ヘラブナ爺さん
「あら、いらっしゃい。あなたがアックだね。ことちゃんから聞いてるよ。プロポーズしたんだって?で、どうなったんだい?私はね、あの子のおしめ変えたことだってあるんだ。もうそりゃあ母親みたいなもんさ。何だい、さっきから黙り込んじゃって。出会って直ぐにプロポーズした割には、シャイな所があるなんて可愛いじゃないか。私もこう見えて若い頃はそ…」
『アック、お風呂見てみる?ね!行こう!』
「何だい?もう一緒に風呂入る仲なのかい?いや、全く今時の若いも…」
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『……ごめんね、トメさんったら本当に話好きでさ、ああなったら止まらないの。自分でも困ってるって言ってたわ。』
「ここにも居るんだね、安心した。」
『フフッ、何処にでも居るわよ。』
「ことのむすび様も、将来は…。」
『アック?次は無いわよ?』
「…はい…。」
『それより、ここでは「こと」って呼んでね!誰も私のこと「ことのむすび」だなんて呼ばないわ。』
「…分かりました、ことさん。」
『分かったよ、ことちゃん。』
「……分かったよ、こ、こ、ことちゃん。」
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長い縁側から見える旅館の裏手には小さな滝があり、その下が苔生した岩に囲まれた滝壺なっていた。
よく見ると岩陰に釣り糸を垂らす老人が居る。
『あの人は、ヘラブナ爺さんよ。ここにはヘラブナは居ないんだけどね。釣れないのは自分に腕が無いからだと信じているみたい。』
「へぇ~、粋だね。」
『私のおばあちゃんを紹介するわ。この部屋よ。』
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「随分待ったよ。アック。久しいね。」
そこには、コタツでミカンを食べているおばあちゃんがいた。




