第01章:【黒豚野郎の処刑シーン】
第01章:
【黒豚野郎の処刑シーン】
(喚き立てる声が、乱雑な罵倒が、薄ら寒い嘲笑が……、
どうにも耳に入らない。)
ザっ、ザっ……。
屈強な兵士、彼らの顔は知らない。
全く知らない顔ばかりがその地には満ちて、その誰もが男の処刑を望む。
今でこそ暗黒の空だが、男が○んだ翌日から、青く澄み渡ると人々は
信じている。
そんな絶望の道を、1歩1歩、力無く進む足の主は、ふと顔を上げて気付く。
(蔑んだ顔でコチラを見る王子、軽蔑の眼差しのそのお后……、
そうか、良かった……、彼らは結ばれたのだ。)
(あるいは、王国軍団長の男、魔法宰相に抜擢されたばかりの青年、
そして……、賢者と囃されたあの男……。
そのどれもが、血の憎悪の色を濃くして煮詰めた様な表情を浮かべ、
もし誰かの許可が1つもあれば、即刻、首を刎ねに来そうだ。)
(くくく……、ソレが、逆に小気味好い。)
男は、魔王か、それとも、邪悪な呪術師か、“悪い魔法使い”か。
そのどれでもあっても、どれでもないが、心当たりが無いワケでもない。
(どれ、ここで物語を閉じようか。)
薄気味悪い表情を浮かべているのだと、自覚している。
淀んだ黒い雲の下、渦巻く恨みと憎しみと邪悪を排斥することへの
一種の陶酔感に似た正義感か、彼らの裁きはすでに下ったのだ。
『処刑』。
そう。 コレが、黒豚野郎の処刑シーン。
肌が白いってワケでもないので、男にはソレがお似合い。
“断頭台”。
一体、これまでどれだけの血を吸って来たのだろう?
その鋭い斜線一直線を描いた刃の下、彼は目を閉じる。
(はて……、どうしてこうなったのであろうか……?)
今更、命が惜しいとは思わぬ。 しかし、少しだけ……。
そう、少しだけ、反芻する時間が惜しくて叶わぬ。
銀の正義は解き放たれた。
ザクっ!
<時間通り、刑は処されたのであった。>
<第02章に続く>




