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第04章:【終焉をなぞる指(ヴァイオレーター)】

第04章:

【終焉をなぞるヴァイオレーター



 『今、ここで、“俺”にしかできないこと』。


 『クソ物件・オヴ・ザ・ワールド』。

 奇を衒ったそのデザインは、世界一クソダサい。

 まるで、センスの無い、人気番組:○ASUKEの新ステージ。

 そんな、今やヘンテコアスレチックの悪の巣窟に、足を踏み入れた

報道グループがいた。


「ぜ、『絶望楼』の皆さん、こんにちは……。」


 最初の一言はシンプル。 当然の様に、日本語でご挨拶をした。

 しかし、返答の無い悪党どもに、彼らは次におべっかを使った。

 言葉次第で何をするのか分からない極悪どもの動きは読めない、

だから、マヌケを世界に晒してまでも、小さな勇気を以って、

少しでも情報を引き出そうと試みたのだ、……その命を懸けて。


 パチパチパチ……。


 あの宣戦布告の報道から数日。

 今や、すっかり改造されて、元の面影も残さない『時間塔クロックタワー』なる遺跡の中。

 そこに巣食う悪党どもが、世界初でカメラに捉えられた。

 いや、まだだ……、薄暗闇の中、カメラは朧げに、ノイズの走った

画像の荒い映像を撮影しているが、声だけは鮮明にハッキリと録画されていた。


「二度と外に出られない身の上で、勇気がありますね。」


 パチパチパチ……。


 白髪の初老の男、ついに世界初公開の顔、組織ボスが拍手をしながら

彼らに労いの言葉を掛ける。

 報道グループの潜入自体は、確かに世界初ではなかった。

 彼らを甘く見た無防備な連中が、初盤、1年少し前に、

露骨に処刑された事件があってからは、腫れ物に触れる様に、

時折、小さく、ニュースに触れる程度であった。


「ご存じの通り、我々、『絶望楼』は、

 “世界を破壊する”兵器を所持しています。」


 こんなこと、初めて言うワケでもなかった。

 ただ、初めて、彼らの逆鱗に触れて怒りを露わにしているのだ。

 全世界に告げるための報道を前にして。


「それらの兵器の行使をしても良かったのですが……。

 せっかくの世界征服を遂行しても、その地が焦土では、

 全く面白くないでしょう。

 世界征服の旨味は、“支配”してこそ。

 だから、各国の代表には、我々への屈伏の証として、

 一定の、払えなくない金額を収めてくれさえいれば、

 許してあげていたのです。 ……今までは。」


 今回。

 世界中の国々の中でも、最も穏便な対応を好み、最も従順であった、

極東のJAPANという国が……、ワケ分からんことをした。


「“全世界国際協力総合事務局長総理大臣大統領日本支部代理”?

 こんな大仰な名前があるのに、イタズラで済むワケないだろ?

