにする。
それから一年が経った頃に同じように転移してきた鈴木 優子と偶然出会い、彼ら4人で冒険者PT『大和魂』を結成する。
その後、高橋 博とも合流した頃に非合法な人攫いからの強制奴隷の依頼を受けて襲撃、山本 愛を救出した。
その時に、小林 洋一は致命的な負傷を負い冒険者を引退後、商人になり、渡辺 茂は帰らぬ人となった。
人数が減ったもののそれでも地道に冒険者PTとして依頼をこなしながら活動を続ける中で、中村 愛美、伊藤 和夫と出会った。
幾度もの困難を、何度もの危機を乗り越えて冒険者PT『大和魂』はプッタの冒険者ギルドで信頼を得るとともに高ランクPTとしての信用を勝ち取ることが出来た。
思ってた以上に重たい話だった。
むしろ、パラリラとか言ってごめんなさい。
俺には前世の知識があるから普通の高校生でも何とかやってこれたけど、この人達はそのまんまの自分で勝負してきたんだから素直に尊敬するし、すごいと思う。
そして、この人達の活動にも有った『同郷の人間を無償で助ける』って理念も立派だと思う。そのことを素直に伝えたら、
「太郎くんもそちらの猫人族の娘さんを保護しているじゃないか」と普通に返された。
うん。なんだろう、微妙に違う。なんかいつの間にかコイツを引き取る流れになってたんだよ。いや、違うか、孤児で行く宛もない、犯罪行為をしなきゃ生きていけないってのに同情してしまったんだろう。かと言ってコイツと同じ境遇の奴ら全て引き取るのか?と聞かれたら答えはノーと言うだろう。
うん。たまたまだ。コイツだから引き取ったんだ。
「なんか、タロウさんから熱い視線を感じます」
ネコが急にモジモジしだした。うん。気のせいだ。洗濯して来い。
「それにしてもこの世界に来て僅か数ヶ月で自分の店まで持つなんて大したものだよ」
佐藤さんは笑顔で褒めてくれる。全然大したことない普通の高校生ですよ。たまたま前世の知識があったのでそれを有効活用しただけです。まぁ、流石にそんなことまでは言わないけど。
「ところで他のPTメンバーの人達は今は何を?」
俺の何気ない質問に「さぁ?」と笑顔で佐藤さん。何だよオッサンの無邪気な笑顔って。
というか、『大和魂』のメンバーは普段は完全自由行動らしく、仕事以外のプライベートは基本的に不干渉らしいのだ。
「まぁ、こうやって自分の拠点を作って、ちゃんと地に足を付けて生活が出来ているなら僕らがとやかく言うことはないね」
さてと、と椅子から立ち上がった佐藤さんは店の出口へ向かってあるき始める。帰るらしい。
「あ、あの、またよかったら遊びに来て下さい。他のメンバーさんにも宜しくお伝え下さい」
佐藤さんは振り返らずに片手を上げたまま店の扉をくぐり出ていった。
よくよく考えたら、佐藤さんは五年も元の世界、日本へと帰る方法を探していると言っていた。
これは普通に考えたら、帰るのは絶望的なんじゃないだろうか?
そんな悪い考えが頭に浮かんだが、無理やり追い出してから温くなったお茶を乱暴に飲み込んだ。
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