前哨戦1
城門から街に出るための検査を受ける三人組がいた。
早朝、まだ日は昇っておらず、周囲は霧で覆われ視界はほとんどない。霧避けのマントも濡れてずしりと重くなっている。
詰所の兵士は規定通り対応していた。リストに代表者の名前を書き、用件と人数を記入した。
戦争とはほど遠いベルでは、比較的簡単な手続きで入出城ができる。
「ミサ様、お早いご出立で。こんな朝から‥‥‥ええと、市場ですか」
意外といった顔で詰所の兵士長は聞く。
騎士のミサは兵士長より階級が上のため、敬語を使われる。
最初は二人とも慣れなかったが、いまでは当たり前のことになっている。
「フィン殿の警護でな。市場のやり取りに興味があるらしい」
後ろに立つフィンがペコリと頭を下げた。
「あぁ、なるほど。騎士様が市場の見学など珍しいと思いましたが、学士様のご用事でしたか」
納得したという表情で、兵士長は頷く。そして、さらに後ろに目をやり、最後尾の人物を見る。
「フィン殿のおもりだ。私の私兵だがな。子供の相手は私にはちと荷が重い」
「わかりました」
兵士長は書かれたリストにサインし、水門を開けるように手で合図した。
ベルの城は湖上に建つ城のように、街から隔絶している。周囲を全て水で囲み、その幅は200メートル近い。
攻城兵器は取り付くことができず、弓さえまず城壁を越えられない。巨大な投石器などは設置できる場所がない。
城内には小規模ながら農場もあり、自給自足で長期戦も可能。
湖面に浮き上がる美しさで有名だが、それ以上に難攻不落で有名だった。
城門が開き、続いて水門が開く。
水門の前には小舟が待機しており、ミサたちが乗り込むのを待っていた。
小舟に揺られて対岸に着くと、大きな広場がある。
長方形に作られた広場は、四方が建物で区切られていた。
雨が降っても歩けるように、建物の一階部分は全て通路のスペースになっている。
正面には教会と裁判所、また少し離れた場所には、螺旋階段のついた高い見張り灯台が建っている。
「あそこ、上ってみたいなぁ」
フィンのおもりと言われた兵士はフードの中から、くぐもった声を出す。
「アリサ様、すぐに城に戻りたいならそうしてください」
「しないわよ、そんなこと」
膨れっ面のアリサを満足そうに見て、ミサは歩き出す。
それに慌ててフィンとアリサが続く。