 彼らは、我が『絶望楼』をナメている。

 だから、世界の国々に先駆けて、思い知らせる。」


 良い機会だ。

 我が『絶望楼』には、現在、9つの『古代兵器』……、

中には宇宙由来の『大量破壊兵器』も存在する。

 そうだ、幾百の『クエスト』をクリアすることで、

同時に、幾千の戦闘員の命の犠牲を許したことで、ここに入手した、

世界をどうともできる最強の兵器達のことだ。

 そうとも、丁度、使用感を確かめたくもあった。


「『クエスト社会』という災害の中。

 最も多くの『古代兵器』を手に入れたのは、我が組織だろう。

 我が手にある『古代兵器』と『神聖神器』他、

 それらを自在にできる我々が与えられる“世界の終焉”の

 シナリオはコレだっ!!」



≪『終焉をなぞるヴァイオレーター』に準えられた、9つの『古代兵器』≫


 第1の終焉エンド:『時の流れの終焉』。

 古代遺跡:『時の塔』に存在する、古代兵器:『偉大なる時計(グランド・クロック)』による、

世界中全ての時の支配とその流れの停止。

 故に、ご存じの通り、世界全ては“5月”のまま時が止まった。


 第2の終焉:『夢の終焉』。

 古代兵器:『永遠の太陽(オール・シャイン)』による、

夜と闇の消失と、それに伴う休眠と夢見の消失。

 これが使用されれば……、

全ての人類は、想像と思考と抵抗すらをも失うことになるだろう。


 第3の終焉:『関係性の終焉』。

 古代兵器:『別れの刺激(サイナ・スキャリオン)』による、

魔法性伝染病の蔓延とそれに伴う孤立化。

 これが使用されれば……、

救援すらも仇となる蔓延の拡大にて、人類は孤独を戦うことを

余儀無くされ、深い悲しみと苦痛を味わうことだろう。


 第4の終焉:『真偽の終焉』。

 神聖法具:『真理の審判者(オーセンティック)』。

 これを破壊すれば、忽ち、人類が築き上げた道徳や合理性と

文明が崩壊、狂気に走り獣と化す者も少なくないだろう。


 第5の終焉:『物理法則の終焉』。

 古代兵器:『主客転倒(アプサイダウン)』による、反転。

 これが使用されれば……、

天は地となり、火は水となり、全ての物理法則は狂気的に

同時に執拗的に反対の性質を示し絶望的な混乱を与えることだろう。


 第6の終焉:『生存の終焉』。

 古代兵器:『世持竈食(ヨモツヘグイ)』による、滅亡。

 これが使用されれば……、

その名から察することができる通りの“恐ろしいこと”が

実現し目の当たりにすることだろう。


 第7の終焉:『景色の終焉』。

 古代兵器:『虚無の洞穴(ナッシングネス)』による、喪失。

 これが使用されれば……、

敵対者は一方的に“眼球”という器官を通した、

視覚という概念そのものが抹消され、永遠の闇に絶望のまま

彷徨うであろう。


 第8の終焉:『自由の終焉』。

 宇宙兵器:『夢現の巨人(ドリーミング・ナウ)』による、強制支配の時代の幕開け。

 原理不明の超技術により、生けとし生けるモノ全てが

その脳髄ごと支配を受けることになるだろう。


 第9の終焉:『形の終焉』。

 古代兵器:『混沌(ケイオス)』による、

物体形状規則の消失と混濁、それに伴うありとあらゆる存在の

混雑化と意味と必要性の消失。

 これが使用されれば……、

世界なる存在ごと、全ては無に帰したことを知ることも許されない。



「……他にも、我らが『クエスト』をクリアしたことで

 またクリアしたからこそ手に入れた、役には立つもの、

 役にも立たないモノも様々存在するが。

 まあ、もしかしたら掘り出し物かも知れないしで、

 どれも手放さず保有しているにはしているのだ。」


 つまり、脅威は先に示したモノだけじゃない。

 だからこそ、誰も手を出せないのだ。

 最も恐ろしい、この組織の秘密こそは、“予測不能”である

その火薬庫みたいな脅威を内包していること。


「ボス、そろそろこの辺にしておいては。

 話が長くては、お客人も飽きてしまいますよ。」


「くくく……、そうだな。

 そもそも、我らの組織について喋り過ぎるのもどうか。

 いや、何、久しぶりの勇気ある客人であったのでな。

 ……特別に紹介しよう。 世界に先駆けて。

 今、わが組織の期待の新人にして、ここ2週間という短期間で、

 私の信頼を勝ち取り駆け上がれば、今や、No.2の男だ。

 誰だと思う?」


 かつて、新しい英雄として迎えられたことがある。

 そして、圧倒的な力を見せ、認められた謎の男は、今。

 この悪の組織のNo.2の男として、全世界に報道された。

 全世界に、稲妻が走る、戦慄する。


「世界よ、さらなる絶望を目撃するが良い。

 『時代の救世主トリマン』の王ともなると期待された、

 『トリマンコンテスト in Tokyo』の優勝者。

 彼が、この『絶望楼』のNo.2だ。

 紹介しよう、“トリマン・フー”、ご記憶願おう。」


 そこに、トリマン・フー……、

 いや、かつて、Fhu-氏と自称しまた呼ばれていた男がそこに立っていた。



***



 その男は、全く恐ろしい男だった。


「何でっっ、アイツっ、パパンが『絶望楼』にいるんだよ!?

