第02章:【そうして、彼は、家族に打ち明けられないのであった】
第02章:
【そうして、彼は、家族に打ち明けられないのであった】
「はわわァっ! ……という夢を見ました。 昨夜ね……。」
朝の爽やかな光の中、ハチャメチャなアクロバティックな寝相で
布団を吹っ飛ばして、腹を冷やして起きた男が、彼であった。
また、髪も逆立った寝ぼけ眼で、宛ての無い宙空で手探りして、
メガネを探し当てれば、皆も知るだろう。
「Fhu−氏とは、俺のことに御座います。」
ここには1人しかいないというに。
虚言を吐く男だからこそ、知りもしない見もしない、
どこぞの誰かギャラリーに自己紹介する。
要するに、不思議な男であるのは、見ての通り。
「如何せん……、昨今の悩みが身に纏わり付いて、
晴れない日々を送っております次第……。」
だから、布団が吹っ飛んだのだ。
……と、言い訳しても仕方が無いのだが、
そもそも、彼の寝相は、幼少の頃から変わっていない。
(次は、ストーブがすっ飛ぶのか??)
良く捉えるなら、“自由”。 親父ギャグは許せ。
野良猫上がりの子猫が、スプレー行為を止められないくらい、
自由なのだ、尻を叩いても治りゃあしない。
クンクン……、あの猫、またどこかでやったな、臭ェ!
「だが、ハハ……、ついに、処刑される夢を見るとは。
いやはや……、よくできたことではないか。」
布団の上。 明るくなったその部屋で座って。
泣きながら立ち上がるよりは、笑う方が良い。
***
昨今の悩み、その1つ目は、
『トリマンコンテスト in Tokyo』のことである。
何故か先日できたヘンテコな外国人の友人(?)達と、
気軽なレクリエーションのつもりで、慣れないスポーツイベントに
参加したつもりであった。
……が、実は、何だかよく分からんが、いろいろ“ガチ”な、
世界的にも権威あるスゴい大会に紛れてしまったらしい。
「……そして、ちゃっかり、優勝を攫ってしまったのが、俺。
この、Fhu−氏であったという話だ。」
優勝を攫ってしまったので、世紀の救世主だかヒーローだか、
皆に期待されるモノになってしまったそうです。
ええ、正体がバレたら、マスコミやら何やらの質問責めという名の
餌食(?)になるみたいで。
ウチの愛娘達が、裏(意味深?)でいろいろやってくれたそうで、
何とか……、日常を不自由無く暮らしております。
ただ……、大神様(女神様)方から授かった“4つの魔法”……、
これらのおかげで生き残れたのもあって、感謝なのですが。
ピカピカっ!
(うわあっ!?)
そうそう、結局、本業のお仕事の際に、その……、何というか……。
“特定のモノの名称を口にすると手のひらが(激しく!)光る”、
そんな魔法が見つかってしまいまして……。
いろいろあって、悶着を幾つか話し合った結果……、
この度、会社を辞めさせられたFhu-氏、乙www
そう、そして、2つ目は、Fhu-氏失業したの件と……?
「まあ、実際のところ、人間社会なんていろいろあるもので、
そのことだけではないのが本当ですが。
昨今の悩み、その中でも大きいソレは……。
結果的に“会社を辞めたこと”を、愛娘達に話せないことです。」
今、無職。 ソレが、俺。 父親の面目無し。 がはは。
「けれど。 またと無い機会だし……。
自暴自棄になって、“悪”にでもなるか。」
ふと、思い立って、決心しました。 よっし。
***
「気分は、処刑される悪役令嬢!」
変なことを口にしても、誰も聞いてやしないぜ!
愛娘達は、勤勉で善い子達ばかりなので、
もう出勤というか出発しています。
1人は、学校へ。 1人はアルバイト先へ……。
(あとは……、分からん。)
きっと、人のため、世のためになる、
何か素晴らしいことをしているに違いはありません。
そんな素敵な我が子を思えば、この父親は……。
はて、何をすべきだろうか……、父親として?
