第03章:【オレオレ詐欺】
第03章:
【オレオレ詐欺】
プルルルルルル……、プルルルルルル……。
ガチャ。
「もしもそ……?」
ついうっかりと、舌を噛んでしまったが、はにかむことなく恐れず、
電話に出られるメンタルが、この大人にはあります。
その男、Fhu-氏です。
さて、偶然、その間違い電話に出てしまったのが、
世にも不思議な運命の始まりでした。
『……もしもし、オレオレ、この世界を征服することを、
ここで宣言するぜ!』
「はァ……!?」
一般に云う、“オレオレ詐欺”ってヤツなら、
ご高齢者騙し目的のお小遣い詐欺かと覚え知っている
自信があったが……。
とんだバッタもんだ、何か違う気がして来ているのぜ!
「あの……、どこか、お電話のお掛け間違いではないでしょうか?」
『うるせぇ! 日本政府、てめェ、恐ろしくてビビってんだろ!
オレオレ、俺達が、みんなでまとまって協力して力合わせて
世界征服をして、お前も征服してやるって宣言してるんだよ!
恐れ入ったか!?』
「え、ええ~~っと……?」
そうだ、今気付いたけど……。 コレ……、イタズラ電話だ。
(そうと分かったら……。
だったら、からかってやろう、くくく……。)
「そうですか、わからいでかました。
コチラ、“世界国際統合会議公認日本政府”です。
そして、このFhu-氏、何を隠そう、そのトップ……、
“全世界国際協力総合事務局長総理大臣大統領日本支部代理”で御座いますが、
初対面で世界征服を企むとは、大変失礼。
この日本、いえ、地球に住む人類の代表として、
そのケンカ……、
“地球最大戦力兵器”を以って、挑み迎え撃つ用意があります。」
『な……、何だ……、と!?』
ガタガタ……。
ドカァ!
電話の向こうで、腰を抜かしたのか? 何だか、男が何やら叫んでいる。
あと、悲鳴とともに罵声……、
小さな騒ぎの合間、囁く音の様な声をよく聞けば、漏らしたらしい。
イエイっ!!
(ザマァwww)
ガチャ。
『……もしもし、
“全世界国際協力総合事務局長総理大臣大統領日本支部代理”殿?』
声が変わった。 電話の相手が代わったのだ。
『同志が失礼した。
如何せん、入って間も無い若者でしてな。
征服がどうとか、お騒がせするつもりはありませんでしたが、
心が急いでしまったのでしょうな……、
いつも通りのお代金の無心のつもりで御座いましたが、
先に“宣戦布告”してしまった。 ハハハ。』
「……はァ。」
落ち着いた声だ。
恐らく、高齢……、ってほどでなくても、かなりの年齢か。
本当に、大人の落ち着いた態度、そんな気がした。
『さて、単刀直入に申し伝えます。
我ら、『絶望楼』は、
貴方方の世界、地球上の全ての土地を征服してみせる組織。
故に、全ては我らがモノとします。 ええ、日本も。
何せ、我らは、貴方方地球人に分かり易い様に言うなら、
“宇宙から来た侵略者”です。』
(まあだ、イタズラ続けるか、このオッサン……。)
『どんな地球最大戦力兵器であろうと、防衛兵器であろうと、
コチラも、人類未知の宇宙侵略兵器の数々を以って挑み、
地球を我らが手にしてみせる用意がある。
……と、言ったら、降伏してくださいますか?
“全世界国際協力総合事務局長総理大臣大統領日本支部代理”殿?』
(……ンなら、もっとからかってやるぜ!)
『フフフ……、声も出ませんか?
“全世界国際協力総合事務局長総理大臣大統領日本支部代理”殿?
どうですか……?』
「うるせェっっ!
ズベコベベコベコ言ってないでっ、
かかってこいやああああああっっ!!!!」
ガチャンっっ!!