 しかも、行方不明だった2週間の間に何があった??

 何で、組織No.2にまで上り詰めているんだよ!!」


 イライラ! ビキビキィ! グツグツ……!


「イロハちゃん、まずは、頭を冷やして!

 お怒りはご尤もだけど……、ツッコミ切れんわ!

 どうしてこうなった!?」


 そう、その男は、全く恐ろしい男だった。

 何せ、お茶の間のちゃぶ台の周囲に座った、

 7人姉妹の感情を激しく揺るがし動かしたのだ。


「とりあえず、アイウ、お前、泣くなざ。

 困ったのう……、コイツ、泣くのを止めんざ。」


「まあ……、どうしてこうなったのやら。

 この尼僧も、とと様の行方不明については、この2週間、

 お仕事もままならなかったのは事実で、

 ……何という運命の悪戯でしょうか、困惑しています。」


「警察にも協力をお願いしても、全く見つからなかったFhu-が、

 どうしてここでテレビに映っているのよ?

 何て皮肉、アメツの表情の変貌がぁ……、最高なのよ♪」


「ツチホ、アンタ、殴るのね!(ポカっ!)

 一体、どういうことなのね!?」


「うぅ……、グスン、お父様……、どうして……。」


 東京都のとある市街地、一軒家の古めかしい家の中で。

 とある一家の娘達は、行方不明中だった父親の無事を確かめたが、

しかし、彼は悪の組織の幹部になっていた!?

 どういうこと!?


「アイツ、失職して転職した先が、『絶望楼』!?

 労働組合入っているのか? それより、幹部?

 オイオイオイオイ……、なあ、どゆこと??」


「知らんがな。 思ってたよりも、天職だったの??

 No.2って、ホント??

 どうして、2週間でそこまで出世できたし……。

 『絶望楼』は、人数がいないのかなあ……。」


「人数がいないなら、世界を脅してカネを取るなど止めて、

 カタギの職に就けざ。

 ……いや、ンなワケなかろう。

 あの『絶望楼』の構成員は、2,000を超えているとも

 言われておって……。」


「20,000じゃないのか? そう聞いたことがあるが。」


「年々大きくなっているのよ~!

 真っ当でない組織だけど、やっぱり世界を脅せるくらいだし、

 強いって認識されているから、薄っぺらい自尊心ばかりの

 バカどもが入団するのよ~!」


「ツチホは、物知りなのね。

 でも、そんなことより、私、ハラワタ煮え繰り返っているのね。

 ……あのバカ、ふざけんななのね!

 2週間も行方不明になっていたと思ったら、

 何で、テロリストなんかに、しかも幹部でNo.2なんかに!?

 ふざけんななのね! 意味不明なのね! ブチ○すのね!

 ツチホ、行くのね!!」


「合点、承知なのよ~♪

 ハァハァ……、アメツの新たな活躍の物語の、新しいページが、

 今、開かれるのよ~!」


 そそくさ。

 誰が止める間も無く、赤の姉妹の双子は家を出た。


「止めなくて良かったの、あの2人……。」


「尖ったナイフ、いや、剥き出しの日本刀みたいなヤツだなwww

 なあに、先走った英雄気質さんは、面白い物語を刻んでくれるさ。

 さあて、アイツらは即決したけど、お前らはどうするの?

 ……ああ、『黄バラ』も出立した? 早いなwww

 じゃあ、先走り女は、赤と黄色だけなのかな?」


「わっちは……、どうもできんな。

 普通に、わっちはアルバイトに精を出すぞ。」


「薄情な女www 『白バラ』は、言葉の通り頑張りなwww

 んで、『緑バラ』は?」


「私は、とりあえず、とと様の無事が確かめられましたので。

 法事のお手伝いを休んでしまいましたので、そろそろ戻ります。」


「お前も仕事優先ってか? じゃ、頑張りなwww

 メソメソアイウさんを胸に抱いて宥めている、ヒカゲさんは?」


「悪者幹部になったFhu-さんを見ての感想かい?

