レベルが足りてないね
「キミは長い年月を地球で過ごして、何もかも忘れてしまっている。でも、それだけじゃないんだよ?地球とブルーローズでは次元が異なるんだ。」
部屋の中には、暖炉があり火が灯っていた。小さなテーブルに椅子が二つ。それとふかふかとしたベットがひとつ。幾つかのランプの灯りが部屋を明るく照らしている。僕はベットに座り、クロの話を聴くことにした。
「あはは!アック、これを見てごらんよ!」
大きな鏡が目の前に現れて、僕はそこに映る自分を見た。
「カメがいるね。」
僕は人間の様に動き、今もベットに腰掛けた筈だ。しかし鏡に映る僕は、ベットの上にちょこんと乗っかり、こちらを見ている小さな青いカメだった。
「あはは!これはね、真実の鏡さ!」
クロはふわりと椅子に飛び乗ると、その銀色の瞳で真っ直ぐにアックを見つめる。
「地球は2次元3次元4次元の世界。最後にアックが生きた時代に5次元にアセンションしたけどね。この星、ブルーローズは7次元8次元9次元の世界なんだよ。今のアックは5次元体だから、本来この星では存在出来ないんだ。だからね?姫がこの迷宮に避難させたのさ。キミという存在が消えてしまわないようにね。」
姫、とはあの少女のことか。
「そうそう、その姫がさ。アックはレベルが足りてないから、修行しなさいってさ。」
「……。」
「改めて、ようこそ深淵の迷宮へ。キミはここで7次元まで昇華しなければならない。元々アックは7次元体だったのだから、そう難しい事でもないさ。」
クロは椅子の上で横になり、長い尻尾をフリフリと揺らしている。
「ここまで、何か質問はあるかい?」
「むしろ、理解出来る事がありません…。」
「あはは!流石アックは変わらないね。安心したよ、あはは!」
「………。」
「自分より高次元の事は理解出来ないんだよ?概念や理が違うからね。」
クロは、先程よりもゆっくりと優しい口調で語りだす。
「例えばキミは時間の概念を持っているよね。過去、現在、未来、時間とは一方向に進み決して戻ることは無いと。でもね、過去も未来も今という瞬間に創られるんだ。だからキミがこの星に戻るまで費やした年月も今この瞬間でしか無い。
水をイメージしてみよう。小さなコップに入っている水。一滴の水は今この瞬間だとする。この瞬間に生まれる過去現在未来。その一滴一滴が集まってコップに入っている。
姫が文句を言ってたのはさ、キミの水の量は海ほどあったって事だよ?あははは!」
「………はぁ……。」
「いいかい?考えても無駄だよ?感じるんだ。」
「………はぁ……。」
さっぱり分かりません。