……以上が、今回の騒動の始まりだったのです。
***
「何ざ、間違い電話か? その割には、ハッスルしてたざ?」
「なあに、イタズラ電話をからかっただけさwww」
「くだらねえイタ電長引かせて、
飯時を遅らせんじゃねえよ、バカ!」
「イロハちゃん、お口チャック!
Fhu−さん、ご飯が冷めるから、とっとと着席。」
などなどと、言われてしまっては、そうせざるを得ない。
ここは、ファミリーの団欒の食卓。
今日は何故か、何か、珍しく、一応全員が揃ったwww
Fhu−氏と、7人の娘達です。
「あら、アメツさん、妹さんは?」
「ツチホなら、気を聞かせて(?)どこかへ遊びに行ったのね。
……水入らずの団欒とか言って、気を遣うことないのに。」
「別に……、入って来ても問題無いのにな。」
「まあまあ、皆さん、食事を始めましょう。
せっかくの機会ですから、ハイ。」
「タヰニが仕切り始めたざ。
飯作ったわっちのメンツは無視か? とっとと食えざ、皆の者。」
「「「はい、頂きます。」」」
ここで8人、手を合わせれば、何と壮観。
掌のシワを合わせれば、何とやらです。
ピ!
「食事中にテレビはご法度じゃないのか?」
<07時のニュースの時間です。>
「しょーがないざろ、誰ざ話したいことでもあるのざか?」
<今日は、○○で事件が……。>
「まあ……、あまり、話したいことがありませんわ。
例え、姉妹扱いで一緒にいましても……。」
<○○動物園で、動物の赤ちゃんが……。>
「ええ、実は、皆お互いにあまり仲良くないのです(モグモグ……)。」
<芸能界では……、映画が……。>
「緑のバババァ、ぶっちゃけやがったwww
『白バラ』、おかわりなwww」
<天気は……、低気圧が……。>
「バババァなんて、酷い……。 とと様ぁ……。 よよよ……。」
「コラ、イロハちゃん、口が悪い。 タヰニさん、ウソ泣き禁止。
ご飯中は静かに。 あと、アカハちゃん、おかわり。」
<スポーツ……。>
「呉越同舟は無理なのね。
そもそも1ヶ所に集めれば、○しあう仲だってのに、
Fhu-は頭がおかしいのね。」
<政治……。>
「どおしてそおお言うのおおおおおお!?
みんな、仲良し姉妹でしょおおお!?」
<…………。>
「「「…………。」」」
突然、プッツリ、静かになった。
カラーの液晶テレビも、何故か突然、『お待ちください』と表示されたまま
止まってしまった。
テレビも空気を読んだのだろうか?
(何故……、こちらを、じっと見る? 娘達よ……?)
遠い月が青い。 気のせいかも知れないが、何となく。
今まで騒がしかったテレビが止まって、時間も止まったと思った。
あ、再開した。
<今入ったニュースです!>
<国際的に、無数の『クエスト兵器』の存在をチラ付かせて、
様々な要求をするテロ組織:『絶望楼』が……。>
「『絶望楼』……? そういえば、ニュースで、たまに聞くね。」
「何やら、テロリスト集団だって話ざ。
厄介な兵器をたくさん持っているから、
国際組織も手が出せんとか、聞いたことあるざ。」
「あたしなら、即殺だけどね。
でも、ご依頼を受けてませんので、人間同士、○し合いなwww
タダ働きは、嫌だよ?」
「これだから、『黒バラ』は……。 私も、依頼を受けたら、戦うかもな。
しかし、連中が持っているという『クエスト兵器』がなあ……。
私なら、この家以外を守り切れんな。」
「正義の名の下に、私が斬り捨ててやりたいけど……。
あまりにも、遠いのね。
確か、大西洋の南の方だったか、
『時間塔』を根城にしているのね。」
「ああ、あの別名:『時の塔』のテロリスト達ですか。
あれには、困りましたね……。
全く、『クエスト社会』の災害っていうのも……。」
「皆、よく知っているね……?」
さすが、ウチの愛娘達だ!