 アカハちゃんとタヰニさんとほぼ同じ。 どうせ、受験生にゃ、何もできんよ。

 だから、君を信じるよ、イロハちゃん? ……ナニカ、する気だろう?

 先走ったアメツちゃん、ツチホちゃん、トリナちゃんとは違う、

 別のアプローチで何かをするのだろう?」


「さあね。」


「グスン……、わたくし、お父様を信じていたのに……。

 どうして、悪に……??」


 青い姉妹は、涙のまま手にした小さなピンバッチを見下ろして。

 在りし日の、あの男性を“お父様”と認めたあの日を、

悲しみのまま思い出していた。



***



 その男は、全く恐ろしい男だった。


 いや、底も見えない、予想も付かない、まるでブラックボックス、

 あるいは、さながら、“危険な火薬庫(リスク・ストレージ)”。

 他にも、何やら聞くにも怖気する表現があろうが、これだけでも

十分過ぎるほどだ。

 そう、表現重ねてもお釣りが出るほどの、逸材であった。


「くくく、今思い出しても、肌が粟立つわ……。」


 白髪の初老の男:デスピア=デッドボルト総統。

 略して、DD総統と外部マスコミ・メディアに呼ばれ、

また恐れられている、泣く子も黙る悪党ボス。

 黒いマントを羽織った彼は、この『絶望楼』なる悪の組織を創設したが、

こんなヤツが入団したなんてニュース、

こんな衝撃的に肌が粟立つ事件は、今回が初めてであった。


「全く、まさか、入団して早々、実力者どもの100人斬り、

 No.2だった幹部の裏切りの企ての見破り、

 超難関クエストクリアの連続を経て電撃昇進、

 今の地位、新No.2を認められるまでになるなんてな。」


 参謀:ヒゲリカオン。

 そして、今尚もNo.3の座に落ち着いている男。

 この組織の保有する9つの『古代兵器』の内、2つを手に入れた

強力な功績があるが、そんな古株の彼すらも、

あの新入りがNo.2の座に落ち着いたことを認めている。


「そりゃあ……、今までずっと7つの『古代兵器』だったのを、

 さらに“2つ”も追加したんだ、しかも有用なものを。

 あのFhu-という男を認めざるを得んよ。

 その他にも、『古代兵器』になる可能性を秘めた遺物を、

 現在調査中だがそれらを、さらに5つも発掘して来た。

 No.3のお前には悪いが、ヤツが間違い無くNo.2だ。」


「ははは、俺は悪くないと思う。

 ……だってさ。 元・No.2?」


「……。」


 2人の男は、地下牢の前で笑った。

 代わりにNo.2となったFhu-という男が、如何に有能で、

如何に忠誠心があるか、篤と語った。

 下らない裏切りさえ企てなければ……、愚かな男を、心行くまで、

嘲笑して時に罵倒しながら楽しんだと云う。


 同時刻。


「六本木のバーから来ました。」


 単独で初めて挨拶に現れたその男は、またも世界を戦慄させた。

 かの改造された『時間塔』の中かららしいカメラ映像に、

『トリマン・コンテスト in TOKYO』優勝者にして、

新しく誕生した『時代の救世主(トリマン)』が立ったからだ。


「再度の登場となり、恐縮です。」


(先の潜入スクープ映像は……、本当だったんだ。)


 『戻らずの報道事件』で有名な、潜入インタヴューした一行は、

彼らの手の内に捕らわれた。

 しかし、その事件で、世界に与えた衝撃は、

彼らが捕らわれた事実よりももっと大きいものがあった。


(嘘だ……、ろ……!?)


