むすび旅館
「このブドウは美味しいのう。アックが作ったのかい?」
「僕はブルーローズに来たばかりだよ。今住んでる小屋の裏庭に、沢山なってるんだ。」
「仙桃もそこで実るのかい?」
「うん、でも見つけたのは一つだけだったよ。」
「なるほどの…。」
『私と結ぶ為になっていたのよ。』
「そうだろうとも。あれが実るのは3千年に一度あるかないか。私も食べた事は無いからね。」
おばあちゃんって、何歳なんだろう。
「お前さんより、ずぅ~と若いわ。」
「ぇ…?」
「アックの心の声は、私だけじゃなく周りにダダ漏れじゃよ。」
「えーーーーー⁈今までずっと?」
「そうじゃ。」
「ここに来てから?」
「そうじゃ。」
「……終わった……。」
『アックには、私が居るわ。強く生きてね。』
「その優しさが、グサグサ刺さります…心に。」
「本当に、昔と変わらんのう。ちゃんと地球で修練したのかい?」
「はぁ…。」
「まったく。少し覗いて見ようかね。」
おばあちゃんはスッと立ち上がり、目を瞑って柏手を8回打った。
良く聞き取れないが祝詞のようなものを唱えると、世界が色を無くす。以前ことちゃんがやったのに似ているが、何か違う。
『まぁ、綺麗な刀ね。でも、折れているわ。切先だけしかないわね。』
ことちゃんは、僕の胸の辺りを見ていた。目線を落としてみると、何やら青く光っているのが分かった。
「なるほど、なるほど。枷が打ち込まれているね。」
『これは呪いでは無いわよね?お守り?』
「そうじゃ、この刀は姫様のものであろうな。アックを守ると共に、霊性に制限をかけてある。」
「凄い…霊力を溜め込んでいるのね。」
「そうじゃな、心当たりはあるのかい?」
「……………」
「まあ、焦らんでいい。さて…。」
おばあちゃんが、また柏手を一つ打つと、世界が戻って来た。
「風呂にでも入って行きな。」
今度は指をパチンと鳴らすと、僕はカメに、ことちゃんはキツネに姿を変えた。
「アック、考えがダダ漏れなんだよ。」
「は、は、は、は、何のことでしょう?」
結局そのまま、ポン太ちゃんも一緒に3人で温泉に浸かり、3人で仲良く眠りに着いた。




