序章:【ある男から見た風景】
序章:
【ある男から見た風景】
『クエスト社会』とかいう、未曽有のカオス災害。
一般にはそう認識されていると言うに易いが、
実際にその目で目の当たりにしていなかったら、誰も信じられなかっただろう。
今でも、一部はそうさ。
未だに、年配の世代は、夢を見ているだけなんだって、
そう言葉を繰り返しては、メンタルクリニックに足繁く通っている。
「俺だって、正気を手放して、
夢から覚めれば夢だったとそう言いたい。」
……何度、そんな無駄口を繰り返しただろう。
見慣れて面白くもない天井、電灯、一人暮らしの部屋。
澱んだ空気の独身男の部屋、……臭いの議論はよそう。
仰ぎ見てボオっとして、何も変わりやしない。
「……テレビは、飽きずに報道している。」
彼らは、混乱している。
世界的に有名なテロリスト……、確か、世界中、地球上全ての時間、
いや、“季節”を止めてしまった、ヤバい連中。
だから、ここ2年くらい、“5月手前くらいの時期”、
初夏で、止まっているのだ。
「チっ、……誰だ? あんな連中に、ケンカを売ったのは。」
ギャアギャア……。
不快な金切り声だ。
そのどこのバカとも知れない頭の狂った元凶を責める、
八つ当たりのデモがまたどこかで行進している。
ホント……、平穏を返してくれ……、何もかもを。
ふざけんな、俺の人生は、一体、どうなっているんだ!
(しかし……、どうしてか。)
ドクン……、ドクン……。
(この心の奥底で、“ナニカ”を待っている。)
待つ。 ……何を?
(心躍る、何か愉快爽快で、痛快でスッキリする、ナニカ。)
『トリマン』、時代の救世主を自称するヒーローモドキどもが
跋扈するのが常日頃自然な風景となった現在。
彼らによる解決を今か今かと待ち望みながら、人々は、
彼らテロリストの横暴がずっと終わらない事実に無責任にも
溜め息を吐いている、停滞。
「もはや、見上げた空に、ヤツらの大量破壊兵器が見える。
確か、……ああ、『惑星破壊爆弾』、……か。」
地球最後の日。
――雲を圧し潰し散らして、落下し赤い熱を帯びる超重量巨大物体。
――宇宙より去来したソレを、止められる術を人類は持たない。
――ゆっくりと、威圧的に終了のカウントダウンを進めている。
ソレを拝むチャンスは、人類史上、ソレを望む人間にとって
垂涎ものだろう。
まさに、今日、悲劇的なソレを迎えられた、
そんな恵まれた世代が俺なのかも知れない。
プルプル……。
「こんな歳にもなって、震える……? 冗談じゃない。」
しかし、このまま1人で人生を終えるのなら、まあ良いじゃないか。
どうせ、これから良いことが起きて喜ぶ年齢じゃない。
別に、悪くない。 諦めている。
――空が落ちてくる。
なるべくしてなった。 どこぞのバカのせいで。
このまま地上に落下したなら。
俺は、人類の歴史の終焉を目撃するのだろう。
「勝手にしろ。 ……でも、見ていてやるか。 最期くらい。」
テレビで騒いでいる、誰もが罵声と呪詛を放っている。
映し出された写真、あの邪悪な男を知っている。
爆弾を落としたとんでもないヤツだ。
恨むぜ……。
――この物語は、
こんなクソったれた世界の最後に立ち向かった、
頭の狂った元凶たる愚かな男の話である。
<第01章に続く>