 これまで幾人もの『トリマン』が悪の道に堕ちた。

 その度に、別の、同じ『トリマン』が彼らを退治する。

 英雄達が堕ちた英雄を○す……、人の心を抉る鬱展開がまた、

演じられるのであろうか?

 非現実の映画ならまだしも、またそれが現実になるのであろうか?


「さて、六本木のバーなど行ったこともありませんがね、皆さん。

 大事なことを伝えに来ました、悪の華です。」



≪『終焉をなぞるヴァイオレーター』に準えられた、9つの『古代兵器』≫


 第1の終焉エンド:『時の流れの終焉』。

 古代遺跡:『時の塔』に存在する、古代兵器:『偉大なる時計(グランド・クロック)』による、

世界中全ての時の支配とその流れの停止。

 故に、ご存じの通り、世界全ては“5月”のまま時が止まった。


 第2の終焉:『夢の終焉』。

 古代兵器:『永遠の太陽(オール・シャイン)』による、

夜と闇の消失と、それに伴う休眠と夢見の消失。

 これが使用されれば……、

全ての人類は、想像と思考と抵抗すらをも失うことになるだろう。


 第3の終焉:『関係性の終焉』。

 古代兵器:『別れの刺激(サイナ・スキャリオン)』による、

魔法性伝染病の蔓延とそれに伴う孤立化。

 これが使用されれば……、

救援すらも仇となる蔓延の拡大にて、人類は孤独を戦うことを

余儀無くされ、深い悲しみと苦痛を味わうことだろう。


 第4の終焉:『真偽の終焉』。

 神聖法具:『真理の審判者(オーセンティック)』。

 これを破壊すれば、忽ち、人類が築き上げた道徳や合理性と

文明が崩壊、狂気に走り獣と化す者も少なくないだろう。


 第5の終焉:『物理法則の終焉』。

 古代兵器:『主客転倒(アプサイダウン)』による、反転。

 これが使用されれば……、

天は地となり、火は水となり、全ての物理法則は狂気的に

同時に執拗的に反対の性質を示し絶望的な混乱を与えることだろう。


 第6の終焉:『生存の終焉』。

 古代兵器:『世持竈食(ヨモツヘグイ)』による、滅亡。

 これが使用されれば……、

その名から察することができる通りの“恐ろしいこと”が

実現し目の当たりにすることだろう。


 第7の終焉:『景色の終焉』。

 古代兵器:『虚無の洞穴(ナッシングネス)』による、喪失。

 これが使用されれば……、

敵対者は一方的に“眼球”という器官を通した、

視覚という概念そのものが抹消され、永遠の闇に絶望のまま

彷徨うであろう。


 第8の終焉:『自由の終焉』。

 宇宙兵器:『夢現の巨人(ドリーミング・ナウ)』による、強制支配の時代の幕開け。

 原理不明の超技術により、生けとし生けるモノ全てが

その脳髄ごと支配を受けることになるだろう。


 第9の終焉:『形の終焉』。

 古代兵器:『混沌(ケイオス)』による、

物体形状規則の消失と混濁、それに伴うありとあらゆる存在の

混雑化と意味と必要性の消失。

 これが使用されれば……、

世界なる存在ごと、全ては無に帰したことを知ることも許されない。



「……長々と連ねてしまい、申し訳無い。

 ただ、思い出して欲しかったのです。

 それはそうと、先日、単刀直入、気の短いこの男めは、

 『絶望楼』ボス、デスピア=デッドボルト総統と相談し、

 世界全てが“5月”のまま時が止まった件と、

 他残り8つの“終焉シナリオ”について交渉しました。

 結果、世界に挑戦する様なチマチマとしたケチなテロ行為を

 即刻辞めて貰うことになりました。 拍手!」


!?


(えっ……??)


(つ、つまり……!?)


(わざわざ、悪の組織に潜り込んで、テロを未然に防いだ??)


(悪の組織に寝返ったんじゃないのかよ……。)


(すごくね!?)


(アイツ、根っからのヒーローじゃないか!)


(すげェ!!)