(ヘアスタイルを、モヒカンにすることから始める?)
「よ、よぉ~し、こうなったら、
Fhu-氏、“世界の脅威”になっちゃってみるよ!」
そうだ!
7人の娘達を裏切り、悪の限りを尽くして、この地球の脅威に
なっちゃったりしてみちゃったり!
まずは、他にアイデンティティー確保の方法の分からない、且つ、
いろいろの習慣も身に付いていない頭の弱い人間どもの
ロクデナシの支配欲とだらしない自己承認欲求の散々な結果たる、
“投げ捨てゴミの不法投棄を無かったこと”にする!
よしっ、『地域清掃ゴミ拾い侵略』から、始めるぞっ!
「『褒められたけりゃ、地域清掃でもやってな!』
いつか、マンガ家を目指す少年に言われた気がする言葉だ。
しかし、この男めが、地域清掃を1人でやったら……、
くくく……、お前ら、同情したくなるだろ!」
自暴自棄な変な暴走は肯定されたが、モヒカンは止めた。
何故なら、歓喜に靴を履き忘れ裸足で駆けて美容室か床屋に行く前に、
マトモな娘らに見つかって止められたから。
新しい靴と靴下を買わされて、財布に美容院用の代金は無い。
「Fhu−さん、またバカやってるよ……。」
「しょーがない、手伝うざ。 1人だと、大変ざろし。」
「コイツ、これで“悪”をやってると思ってるって?
……頭、おかしいだろwww あたしも、手ェ、貸してやるよwww」
彼女らには、しばらく前のGWから
長い有給休暇を貰っていると説明してある。
とはいえ……、そろそろ誤魔化し切れなくなって来ていて……。
いつか、真実を打ち明けねばならない。
退職金ももう受け取っちゃっているし……。
「長い休暇に、ボランティアの掃除なんて、ご苦労だねえ。」
「いやいや、受験生の君に、無理させてゴメンね?
後で、ジュースを奢ります。」
「あたしさ、ジュースより、ケーキ! イチゴのケーキ奢れや、Fhu−?」
「少しは遠慮しろざ!」
朝の小用を終えたらしい3人の娘に囲まれて。
他の4人には内緒だと言い含めてから、買ったばかりの靴のまま、
新鮮な気持ちで喫茶店に入る。
そして、素晴らしい職人芸のケーキをご馳走する。
そんな、1人の男の幸福な日常がある。
今日も。
そうして、彼は、家族に打ち明けられないのであった。
***
「Fhu−さん、私達に隠している。」
「ああ? そりゃあ、分からんワケ無いだろwww」
「仕事を辞めたくらい、何でも無いのぞ。 気にしよって。」
「ええっ!?
お父様、お仕事を辞められたのですか
(わざとらしく、オーバーに)!?」
「別に。 どうでも良いな(知ってる)。」
「世の中は、金とコネなのね。
男なら、自分でどうにかするのね(意見変わらず)。」
「まあまあ、良いじゃありませんか。 とと様のご判断です。」
男の留守の時間、アフタヌーンティーの席で。
7人、集まれば、そんな意見。
「でも、かなり気にしているみたいだから、
みんな、Fhu−さんに無理させちゃダメだよ?
特に、イロハちゃん、からかって茶化さないでよ??」
「分かっているさ。 男の子のプライドってヤツだ。
大方、安くて、ヘニャ○ンより役立たずだが、重要なことだ。
ま、理解できない女は、腐ったじゃがいもにも劣る。」
「まあ、言葉は悪いが、イロハの言葉通りざ。
皆、このことには、触れるな?
良い女は、黙って、そっと支えてやると株が上がるのぞ。」
メイド喫茶の、売れっ子アルバイトの顔もある『白バラ』が言うと、
説得力がある。
7人、『魔女』達の意見は、そうして纏まった。
<第03章に続く>




