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自称普通の高校生は気が付いた

 オープン前日。

 やれることは全てやった。

 やれること自体少なかったんだが、テーブル席四つとカウンター席が四つの小じんまりとした食堂を眺める。


 今日は明日の本番に向けてのプレオープン。

 アーキンドゥさん、ご近所さんをお誘いした。


 この日のために毎日午後から各商店を回ったりと食材や調味料代わりに使えそうなものを探し回っていた。

 プッタの街は泣きたくなるほどに調味料が無かった。

 岩塩があったのだが、メチャクチャ高価で普段使いは出来ない程の高級品で、出汁を取れるような食材がチラホラ。

 しかも、出汁を取るって発想が無いらしく、保存食とか酒のツマミ程度の扱いだった。


 前途多難。それでも、錬金術をつかい、山で取れたきのこを魔法を使って無理やり乾燥させて干しきのこを作ったりと結構な力技を使ったと思う。

 多分、俺が居なかったら誰もこの味を再現できなかったんじゃないかと自画自賛するほどだ。



 しかし、そんな俺の努力が報われるだけの自信作が完成した。

 メニューは一種類。この世界で定番の定食。

 ステーキとスープとパン。


 どうやらこの世界ではこれが鉄板メニューみたいだ。


 お、そろそろ時間だな。

 俺の隣でガチガチに緊張しているネコの頭を一撫でしてから店の扉を開けてお客様を向かい入れる。



「いらっしゃいませ!タロウ亭へようこそ!」


 悲しいかな俺のネーミングセンス。

 普通の高校生にオシャレなネーミングを期待しちゃいけない。

 俺が思いつくオシャレなな名前がスターバッ○スとかミスター○ーナツなんだから察しろ。



 アーキンドゥさんはカウンター席へ、ご近所さんはテーブル席へ案内。

 うん。小奇麗にしたネコが途中セリフを噛みながらも懸命に誘導してくれた。


 さぁ、これからは俺の仕事だ。

 温めたフライパンに油を引き、肉をゆっくりと置く。


ジュワァァァァー!


 肉の焼ける香ばしい匂い、軽く塩コショウした肉から湧き出る肉汁がフライパンで更に温められて暴力的な匂いを客席にまで行き渡らせる。


ゴクッ!


 誰かが喉を鳴らす音がした。

 アーキンドゥさんかご近所さんか誰かが待ちきれないって事だろう。



 同時進行でスープの温めも完了している。

 パンはすでに焼けている。


 メニューは全て決まっているので、肉を焼いて、スープをよそって、パンを並べたら完成のスピードメニュー。

 一度に調理できるのは八人分、所要時間は約五分。料金は銅貨五枚、回転は悪くないと思う。

 後は俺の作った料理が受け入れられるかだ。



 ネコが出来上がったら直ぐに各テーブルへと配膳していく。

 そして肉を切り分け、口に運んでいくアーキンドゥさんやご近所さん達。



「うまいっ!」



 最初の一言は誰が言ったのだろうか、その一言に続いて至る所から「うまいっ!」「美味しい!」の声が聞こえてきた。

 その声を聞いた途端に俺の足から力が抜けて、その場に崩れてしまった。


「?!タロウさん!」


 ネコが慌てて駆け寄ってくるが、心底安心してしまった自分に気がついた。

 あぁ、そうか俺はすごく緊張していたんだな。

 別にこの食堂が成功する、しないは俺が普段の狩りを頑張ればいいだけの事であまり重要視してないつもりだったけど、俺の思う美味しいものがこの世界の人に受け入れられるかどうか不安に思っていたんだ。

 それが受け入れてもらえた事が嬉しかったし、今も美味しそうに俺の作った料理を食べてくれる人達の顔を見て満足している自分もいる。




 食堂を頑張って見るのも良いかもしれない。


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