パチパチパチパチ!!


 などなど。 様々な意見を頂き、至極恐悦で御座いましたが。

 いやしかし、申し訳無い。 仕事は仕事ですから。


「ええ、どうせやるなら、ドカンと豪快に!

 残り3日で、“全部”、やります。 何をって? “終焉シナリオ”です。

 我が国は、見せしめにすることが決定されました! サーセン!」


!?


(ファっ!?)


(え……、今、何を……!?)


(アイツ……、今、何言った? 何をするって!?)


(何をするって言ったんだよおおおおおお!?)


 非難轟々。

 あの『絶望楼』始まって以来の、いや史上初だろう、

これまでに全く無かった、人々の絶望と燃え上がる本気の憤怒を

目撃することになった。


(最悪ブリブリババーン!)


(今、地球は、ドキドキするほどピンチだ!)


「……何て、悪のカリスマの器だ。」


 No.3、組織作戦参謀:ヒゲリカオンは、出撃直前に見た、

No.2の仮面の男の横顔に戦慄していた。

 肌が粟立って戻らない……、

大胆不敵なあの提案には驚いたものだが、事を成して尚も、

その反響に絶叫に呪詛に身震いもしていないとは……。


「さあ、ヒゲリカオン、その腕前を見せてくれ。

 我が『絶望楼』の力を、愚かな民に見せつけて来い!」


 地下牢の前で、デスピア=デッドボルト総統が立つ。

 空を切って手のひらを胸の前へ走らせる。

 その背中の出撃を見送る。


「演説から早々、出撃命令を叩き込まれるとは……。

 こりゃあ、ウカウカしていられないぜ。

 第1陣、行くぜ!」


 後ろ姿、立てた親指の残像を残して男は行く。

 だが、彼を見送ったのは総統だけでは決してなかった。


「ゲフ……、はは、よくも強かに蹴りを入れてくれやがって。

 痛ェなァ……、だが、アイツも調子に乗っているなら、

 後で痛い目に遭う、俺には分かっているぜ。」


 元・No.2の男:焼原(ヤキハラ) 

 裏切りがバレて以来、暴力を受け続け、満身創痍であったが……。

 顔は笑っていた。



***



「あの男は、信頼ならない。」


 宇宙から来たと言うそのロボットは、こう言い放った。


「彼が来てからというもの、この組織はおかしい。

 いや、そもそも悪の組織だって看板だから、

 人々を怯えさせるのは当然だけど……。」


 四角いほぼ立方体の冷蔵庫みたいなソレが、スクラップに話し掛ける。

 そのスクラップは、ベコベコに凹んで壊れているが……、

実は、そのロボットの大切な同胞で、同じ星……、宇宙の果てから

やって来たのだ。

 今はワケあって、こんな最低の悪の組織に身を寄せているが、

……生きていくためには仕方が無い。

 ソレは、この組織に、少なからず、いや、多大な貢献をしている。


「あんな人間、宇宙のどこにもいない。

 不気味で、底知れぬ、意味不明で、チグハグで……。

 きっと、『絶望楼』よりも絶望的な何か。 でも……。」


 『絶望楼』が行って来たことを知っている。

 ずっと、組織誕生以来、ずっと協力して来たから。

 だからこそ……。


「こんな絶望、終わってしまえば良いのに……。」


 今日もまたモヒカン頭の軍勢が帰還して来た。

 あの新入りの幹部直属の、今やエリート顔した連中だ。

 上澄みの事実を拾うなら、毎日1つは難関『クエスト』を

クリアして来る手練れですらある。


「どうして、彼らは、

 そんなにまで生き生きとする様になったのか。」


 見よ。 あの誇りに満ちた、満ち足りた壮観な顔立ちを。

 モヒカンの男達が我が物顔で跋扈する様になった頃、

危険な男がついに下したのは、同時多発的且つ絶望的な命令。


 彼は、世界に終焉を見せつけろと宣った。




<第05章に続く>




続きの第05章は、来週09/08(火)に投稿予定。

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