二
「夏家の娘に裁きを下せば、どうなるかわかっているだろう?」と子穂は子孝に確認した。
「夏家は近頃脱税しているとの噂がございました。父上なら既に尻尾を掴んでいるのではないですか」
子穂は身震いした。この少年は誰の息子なのか、と。恐ろしく鋭い観察眼を持っている。確かにその情報は入っている。全国に散る目嵩と耳嵩がその情報を入手していた。
だが、子孝には目嵩・耳嵩がいない。否、その存在を知るはずもないのだ。彼らは王ならびに皇太子それぞれに付くからだ。子孝は一介の皇子にすぎない。
「私は今まで夏家に嫌というほど縛られてきたのです。母を陥れることなど、造作もないことです。それよりも私は━━父上と狭良様の仲を引き裂いたのが許せない。私は父上と母上が保っていた氷上の関係を割った狭良様を恨んでおりました。しかし、一方で愛しあう関係にあったお二人に敬意を抱くようになっておりました。私は父上と狭良様を理想と感じていたのです。母上の監視に藻掻く私を救ってくださったのも、狭良様でした。せめてもの恩返しがしたいのです。
私は子珞を愛おしく思っています。そして、彼がこの国の王の器とも。母上を表舞台から消せば、実家の力は縮小されます。尚かつ、彼らの悪事を暴き、その罪に対し罰を与えれば、抵抗は出来ないはずだ。子珞が王となるためにはあの一族が邪魔なのですよ」
「…………」子穂は一度口を開き、何かを言いかけようとしたが、閉じた。そして、彼は長嘆息すると「いいだろう。罰は私が与えるが、それ以外は好きにしろ」と子孝に言った。子孝は表情を消したまま、深々と最敬礼をし、頭を垂れた。
「ありがとうございます。必ずや、彼らを捕えて参りましょう」




