結び
「いえ、あの…僕知らなくて、すみません!大変失礼な事をしてしまいました!」
『フフッ。其方は楽しいのう。良い良い、ちゃんと分かっておる。』
そう言って、おもむろに手を伸ばして仙桃をひと齧りした。
『ふむ。ほれ、其方もひと口食べよ。』
何だか逆らえない感じがして、仙桃を受け取ると戸惑いながらも齧りつく。
「んがっ!!」
桃を口にした途端にアックに雷が落ちた。體が打ち上がり、激痛が走る。光はバリバリと音を立てて周囲に拡がり、一瞬で消えた。
『結びは成された。私のことは、ことのむすびと呼ぶが良い。』
「はぁ、はぁ…。」
激痛の余韻でまだ声を出せない。
『見るが良い。』
ことのむすび様が手を払う様にすると、辺りが暗くなり、今まで聞こえていた森の音も消えた。
何よりも驚いたのは、僕とことのむすび様が稲光の様な光で繋がっていたことだ。
そして、ことのむすび様がもう一度手を払うと辺りに光と音が戻って来た。
『なに、悪いものでもないぞ。加護の様なものじゃ。』
「…加護で…すか……。」
何とか声を絞り出す。
『そうじゃ。アックは既に幾人もとの結びがあるが、今はそれが弱くなっておるのう。私との結びが良い助けとなるはずじゃ。』
まだ立ち上がれないアックを見下ろし、ことのむすび様は口元を隠して可笑しそうに笑う。
『明日もまた来るが良い。』
ふわりと風が吹いたかと思うと、もうそこにことのむすび様の姿はなかった。
アックは動けるように回復しても暫く呆然としていたが、日も暮れかけて肌寒い風が吹き始めると、重い腰を上げ小屋に戻って行った。
「クロ、知ってたでしょ!」
「あはは!何のことかな?」
「仙桃のことだよ!!」
「上手くいったみたいだね!」
「……はぁ。」
「あはは!」
「もういいよ。クロ、カラスとの話し方教えてくれるんでしょ?」
「あれ、アックもう覚えてるよ?」
「えっ?」
「強い結びが出来てるからね。つながれるようになってる」
「あっ!そういうことか!」
確かに、今まで感じられなかった感覚がある。意識してみると、確かにクロとの繋がりもはっきりと分かった。
そして、今は細いけどその繋がりは果てしなく拡がっているのが感じられる。
「これが結び繋がるってことなんだね。」
「暫くは一人で参拝すると良いよ。オレはちょっと探し物があるんだ。」
「うん、分かったよ。」
暖炉の灯りを眺めながら、凄く満たされた気持ちで眠りに付くのだった。




