水の精霊
ポコポコポコ……ポコ……
駄目だ、死ぬ。僕はカナヅチなんだ。
薄れていく意識の中で、海の中を沈んで沈んで。
「あはは!死ぬわけないだろ!」
「…ぇ?」
魚…いや、イルカ。僕より小さなイルカがいる。
「さあ、呼吸してごらんよ。落ち着いて、ゆっくりね。そうそう、目をつぶって。ゆっくり、ゆっくりさ。」
「…苦しくない。息出来てる。」
「あはは、本当に面白い奴だな。」
「ありがとう、イルカさん。」
「もう、やめてよ!ほら!」
イルカさんは、くるりと宙返りしたかと思うと…そこには白いウサギがいた。
「ウサギだと泳ぎにくいだろ?」
今度はぴょんと飛び跳ねる様にすると、イルカに戻った。
「神さまがね?アックはどんくさいから、面倒みてあげなさいってさ!」
「…アックって、僕の名前?」
「うんうん。アックは生まれた時から、ずぅ〜っとアックだよ!」
「キミは?」
「あはは、名前?オレに名前を付けようなんて奴はいないよ!でも、そうだなぁ…うん、クロ。オレの名前は、クロだ!」
途端に眩しく輝き出したクロ。その光が収まると、そこには黒い猫がいた。
「あはは、初めて受肉したよ!」
僕達は、海底に向けて何処までも落ちて行く。果たしてこの海に底などあるのだろうか。
「さて、アック。ここはね、迷宮になっている。」
クロの青い目が細められて、僕を見つめていた。
「先ずは少しお勉強しようか。」
気が付けば、僕達は小さなログハウス風の部屋の中に居たのだった。