会社辞めて、ブラついている無職とは全く違う、全く……。
ホント……、無職とは……。
「そもそも、この世界、この地球上の時間が全部“5月”で止まったの、
あの『時間塔』と、『絶望楼』のせいだよ?
Fhu−さん、覚えていないの??」
***
――ある、5月の頃だ。
この、『クエスト社会』と揶揄される世界的災害の脅威に、人々が怯える時代。
南大西洋の大海原の真ん中、島も何も無い海の上に、
『時間塔』という未知の建造物の姿の、
『奇妙な遺物』が発見された。
“この遺跡を制したものこそが、
世界を変革し支配し得る地位を持つだろう。”
……と云う、予言が同時期に降された。
――今では遠い、あの5月。
その場所でどんな『試練』が与えられ、どんな人が、
どんな『クエスト』をクリアし、どんな恩恵が与えられたのか、
誰も知らない。
ただ、あの5月から……、約2年弱、ずっと、その季節のまま。
5月のまま、夏も訪れず、人々の生活はそのまま、時は止まった。
――そして、今に至っても、ソレは変わっていない。
「ここへ来て、ついに、ウチの国にまで、牙を剥いたか。
……おっし、ヤっかwww」
嬉々として、『黒バラ』のイロハ。
面白がって、狩りを考えている。 即ち、悪を刈り取る遊びだ。
「あの悪辣な連中は、意外と結構、慎重派の様ざったが、
何かあったのかのう……?」
言葉にも表れている様に、同じく慎重な考えを持って迎えた、
『白バラ』のアカハ。
確かに、連中、テロリストどもは、強力な兵器を多数所持し、
誰の攻撃をも喜んでいなし返り討ちにする勢いがあった。
とはいえ、特にこの国については、何故かずっと慎重で、
一定の金額を支払い続けていさえすれば、直接的な攻撃や
露骨な交渉をすることも無かったのに……?
「速報だから、情報が錯綜しているのね。」
慎重といえば、日頃、命の削り合いとも呼べるバトルに
その小さな身を投じている、『赤バラ』のアメツ。
妖怪相手で圧勝絶対勝利を収め続けている彼女は、
世間の井戸端話をそのまま持って電波に乗せる放送の在り方に、
慎重な目で反応している。
「情報は命だ。
どうなろうと、火の粉が飛んで来るのなら、私は立ち向かうが。」
同じく、戦士気質の意見で反応する、『黄バラ』のトリナ。
拳1つで、幾度と無く世界の危機に立ち向かった、英雄でもある。
ただ、本質が口下手でアガリ症のため、変な誤解を受けているが。
「どうでも良いですわ。 コチラの迷惑が無いのでしたら。
どうせ、皆さん、何かしらの手段で、彼らなど、
簡単に壊滅させられるのですわ!
今更、何やら兵器で脅されても、平気ですの。」
「皆、兵器は平気と? そりゃあ、豪胆だねえ。」
ゴロニャン♪
さりげなく、立ち上がって、同時にわざと、
父親気取りのFhu-氏の背中に抱き着いてスリスリする。
『青バラ』のアイウ、甘えん坊な愛らしい愛娘。
「とと様が、嫌がっておいでです。 それに、ご飯中ですよ?」
マナー違反の姉妹を咎める、メガネの『緑バラ』のタヰニ。
彼女だけではなく、他の姉妹からも同じ意見で、
半ば強制的に、アンチマナーは正されたことを確かめて。
「ケンカしない! ……あ、新しいニュースだって!」
指を差したのは、『紫バラ』のヒカゲ。
テレビに映されたのは、お偉い議員さんのコメント。
<バカなっ!>
<全く、身に覚えがありません!>
<“全世界国際協力総合事務局長総理大臣大統領日本支部代理”、
そんな人物、政府にはおりません!>
!?
“全世界国際協力総合事務局長総理大臣大統領日本支部代理”。
どうやら、そう名乗った謎の人物が、例のテロリストとトラブルを起こし、
この国が一方的な宣戦布告を受けるに至った理由なのだそうです。
(え~っと……、聞いたことあるよな~♪)
<第04章に続く>




